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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第四章 漢を賭けろ
38/48

呼び出し

 思いもよらない宴会を終えた翌日。健吾は自室で机に向かっていた。昨日、三人で掃除したお陰で、机を使う事が出来る。とはいえ、やる事は反省文の作成。

 レポート用紙に十枚、暴力についてというテーマで反省文を書かされている。これの出来によっては、自宅謹慎が伸びる恐れがあるので、手を抜く事は出来ない。


「しっかし、書く事ねーな」


 健吾自身、生徒会長を殴った事を後悔していないし、反省もしていない。自分は悪い事をしていないのだから、当然である。だからといって、自分の正当性を説いた所で、反省の余地無しと判断されるだけだろう。


 一向に埋まっていかないレポート用紙とにらめっこしていても、時間が過ぎていくだけである。自宅謹慎は今日を除いて後二日ある。今日はサボって、明日にでも書けばいいそう思うと、なんかどうでもよくなってくる。

 きっと、明日になっても同じ事を考えて、最後の一日で大変な目にあうんだろうなと、結末まで見えてしまう始末。

 そうなるなら、そうなるで、特に問題ない。今日明日と怠惰を貪る事を決めると、椅子から立ち上がり、ベッドへ向かう。そして、ベッドの上でごろんと横になると、瞳を閉じる。

 別段眠い訳ではないが家の中にかいられない以上、やる事が無かったりする。眠気も無く瞳を閉じていると、勝手に昨日の出来事が思い出される。


 昨日は楽しかった。二人にいいように振り回された気がしたが、家に他人を招いたのは小学生以来だろうか。掃除したり、アルバム見たり、酔っ払ったりと何していたのか、今思い返してもよくわからない。

 だが、馬鹿みたいに騒いでいたのは楽しかった。難しい事を考える事も無く、三人で騒ぐ事があんなに楽しかったとは思いもよらなかった。

 他の事を考えようとしても、最終的にはあの事に考えが至ってしまう。誠が女性だった事も衝撃的だが、その後のやり取りがどうしても頭から離れない。いつもとは違う砕けた口調、上気して潤んだ瞳、背中に当てられた二つの膨らみ、そして、暖かく滑らかな唇の感触。


 健全な男子高校生としては、今まで男として付き合ってきたとしても、相手が女と分かればムラムラしてしまうのは仕方がない訳で。しかも、初めてのキスだったりする訳で。どうしても、誠の笑顔が頭から離れない。

 そういえば、昨日の誠の告白に返事をしていなかった。キスをしてお互いがいっぱいいっぱいになってしまって逃げ出してしまった。しかも、お互いが逃げてしまったのだから、なんとも初々しい事だ。

 結局、あの時最後まで返事を求められたら、どう答えていたのだろうか。受け入れたのだろうか、拒絶したのだろうか。正直、今でもよくわからない。

 何度も寝返りを打ちながら、答えを求めてみたがどうしても答えが出ない。誠の出自には同情するところが多々あるものの、それは彼女を好きになる理由にはならない。そもそも、女としての誠をまるで知らない。男としてはそれこそ、あまり仲が良かった訳じゃない。嫌いじゃない、憎めない程度の相手だった。

 さらに寝返りを繰り返しても、寝苦しいだけだった。悶々としながら無為な時間を過ごしていると、部屋の扉をノックする音と扉が開く音がした。


「おーい、健吾いる~って、何寝てんだい! あんた謹慎中だよね、もう少しは反省した態度を取ったらどう?」


 扉から現れた矢理乃が健吾の姿を見て嘆息する。大学に通っている矢理乃は、講義の時間が不規則で家にいる事が多い。今日の講義は午後からのようで、暇を持て余しているようだった。


「矢理姉ぇ、何だよ。退屈だからって冷やかしに来るなよ」


 鬱陶しい相手が現れたので、邪険にあしらう。だが、矢理乃もただ冷やかしに来たわけではないようで、立ち去ろうとはしない。


「あんたに電話よ」


「誰から?」


「鬼瓦財閥総帥、鬼瓦剛三」

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