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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第四章 漢を賭けろ
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鬼瓦邸

 その日の午後、健吾は再び鬼瓦邸を訪れた。

 目の前にそびえる木製の門は、相変わらず大きくこちらを威圧してくる。門の前で立っているだけで足が微妙に震えてしまう。以前は隣に誠がいたので特に気にならなかったが、これが鬼瓦家のプレッシャーというものなのだろうか。


 先程の電話はただの呼び出しだった。総帥自らの電話で少々驚いたが、学校の授業が終わる頃に自宅に来て欲しいという旨の電話だった。自宅謹慎だという事を伝えると、学校の許可は取ってあるとの用意周到さ。その為、こうして鬼瓦邸までやってきたという事である。


 門の中に入ろうとして、ふと気付く。どうやってこの門を開ければいいのだろうか、インターホンのような物は一切付いていない。この前は誠に開けてもらったのだが、どうしたらいいものやら。


「おーい。誰かいないのか? 門を開けてくれよ、客だぞ客!」


 大声を出すものの、門は沈黙を保ったまま開く様子は一切無い。流石に大きな門だけあって防音もバッチリのようだ。次はもっと大きな声で呼びかけようと息を大きく吸い込む。そして、声を上げようとした瞬間、


「健吾、貴方何をやっているの?」


 声をかけられた。今まさに声を出さんとする瞬間を呆れた顔で眺められていた。


「お? 友里か、お前もこの門を開けるのを手伝ってくれ」


 友里は学校の制服を着ており、どうやら帰る途中のようだった。どうして、こんなところにいるのか知らないが、役に立つならたってもらいたい。健吾はもう一度大きな声を出そうと、息を吸い込む。


「待ちなさい。そんな事をしても、門は開けてもらえないわよ」


「あん? そうなのか」


「門の隣に小さな出入り口があるでしょ? そこから中の人と会話できるはずよ」


 友里が指差す方には、小さな扉が備わっていた。こんなものがあるのなら、門なんていらないんじゃないかと思いながら近寄っていく。

 扉に向けて声をかけると、返事があり名前と用件を訊ねられた。それに答えると、小さな扉が開かれて中に入るように指示される。誠と一緒の時は、門から入ったというのに扱いの違いが気になる。


「それじゃあ、中に入りましょうか」


「もしかして、友里も呼ばれたのか?」


「ええ、一体なんなのかしらね。今日は会長も学校に来てないみたいだったし、何が起こっているのかしら?」


 友里は首を傾げていたが、健吾には少々心当たりがあったりする。きっと、昨日の事だろう。誠が女である事を知ってしまった事が、何らかの方法で剛三にばれたのだろう。

 健吾は曖昧に笑みを浮かべながら、鬼瓦邸の敷地内に入っていく。


「はぁ……、流石、お金持ちは違うわねぇ」


 友里は鬼瓦邸の境内を見回しながら、感嘆の声を上げる。確かに、健吾も最初に入った時は同じような状態だったのだろう。

 鬼瓦邸の庭には、相変わらず黒服とドーベルマンがそこかしこに配置されている。この前来た時より何となく視線が厳しいような気がしたが、気のせいだろうか。仕事なのだから、仕方ないとは思う。


 黒服の使用人の案内に従い、庭を抜け屋敷に入る。そして、健吾達は道場へと案内される。道場の中には剛三と誠がいるだけで、他には誰もいない。案内した黒服もさっさと道場から出て行ってしまう。

 剛三は堂々と座っているのに対して、誠が小さくなって俯いている姿が気になった。


「よく来た。さあ、そこに座っていただけないか」


 よく磨かれた板張りの床の上に二枚の座布団が置かれていた。ここに座ればいいのだろう。健吾と友里は会釈をすると、座布団に座る。


「先ずは突然の呼び出しに応じていただき、礼を言おう」


 剛三はそう言うと、頭を下げる。


「そちらのお嬢さんとは初対面じゃったな。ワシは鬼瓦剛三、誠の父である」


「こちらこそ、初めまして。高嶺友里と申します」


 友里の名前を聞いた瞬間、剛三の眉毛ピクリと反応する。だが、それは一瞬ですぐに普通の表情に戻った。


「それでは、早速呼び出した用件を言おう。昨日の宴会の事だが、誠から何処まで聞いたか教えていただけないかな?」


 何処まで聞いたか、つまり誠の性別の事を言っているのだろう。誠が言うには鬼瓦グループでも一握りの人物しか知らないらしい。口止めということなのだろうか。


「誠が女だって事は聞きました」


 その瞬間、剛三にえらい勢いで睨まれて、その眼力に心臓が止まりそうになる。


「あ、あの、誠さんが女性だという事は伺いました」


 つい、丁寧な言葉で言い直してしまった。剛三の視線が幾分か穏やかになったのが、せめてもの救いだろう。


「正直に話した事は評価してやろう。友里さんはどうかね?」


「私はその時寝ていたので、話そのものは知りませんが、おおよその見当は付いていました」


 自分は全然気付けなかったというのに、友里は誠の性別に気付いていた。やはり、中々に侮れない奴だ。


「ふむ。他言しなかったのは、懸命な判断である」


 剛三は顎に蓄えた髭を撫でながら、こちらを威圧してくる。つまり、この呼び出しはオレ達に釘を刺す為のものだったのだろう。

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