生徒会の動き
翌日、健吾は会室の扉の前で固まっていた。
部屋の中では、誠と魔法少女の衣装を着た友里が談笑をしており、その隣ではもはや常連となった利明が写真集を眺めていた。
「友里さんは、ミニスカメイド服をどう思いますか? 私は邪道だと思うのですが……」
「え? そうかしら? ロングスカートのメイド服は機能的ではあるけど、可愛くないからミニスカもありだと思うわ」
「ですが、本来、メイド服というのは作業をする為に着込むものであり、素足をさらし、ヒラヒラの装飾はその機能に反します」
「そうねぇ。でも、機能性重視のメイド服がロングスカートなら、ファッション重視のメイド服がミニスカという考えはどうかしら?」
「ファッション重視……成る程、そのような考え方があったのですね。衣類は時と共に進化する物。そう考えれば、ミニスカメイド服はメイド服が進化した姿と言えますね」
何だか、いきなり濃い話を繰り広げており、まるで付いて行けない。利明は二人のそんな会話を楽しみつつ、写真集を読んでいる。奴の方が立派に馴染んでいるのは、どういうことなのだろうか。
「あんまり言いたく無いけどさ、もう少し危機感持った方がいいと思ううんだが、どうだろうか?」
あまりに和んでいるので、つい口を出してしまう。その言葉によって、健吾の存在をようやく知った会室の三人は、一斉に視線を向ける。
「危機感を持てば、会員が増えるのですか? もしそうなら、いつも危機感を持つのですけど」
「まぁまぁ、急いては事を仕損じるといいますわ」
案の定というか、やはり自分が責められる事になった。危機感を持てと言ったのは、別の方法を考えないのか、という意味だったのだが……。
「そうは言うが、まだ会員は規定人数集まっていないだろ。あと一週間で期限切れだぜ」
そんな事は健吾がわざわざ言うまでも無く、二人とも理解している。
「それぐらいは誰もが知っています。今までの方法では無理だと思うのです。それで、別の方法を考えていたのですが……」
「そうそう、その筈だったのに、いつの間にかメイド服談義に変わっちゃったのよねぇ」
反省しているような誠とは対照的に、友里は微笑んだまま、まるで気にしていない。一応、二人は何とかしようとしていたみたいだが、やはり危機感が足りないと思わざるを得ない。
「なら、もう少し真剣に――」
健吾が説教しようとした途端、扉をノックする音が聞こえてきた。言葉を止め、扉の方を振り返ると、開いた扉の前に女生徒が立っていた。制服の青色のリボンから、三年だという事は分かった。だが、一体何の用だというのだろうか。
「お取り込み中の所、申し訳ありません。生徒会長がお呼びですので、生徒会室までご同行をお願いできませんか?」
生徒会長が一体こんな同好会に何の用だというのだろう。健吾が視線を誠に向けると、友里も同様に誠を眺めていた。
「何だか、騒がしくなってきたみたいだから、俺は退散するよ。それじゃあ、頑張ってくれよ」
そう言うと、利明はそそくさと逃げるように、会室を後にする。
体よく逃げやがって、本当に薄情な奴だ。どうして、あんなのと友達を続けているのか、分からなくなる。
「それは、私だけですか?」
「いえ、特に指定はありませんでしたので、どなたでも構いませんが、できれば会長である鬼瓦さんは同行をお願いします」
女生徒は事務的にしか答えない。
「分かりました。二人はどうしますか?」
誠は二人に意見を仰ぐ。誠からは直接命令しない、各々の意思に任せるという事なのだろう。
「私は付いていきますわ」
友里は即答した。何か考えがあるのか、少しいたずらっ子のような笑みを浮かべている。自分はどうしようかと考えていると、女生徒が口を開く。
「それでは付いてきて下さい」
健吾が答えていないというのに、さっさと行ってしまう。女生徒にとっては誠さえ連れて行けばいいのだろう。
「待てよ。除け者にするんじゃねーぞ!」
面倒だったが、自分の知らないところで話が進んでいくのは面白くないので、付いていく事にした。




