歌わない鳥
歌を忘れた鳥が居ました
自分の声が大好きで
何時間でも歌う鳥です
歌う事が楽しくて
歌を生き甲斐にしてました
ただ楽しくておかしくて
毎日歌を歌います
歌を忘れた鳥が居ました
毎日歌ったためなのか
鳥は喉を痛めます
綺麗な声が消えてしまい
しゃがれた声が出るばかり
それでも鳥は歌います
しゃがれた声で歌います
ただ楽しくておかしくて
歌を忘れた鳥が居ました
しゃがれた声で歌った鳥は
声が出なくなりました
それでも歌が大好きな鳥は
誰かが歌うと口を動かし
自ら歌っているかのように
ある日鳥は気付きます
自分を見る他の鳥の
迷惑そうなその視線
楽しく歌っていた鳥達が
楽しく歌うのを邪魔されて
歌を途中で止めてしまい
二度と歌わなくなった事に
…鳥はやっと気付きます
そぅか私は……………
歌を忘れた鳥が居ました
唯一の楽しみと喜びを失い
ただ絶望にあけくれました
何もやる気になれなくて
どんどん弱っていきました
他の鳥達はその鳥を
嫌って近よりすらしません
歌を忘れた鳥が居ました
歌おうとしても声が出ず
出るのは涙ばかりだけ
そのうち涙も出なくなり
鳥は地面に落ちました
歌を忘れた鳥が居ました
ただそこに居たかは知りません
居たという噂を聴いただけ
歌を忘れたその鳥は
何を思っていたのでしょう
自分の居場所を見失い
悲しんでばかり居た鳥よ
自分の居場所を見付けずに
何もせず消えたあわれな鳥
惨めで愉快な鳥の死よ