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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第四章 漢を賭けろ
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告白の返事

「ちょっと、オレの時とは随分と態度が違うような……」


「ん? うぬはワシの何であるかね? 少なくとも好意的な相手ではないはずである」


 この親馬鹿、誠とキスをした事を相当根に持ってんな。まぁ、父親なのだから、娘の心配をするのは当然といえば当然ではあるが。


「まぁ、別にいいですけど。それで、勝負の方法はどうするんですか? 剣道ではオレが有利過ぎると思いますけど?」


「それはどうであるかな……」


 剛三は意味ありげに微妙な笑みを見せた。何となく馬鹿にされているようで、腹が立ったが剛三の底知れぬ恐ろしさが行動へ移るのを躊躇わせる。


「こちらで、勝負の方法は決めさせてもらうとする。明日、再びこの屋敷に来るのである。来なかった場合、勝負を放棄したと取らせてもらうので、敗北扱いにするので気をつけるのである」


 それだけ言うと、剛三は立ち上がる。


「ワシから言う事はこれで終わりである。後は三人で話でもしなさい。特に健吾くんは、誠と話をするのは最後になるかもしれないから、心行くまで話をしなさい。だが、手を出したら問答無用で死んでもらうから、気を付けるように」


 一応、釘を刺された。まぁ、手を出すつもりは無いので、死んでしまう事は無いだろう。


 剛三は好き勝手に言った後、本当に道場から退室してしまった。そこには宴会を繰り広げた三人だけが残された。


「ごめんなさい。昨日の事を父に話してしまいました」


 誠は第一声で頭を下げて、謝罪を申し出てきた。この謝罪を見る限り、好き好んで話した訳ではなさそうだ。


「まぁ、気にすんなよ。どちらにしろ、オレはお前に返事しなきゃいけなかったからな」

 本当は、もう二度と会わないと思っていた。同好会が無くなり誠との接点も無くなり、


二人の関係はそのまま消えていくはずだった。

 だが、予想外にもこうして再び出会った。なら、答えを出さなきゃいけない。どう答えようか迷っていた時に、剛三からの提案。不謹慎かも知れないが、こうやって答えを出すのも悪くない気がする。


「でも、そのせいで、私と付き合うか、学校から追い出されるかのどちらかしか、道は無いのですよ? 今なら、私が父に掛け合います」


「いや、いいよ。勝負はする。オレもキスしたんだ。覚悟は決める」


 それに、父親に言いなり状態の誠が、本当に説得できるとは思えない。


「でも、本当に私と付き合うのですか?」


「当然。オレは女としての誠を知らないから、付き合って知っていこうと思う」


「もし、女の私が好みじゃなかったら?」


「それでも、君を好きになる。何だかんだ言って嫌いじゃないしな」


 誠は言葉を失っていた。随分と乱暴な言い方だったから、呆れられたのかも知れない。幻滅されたかもしれない。それでも、本当の事を言ったつもりだ。


「凄い告白ね。こんないい加減で、熱心な告白は始めて聞いたわ」


 今まで沈黙を保っていた友里が半笑いで、皮肉を言ってくる。そういえば、友里の存在を忘れていた。結構、恥ずかしい事を言ってしまった事を、今更ながらに自覚して顔が熱くなってくる。


「はいはい。男が頬を染めても気持ち悪いだけよ。特に健吾みたいに厳つい顔じゃねぇ」


 さらっと酷い事を言われた。きっと、この場を和ませる為の冗談だろうが、ちょっと厳しい物言いである。別にけなしてる訳じゃないですよね。


「って、お前のせいで随分と話がややこしくなったじゃねーか! どうして、お前が勝負に割り込んで来るんだよ。今頃、結論も出て全ては丸く収まってたはずだぜ」


 どうして、友里があんな事を言い出しのか、未だによくわからない。今まで、誠が好きだなんて一言も言わなかった。まぁ、誠もオレの事を好きだ何て一言も言わなかったから、こういうものは突然なのが普通かもしれない。


「本当にそう思ってるの? 私が割って入らなければ今頃、一人の男性高校生の人生が、ひっそりと幕を閉じる事になっていたわ」


「それ、どういう意味だよ。結局、オレが負けるって事か?」


 確かに剛三は強そうだ。負ける可能性もあるだろう。だが、ここまではっきりと言われると腹が立つ。


「健吾はあまり剣道界について詳しくないのでしたね」


「なら、もしかして知らないの? 豪腕の師範、鬼瓦剛三を?」


 もしかして、誠の親父さんは凄い剣道家だったりするのだろうか。豪腕の師範だなんて、随分と大層な二つ名だ。もしかしなくても、有名人だったりするのかもしれない。


「豪腕の師範。その伝説の一つに、竹刀で自分の背の長け以上もある岩を砕いたというものがあるのよ」


 友里の説明につい唾を飲み込んでしまう。普通、竹刀で岩を打ちつけたら、竹刀が折れるだろ。どうしたら、岩が砕けるんだよ。流石に嘘だとは思うが、あの人の眼力を目の当たりにした事のある今、嘘とも言い切れない気がする。


「今頃、面の一本をいれる振りをして、娘の想い人の首をへし折っていたに違いないでしょうね」


 あの親馬鹿なら、本当にやりかねない。というより、首の骨が折れる前に、面の防具と一緒に頭蓋骨が粉砕さていたかもしれない。そして、鬼瓦財閥の力を利用して、この殺人は闇へと葬られるのだろう。


「貴方の命を救うために、わざわざ割り込んであげたのよ」


 そんな意図があった事に、全く気付かなかった。さりげなく、命を救ってくれたのだ。これは大きな借りを作ってしまった。


「そうだ! 誠はいいのかよ! 友里と付き合うことになっちまっても!」


 誠は複雑な表情をしていた。よく考えれば、剛三と勝負すれば十中八九オレが死んでいた。誠はそれを知っていたから、友里の申し出に何も言わなかったのだろう。そう考えると、随分と酷い失言をしてしまった気がする。


「健吾が負ければ、友里さんと付き合います。健吾の私への想いがその程度なら、私も諦めざるを得ません」


 何故か、胸が痛んだ。負けるつもりは無いが、もしも、負けた時の事を考えると、失うものは非常に多い。今通っている学校、誠と出会う機会、そして、誠からの信頼と想い。


「――私は、ちょっと席を外します。健吾、私はもう一度貴方と話がしたいと思っています。頑張って下さい」


 誠はいつもと変わらない、感情を押し殺したような表情でお辞儀をすると、道場から出て行く。そして、道場には友里と二人きりになってしまう。

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