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輝け! 女体研究同好会  作者: 鮎太郎
第二章 揉め事
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その後

 誠の後を付いて、広い家から出て、豪華な庭園を抜け、門まで辿り着く。その間、二人の間に会話は無かったが、突然誠が口を開いた。


「今日は色々とありがとうございました。健吾が助けてくれなければ、今頃どうなっていたのか分かりませんでした」


 やけに素直にそんな事を言われると、どうしたらいいか困ってしまう。正直、誠の為というより、友里が心配だったから取った行動だ。誠にそこまで礼を言われると、罪悪感を覚える。


「確かに先輩じゃ何もできなかったろうな」


「そうですね。ですから、感謝しています。正義の味方とまで名乗って、別人を振舞ってくれたお陰で、同好会は存続できそうです」


 あまりに卑屈すぎると思ったら、きっちり反撃してきた。正義の味方の件はもう忘れて欲しいのだが、いつまでもネタにされそうだ。


「じゃあな、先輩、手当てありがとな」


「お礼を言われる事ではありません。君は必ず医者に行くのですよ」


 健吾はへーいと答えて、無駄に広い鬼瓦邸の塀にそって歩く。暫くの間、門の閉じる音が聞こえなかったが、随分と遠くに来て、蝶番の擦れる音が聞こえてきた。一々、礼儀正しい奴だ。そう思いながら家路に着いた。


 後日、不良共が暴れまわった事について、女体研究同好会はお咎め無しという結末で落ち着いた。誠が不良と喧嘩したのは、ダイケンゴーと名乗る正義の味方であって、同好会とは一切関係ないと、貫いた結果であった。


 学校レベルでは、ダイケンゴー=健吾という噂が広まっていたが、確たる証拠は無かったので、噂という域を出る事は無かった。健吾も教師に呼び出されて、色々と詰問されたが知らない、関係ないを貫き通した。


 だが、噂として広まった事までは覆す事は難しく、健吾は十数人の不良と、チェーンの豪太を倒す凶悪人物と判断されるようになった。そのお陰で、教室で向けられる視線は冷たく、教師からの対応も、不良に対するものと同等か、それ以下だった。


 実際に手を出したことの無い人物でも、目と目が合うだけで「ヒッ」と小さく悲鳴を上げられるのは勘弁して欲しい。流石に傷付いてしまう。

 それ以外はどうでもいい。元々厳つい顔で避けられるのは慣れている。変態扱いされないだけ、以前よりいいのかも知れない。


 ただ、顔は厳ついけど気さくで頼りになる好青年を目指すのは、もう無理っぽい。

 こうなったら、開き直って『普段は不良っぽいけど、雨に濡れる子犬に傘をあげる優しさを持った青年』を目指すしか道は無い。

 さらに訪れた不幸は、自分一人の問題ではなかった。女体研究同好会には凶悪人物が所属している。女体研究同好会はチェーンの豪太に狙われている。等の噂が飛び交い、完全に敬遠されるようになってしまった。


 それは、健吾にとっても、誠にとっても予想外な展開であり、会員集めは苦戦を強いられた。

 不良との乱闘事件から三週間経った今、新たに増えた会員数はゼロであった。


 五月も下旬に差し掛かり、会員集めの期限は間近。殆どの生徒は部活動に入部して、活動を始めている。以前より苦しい状況だが、まだ終わった訳じゃない。期限までにはまだ時間がある。諦めなければ、希望はある……と信じたい。

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