お前殺しただろう?Ⅱ
こんにちは、播磨麻耶です。
いつも作品をお読みいただきありがとうございます。
本作は『お前殺しただろう?』の続編となります。
猛吹雪の雪山、小さなテントの中で繰り広げられる緊迫のサスペンス・ホラーをぜひお楽しみください。
テントを叩きつける風の音が、地鳴りのように響いていた。
薄暗いランタンの明かりの下、僕と勝俣は向き合ったまま、もう一時間も言葉を交わしていない。外は完全なホワイトアウトだ。山開き初日だというのに、山の気象は突如として冬の猛威を取り戻していた。
「……なぁ、本当に滑落だったのか?」
勝俣が絞り出すような声で呟いた。その目は、僕の手元をじっと見つめている。
僕の手には、谷底へ消えたはずの三島のアイスピッケルが握られていた。滑落したはずの人間が、滑落する直前に手放し、なぜか僕のリュックの脇にしっかりと括り付けられていた金属の塊。
「どういう意味だ?」
「お前、三島が滑落したとき、一番後ろにいただろ。あいつが足を滑らせたって言ったのもお前だ。……だが、なんでお前が三島のピッケルを持ってるんだよ」
勝俣の視線が鋭く刺さる。冷や汗が背筋を伝った。
「落ちる直前、あいつがパニックになって投げつけたんだ。受け止めるのが精一杯で、手を伸ばした時にはあいつはもう……」
「嘘をつくな!」
勝俣が立ち上がりかけ、小さなテントが大きく揺れた。
「三島はお前に金を貸していた。返済を迫られて、山開きにかこつけて呼び出したんじゃないのか? 下山しようと言った俺に猛反対したのも、嵐で証拠が消えるのを待つためだろ!」
狂暴な風の音が、二人の間の沈黙を重く引き延ばす。勝俣の言う通りだった。僕があいつの背中を押したのだ。急斜面の視界が遮られた一瞬を狙って、崖下へと突き落とした。天候の急変も、事故死に見せかけるための完璧な舞台装置になるはずだった。
「殺したんだ。やむを得なかった……」
僕は小さく呟いた。開き直りの言葉が口をついて出た瞬間、勝俣の表情が恐怖に歪む。
その時だった。
―---トントン。
テントの布地を、外から叩く音がした。
風の音ではない。規則正しく、固い指先で叩くような音。
「……おい、誰かいるのか?」
勝俣が息を呑み、入口のファスナーを見つめる。
―---トントン、トントン。
音が激しくなる。そして、暴風の隙間から、耳を疑うような声が聞こえてきた。低く、凍りついたような、あの三声だ。
「開けてくれ……お前が……殺したんだろう……」
僕と勝俣は息を止め、凍りついたように互いを見つめ合った。外にいるのは、谷底へ落ちたはずの三島なのか。それとも、罪悪感が見せる幻聴なのか。
ファスナーの金具が、外側からゆっくりと滑り降りる音が響き始めた。
『お前殺しただろう?Ⅱ』の後書きを作成しました。
後書き
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
前作の余韻を引き継ぎつつ、極限状態の雪山テントという密室で繰り広げられる心理戦と、ラストのホラー展開を描いてみました。
外からファスナーが開けられる音……果たしてそこに立っているのは誰(あるいは何)なのか、想像しながら楽しんでいただけていれば幸いです。
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引き続きどうぞよろしくお願いいたします。




