ユーレア
お久しぶりでございます。龍門です。
前の話を投稿したのが二月。………お待たせしました。
また再開して投稿をスムーズにいたします。
読んでくだされば、嬉しいですぅ
今回の花言葉は「信頼」「互を良く知る」です。
二つともって感じですかね。別に全面に出しているわけではないのですが。
時間は『殺人集団』の桔梗姫響が態と警報機を鳴らす前。
敷地内に建てられている教会の中。そこに2人の男が居た。
金髪パーマの男は椅子に座りながら両脚を前の椅子に投げ出し、アダルト系雑誌を顔の上に載せながら寝ている。
もう1人の黒髪ショートで左耳に蛇のピアスを付けている男は、その横で手を後ろで組みながら姿勢正しく立っていた。
蝋燭だけなのだが、月明かりも相まって差程暗さを感じさせない教会内。
寝ている男の寝息だけが聞こえるだけの静けさ。
立っている男も目を瞑っている。
ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィッッッッッ!!!!!!
そんな中鳴り響いた警報機。
「………位置的に、RANKⅣ女子寮近くですかね」
立つ男が述べる。
「………オィ………史順。それを俺に言ってどうする気だァ?」
寝ていた男は雑誌を顔の上に乗せたまま立つ男、史順と呼ばれた男に問う。
「スイマセン。余計な事を喋りました」
「分かれば良いんだよ………チッ! オィ史順ッ!! 今此所へ向かって来てるクソ女をブッ殺せッ!! 一歩も此所に入れるなよッ!!!」
「了解」
いきなりでかなり説明不足で理不尽極まりない命令。が、史順と呼ばれる男は短く返事し扉へ向かう。
が、
「ブッ殺すとは些か乱暴ですね。ミスター桜冥寺」
史順と呼ばれた男が扉を開ける前に、修道服に身を包みながら神を冒涜するシスター、イール=メニファーが扉を開き現れた。
「………取り敢えず、ブッ殺します」
「流石の私でもしないわよ、そんな取り敢えず」
神を冒涜するシスターでも流石に顔を引き攣らせた。
「………」
「黙るのは止めなさい。怖いじゃない」
「………どうしますか?」
振り返り尋ねる。
「此所でブッ殺してやりてェんだが………んで? どんなクソ面倒クセェ事持って来たんだ、オィ?」
雑誌を乱暴に椅子に叩き付けながらイールを睨んだ。
吊り上がった両目の下に刻まれた刺青。
「面倒なんて事はないわよ? 今此所に入って来ちゃった愚かな馬鹿野郎共をお得意の残虐性で、殺してってだけの話よ?」
イールは笑みを浮かべる。聖職者にあるまじき口の汚さを大っぴらにしながら伝える。
「面倒、だが………おィ、史順。先に行って2、3人殺して来いや」
頭を掻きながら雑誌を広い、軽く捲りながらイールに押しつける。
「テメェもこんだけエロければ色んな面で稼げたのになァ………胸デカくねェシスターなんて価値あんのか?」
「実際に見た事も無い餓鬼が言ってくれるわね」
雑誌を軽く捲りながらイールは小馬鹿にした様に笑う。
「聖職者のくせして下半身だらしねェ阿婆擦れに言われたかねェな、オィ!」
「安心して? そんな阿婆擦れでも貴方を瞬殺出来るぐらいのテクは持ってるわよ?」
「お前も安心しろよ。餓鬼とは思えねェモン打ち込んでヒイヒイ言わせてやっからよォ」
2人はいつの間にかメンチを切り合い今にも殺し合いそうな雰囲気を醸す。
「………まぁ、お決まりはここまでにして。………ミスター史順。もし何か知っていそうな人が居れば捕まえて欲しいのだけれど?」
史順と呼ばれた黒髪短髪の男は桜冥寺と呼ばれた刺青を入れた男を見る。
桜冥寺はイールを睨んだまま。
「適当にやれ。てか、捕まえなくてもその場で半殺しにして吐かせろ。それでも答えないなら殺せ」
「了解です」
それだけ言い残し男は2人に背を向け歩き出す。
「ホント彼、貴方の言う事しか聞きませんね」
「んあァ? テメェだって似た様なモンだろうがよ」
それだけ言い残し桜冥寺も外へ向う様に歩き出す。
「何処へ?」
「テメェに言う筋合いはねェな」
誰も居なくなった教会内。イールは後ろに立つ十字架を見る。
「………クソッたれな加護を」
学園内・森林内『闘技場』付近。
2人は木々を縫いながら駆けていた。
1人は空河天士。もう1人は草島光輝。
草島は両足を雷に変え枝と枝を跳んだりと辺りを見渡しながら駆ける。
空河はそんな草島に負けじと常人では在り得ないスピードで後に続く。
「さっきの木須先輩からの電話! 『幽閉塔』へ行けだったんだよな!」
「あぁ! どうやらそこに侵入者の目的があるらしい!」
「でもよ! あんな所にこんな危険冒してまで必要とするもんあったか!?」
「そんな事俺が知るか!」
会話をしながらでも2人はスピードを緩めずに木々を縫う様に駆ける。
さながら忍者とでも言える。
「てかお前能力の方は大丈夫なのか!?」
「んあぁ? どう言う意味だ!?」
「敵によっては長期戦もあり得る! そん時にまた前みたいになったら今度はヤバいぞ!」
草島の言うこの前とはRANK上げ時に起こったあの騒動だろう。
あの時はあれだけの人数でやっと能力が広がるのを防げた。今回はそれだけの人数を割く余裕も無く、しかも止める事の出来る者も居ない。
「成るべくは使わないつもりだ。それに使ったとしても筋力だけなら副作用も軽い! もしもの時は遠慮せずに俺に雷打ち込め!」
「了解!」
日頃の2人を知っていて、2人の素性を知らない者ならこのやり取りが不自然に思えるだろう。草島の問いに空河が素直に答える。普通ならばこれが当たり前だが、日頃の2人からしたら不自然極まりない。
が、これこそが2人の凄い所なのかもしれない。
口から出る罵声も結局の所信頼からくるものだ。互いに何処までが相手の許容範囲かを知っている。まぁ、知っていても空河の草島への暴力は度が過ぎているが………。
「後少しで『幽閉塔』だ! もしかしたら敵さんが既に居るかもしれない!」
「解ってる!」
草島が木の枝に着地した時、―――
ボオゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!
「「!!!??」」
一瞬にして目の前に火の壁が現れる。
火の壁に突っ込みそうになった草島は前へ跳ぼうとした脚力を一瞬にして後ろへ跳ぶ方へ変え、後ろの枝に跳び姿を隠す。同じく空河も直ぐさま木に姿を隠す。
火の壁は勢いを徐々に弱め、灰へと変わる。
………火が弱まるのが早いな。
地面に溜まった灰を見ながら空河は当たり見渡す。
が、人影は勿論人の気配すらない。
遠距離からの攻撃か、それともトラップか。
もし遠距離からであれば既に此方の位置がばれている事になる。トラップであった場合もこれを作動させてしまった時点でばれる。
“何か見えるか?”
枝で身を隠す草島に空河は口を動かさずに尋ねる。
“いや。本当に気配すらない”
だとすれば矢張り遠距離からの攻撃。
空河は軽く舌打ちをする。随分此方側に不利な状況。
下手に能力を使っても遠距離からだったりトラップだったら此方が消耗するだけ。
だからと行ってこのまま隠れているのも問題だ。
気配でも解れば!
そう思った矢先。
「「!!!??」」
ボオゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!!
先程と同じ様に突然2人が身を隠していた木が地面諸共燃える。
「ピンポイント過ぎる! 近くに居るぞ!!」
空河が叫び後退しながら辺りを詮索する。
「だけど気配なんてどこにも―――ッッ!!」
焦った表情で叫ぶ草島が跳び移った木もまた、先程と同じ様に突然燃える。
「完全に位置がばれてる! さっさと見つけないとこのまま燃えカスにされるぞッッ!!」
「解っている、がッッ!! チッ!!!」
今度も草島の着地点である木の枝が突然燃えだす。
「何なんだクソがッッ!!」
「チッ!」
辺りを見渡す。が、何も解らない。このまま狙い撃ちされ続けるのは歩が悪い。
草島の能力にも限界がある。もしこの攻撃が足止めが目的なら逃げ回り続けるにも限界がある。
「………クソッ」
空河は頭に浮かんだ対策と言えない対策に苛立つ。
取り敢えずは大丈夫な対策は対策とは言えない。つまりは頭に浮かんだそれは悪手。
が、悩んでいる時間は無い。
「………光輝、先に行け」
「んあぁ!?」
思わず草島は空河を凝視してしまった。そして次に出た言葉は反論。
「阿呆か!? なんの為の2人行動だと思ってる!? それに、今度こそお前を止める奴は居ないんだぞッッ!!!」
「解っていて言ってるんだ………」
「解ってたら尚更だッ! そんな愚策に乗る程こっちは馬鹿じゃないぞッ!!」
誰に取っての愚策か。無論この状況から言えば空河と草島であろう。反対するのは至極当然の事だ。が、草島は解っている。この策に乗って一番危険に晒されるのは空河自身だと。
能力を安易に使えないと言う事がこの状況でどれだけ足枷になるのかを。
易々とこの策に乗ってもしもの事があれば。簡単にその末路を想像出来てしまう。
「………クソ」
心の中で呟くように、小さく吐き捨てる。
解っている。天士が態々口にしたんだ。これが覆らないと言う事も。死ぬ気も無い事も、当然解る。解るが!!
空河の思考は自分の身よりも友である空河の事だけであった。
この策は自分の身も危ないと言うのに、彼はそんな事これっぽっちも考えていない。
「………光輝」
「ッッ」
空河の表情を見て、思わず唇を噛んだ。
今までの流されて巻き込まれて、自分の望まない形で戦って。それを言い訳にしてきた男の表情ではなかった。
そんな表情で俺を見るな。そんな決意を見せつけるな。
「………逃げろよ。何かあれば………能力を使ってでも良いから、逃げろよ」
絞り出した言葉だ。そんな言葉をかけたい訳ではない。が、自然にそれが零れ出た。
「誰に言ってる」
鼻で笑う様に空河は不敵な笑みを浮かべた。
クソ………それでこそだよ。
「テメェに………だよッッッ!!!」
両脚を雷に変え、思いっきり木の枝を蹴り出す。
視界に捉えられたのはその一瞬だけであった。
草島が立っていた木の枝はヒビが入り、今にも折れそうに揺れている。
「………さて」
表情から笑みを消し、身を隠していた木から離れ晒す。
「………待ってたんだろ?」
誰に言った言葉か。声だけが森の中で響く。
辺りに不自然さは無く、風で揺れた葉の音がやけに耳に残る。
ボオゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!!
突如折れかけていた木の枝が燃え盛り、そこらに残る灰と同じ様に無惨に姿を変える。
「………待っててやったんだよ。感謝しろよ?」
木の陰から現れたのはエンジニアが着る白い白衣に赤髪オールバック、赤い刺青そして大量のピアスと言った、見ただけでここの生徒ではないと解る風貌をした男。
「待ったと言う事は俺1人だったら余裕、って事か?」
その言葉を聞き、男は不敵に笑みを作った。
「阿呆がよ………」
肩を揺らし、笑いを堪える様に下を向く。
「………何がだ?」
不穏。空河はその不穏の意味は解らないが、自然と拳を強く握っていた。表情は優れず、思考に刺さるこれは、あれに似ている。
………クソが。
そう吐き捨てても既に遅い。
この違和感に気付くのも遅すぎた。思考に刺さるそれは、嵌められた時と同じ。
男は大きく息を吐き、ゆっくりとその笑みを空河に見せる。心底楽しそうに。滑稽だと言わんばかりに。
「………テメェも、獲物の1人なんだよォォ!!」
静かに、だが強く。目の前の男を見据える。
生易しい相手じゃ、………ねぇよな。
はいはい。新キャラ登場。
いやぁ、彼を出すまで長かった。長くしたのは私なのですが………。
でも個人的には史順が好きなんですが。
ちゃんとした説明は追々。
それでは次回も読んでくだされば嬉しいです。
それでは、それでは………。