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【商店街夏祭り企画】祭りのカウントダウンが始まる

【商店街夏祭り企画】作品です。暴走玉爾の夏祭りはかなり早回し??

 ここは松平まつひら市にある希望が丘商店街ーー通称「ゆうYOUミラーじゅ希望が丘」。国会議員の重光幸太郎先生のお膝元としても有名だ。


 この商店街は実に様々な店舗が入っており、店舗同様個性豊かなメンバーが揃っていて、仲が良い。

 その中でも特に交流が深いのは、「喫茶トムトム」、「篠宮酒店」「JazzBar黒猫」、「居酒屋とうてつ」、「中華料理神神シェンシェン飯店」「美容室まめはる」といった所だろうか。


「小天、祭りこれでいいか」

商店街の夏祭りを1ヶ月ほど前にしたある日、天衣は学校から帰った途端、母玉爾に一反の反物を見せられた。

「浴衣? 」

「そ。キレイよ」

玉爾の言葉に天衣は無言で頷く。

 この黒地に桜と白牡丹の描かれた反物はもちろん、この商店街の紬屋で調達したものだ。しかも、この一品しかないということは、既にこの柄で決定だということで、天衣に選択の余地はないということだ。横にはそれに合わせて買ったと思われる赤煉瓦色の帯と、黒い下駄が置かれているのでたぶんそうだろう。天衣は、(あたしに選択肢はないんだね、やっぱし)と思いつつ、この柄には異論はない。寧ろ好みだと思った。前の赤地に白く大きな葉が描かれている、まるでカナダの国旗のような柄よりは数段、否数十段良い。

 メイン通りから少しひっこんだ所にある神神飯店は毎年メイン通りの商店ではない家の軒先を借りて、唐揚げ・春巻き・揚げ餃子等の揚げ物屋台を出す。その代わりと言ってはなんだが、玉爾は天衣が小さいときから彼女の成長に合わせて浴衣を作り続けているのだ。

 それは、天衣がまだ保育園の頃に遡る。保育園でも祭りがあり、天衣はみなが着るというので、当時大人気だったアニメ「モンモン」の浴衣を欲しがったが、開に似て長身の天衣には、サイズがなかったのだ。このことで玉爾のコスプレ魂に火が点き、玉爾はすぐさま駅向こうのデパートで「モンモン」の洋服地と切って使える型紙を買い込み、自作したのが最初だった。

 とは言え、和裁知識のない玉爾は裁断した生地にガンガンロックミシンをかけ、可能な限りミシンで縫うのだが。それでもコスプレで培った洋裁力で、見た目は遜色のないモノに仕上がった。しかも、見よう見まねでマジックテープで着脱式の帯まで作る拘りよう。 以来、玉爾は小・中・高・と天衣のサイズが変わる度に浴衣を作り続けている。ただ、玉爾の暴走であるため、天衣の意向はまず聞かれることがなく、前回の「カナダ」柄のように、親子喧嘩が勃発することもあるのだが。

 とにかくもうあのド派手な「カナダ」柄を着なくて良いのは嬉しい。しかし、それにしても始めるのが早いなと天衣は思った。店があるとは言え、玉爾にとっては手慣れたミシン作業。前の型紙が残してあるのなら、そう時間はかからないはずだ。

「何で? いつもより全然早いじゃん」

と天衣が聞くと、

「コレ見つけたからね」

と嬉しそうに玉爾は答えた。ま、見たらすぐに動かないと済まない暴走体質だもんね、オンマは。天衣はすぐに納得して自室に滑り込む。この時、天衣は母が早めに布地を調達した本当の理由にまだ気づいていなかった。

挿絵(By みてみん)

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