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One-eyed  作者: 龍門 
『殺人集団』襲撃編 =Blood-stained fight=
57/60

クロッカス


花言葉は「信頼」「青春の喜び」です。

まぁ内容に少し臭い台詞が入っているので「青春の喜び」とかじゃないでしょうか。


既に花のサブタイに限界を感じる。








 血塗れ。

 同じ服を着た男達の死体。


 同じく死んでいる男か女か解らない人の横で、地面に座る男。

 上半身と下半身。腰の辺りから服が綺麗に切れている。


 五十嵐久太郎は一難が去った後に訪れたもう一難に大きく溜息を吐いた。


「………狩りは、終わらない」


 侵入者天酉凍は自害した。

 だが、天酉は随分面倒な者を倒さずに残して逝った。


 本気の時に関わってはいけない人物、『狂者マッド』。

 『破壊狂デストラクション・エンスー』・越智宗次。


 『破壊狂』は五十嵐と天酉の戦いを静観していた。

 それは越智宗次が打ち込んだ楔の為だ。


『人を殺してはいけない』


 と言うモノの為だ。

 天酉は両腕片足を失い、胸に弾丸を喰っていた。


 その状況で攻撃すれば死に至らしめてしまう。


 現在、『破壊狂』の狩りの対象は五十嵐久太郎。

 敵味方の判別は無い。


 あるのは、満たされるか否か。限界まで痛めつけられるか否か、だ。


「最悪だ………本当に最悪だ」

 五十嵐は頭を掻きながら吐き捨てた。


 先程の天酉への後悔が消えぬ間に、それすらも吹き飛ばしそうな程の最悪な状況。


 五十嵐の能力、『不死鳥フェニックス』は『破壊狂』に取って相性が悪いのだ。

 人を殺せない『破壊狂』だが、五十嵐には即死さえ避ければ、死なない。


 一見すれば、有利なのは五十嵐の様に感じられる。

 だが、五十嵐の能力は言ってしまえば再生能力だけだ。


 肉体的に一般のそれは上回ってはいる。

 だが、不可視の攻撃を避けられるか?

 現に五十嵐は天酉の攻撃を避ける事は出来なかった。


 優れているのは、一般人より動ける肉体と再生能力。

「………ヤバイだろうな、これ」


 ゆっくりと立ち上がる。

 『破壊狂』は先の戦いで片腕を吹き飛ばされている。


 痛みは麻痺させているが、流れ出る血液まではどうにも出来ない。

 このまま行けば、出血多量で死ぬ。


 長引けば越智は死ぬだろう。

 けれども終わらせる手立ては五十嵐には無い。


「………どうし―――、」


ボキッッ!! ブチブチブチッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


 言い終わる寸前、遮るかの様に五十嵐の左腕が捻れた。


「ぐがあぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああッッッ!!!」

 叫ぶ。


 折られる骨の痛み。断裂する筋肉。

 斬られるのとは違う痛み。


 だが、その腕も直ぐさま巻き戻しの様に元に戻る。


「くはッッ!! ………不意打ちか? んあぁ? スゲェ痛いんですけど?」

 左腕を擦りながら、五十嵐は『破壊狂』を睨む。


 五十嵐の姿を見ながら、『破壊狂』は笑みを浮かべた。

「面白い………面白い………」


「俺は全く面白くねぇよッッ!!!」

 駆け出す。が、


ブチッッッ!! ブチチチチチッブチチチチチチッッッッッッッッッ!!!!!!!

 左足が捻れる。


「ぐがぁああぁぁああぁぁぁああああああああああああッッッ!!!!!」

 叫び、アスファルトに転がる。が、直ぐさま左足は再生する。


 だが、

ゴギッッ!! ブチブチブチブチブチブチブチッッッッッッッ!!!!!!!

 右足が捻れる。


「があああああああぁぁぁぁぁああぁぁああああああああッッッ!!!!!」

 立ち上がろうとした瞬間の激痛。

 再度倒れる。が、直ぐさま右足は再生する。


 繰り返し。

 五十嵐の能力はオン・オフの切り替えが出来ない。

 擦り傷であろうが、打撲であろうが、直ぐさま再生する。


 殺す事との出来ない『破壊狂』相手では、その便利さが裏目に出る。


「クソがッッ………」

 吐き捨てる。


 攻撃を避ける方法も、防ぐ方法も、止める方法も、勝てる方法すら見あたらない。


「最悪な相手だよ、全く………」


 この様なシチュエーションの為に、などと言う考えは皆無。

 戦う気など毛頭無かった。


 元々、五十嵐自身が好戦的な性格ではない。

 能力が能力。攻撃よりも再生。


 『破壊狂』は『攻撃系能力アタック・アビリティ』の中でも優秀な部類に入るだろう。

 越智の楔さえ無ければ、首を捻切って終わる。


 楔を打っていようが多発出来るし、しかも不可視ときたもんだ。


「詰んでんだろ………これ」

 引き攣った笑みを零す。


 殺されはしない。

 だが、死にもしない。


 勝てない。

 だが、負けもしない。


「メインを愉しむとしようか」

 『破壊狂』は笑みを浮かべる。


「俺は前菜なんだけどな」


 突破口は無い。

 ならば、どうする?


 冷や汗が流れ出る。

 後何回腕や脚を捻られる痛みを感じれば良いのやら………。


「さぁ、狩りを再開し―――」


パンッ! パンッ!!


 銃声。


ブシュッ! ブシュッ!!


「!?」


 突如、『破壊狂』の両脚脹ら脛が撃ち抜かれる。


「………何とかなったか………」

 五十嵐は大きく息を吐いた。


「少し遅くなった。ごめんね?」

 闇から姿を現したのは鴨梨元。


 その姿を見ながら、五十嵐は怒鳴る。

「遅ぇよ!! 危うく永遠ループの捻り祭に突入する所だったわッッ!!!」


「いやぁ、『破壊狂』を止めた時に治療出来る人が居なくてさ。捜してたら結構掛かった」

 頭を掻きながら五十嵐の横に立つ。


 本当かどうか怪しむ様な目を向け、その目に対して笑みを浮かべる鴨梨に対して溜息を吐き、五十嵐は前の『破壊狂』を見る。


「………撃ったのはさっきも撃った奴か?」

 さっき、と言うのは侵入者天酉凍の件だろう。


「そうだよ。一応『破壊狂』の暴走の件を考えてね」


「まぁ、言いたい事とか色々あるけど、兎に角助かった。で? 突破口は?」


 足を撃ち抜いた程度では、『破壊狂』は止まらない。

 止める手段は、殺すか気絶させるか。


「まぁ、大丈夫だと思うよ」


「ぐぉらあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 突然響く雄叫び。


 その瞬間、

ドゴォォォォォォオオォォォォォオオォォォォォォオオオオオオンッッッッ!!!!!!

 アスファルトの地面が粉砕される。


「!!? ………誰?」

 粉塵に塗れながら五十嵐は尋ねる。


葉木城大雅はきしろたいが。RANKⅣ」

 粉塵に塗れながらも決め顔の鴨梨。


「お前のツテか?」


「そっ。まぁ、ツテってよりも利害が一致した協力者って感じかな」


 五十嵐は鴨梨を見る目を細める。

「………ギブ&テイクってか?」


「………そうだよ」


 鴨梨と言う人物は、他人の為に無償で動く様な人物ではない。

 誰かの為に。皆の為に。世界の為に。


 そんな無償の行動など反吐が出る程に彼は他人の為に動かない。

 ギブ&テイク。


 それが鴨梨の信条であり、唯一の行動理由。

 此方に有益な事があるのならば動く。無ければ動かない。


 至極簡単で、至極冷たい。


 五十嵐は正直に言ってしまうとそんな鴨梨の考えが嫌いだった。

 有益無益で動くと言う事は、自分が勝手に相手の価値を決めていると言う事だ。


 世界の基本はピラミッド。

 下が居れば上が居る。


 当然上の居る者は下に居る者を見定める。

 五十嵐はその当然の様に行われる理不尽と差別、そして格差が嫌いだった。


 全員平等などと言う夢物語を語るつもりはない。

 だけれども、人が人の値を決めて良いものか?


 好き嫌いではない。

 価値が有るか無いかなのだ。


「………今回は、俺と宗次を助けて何か有益な事が有るのか?」

 嫌味を込める。


 その問いに、鴨梨は素の表情で口を開く。

「有るだろうさ。少なくとも、『破壊狂』の暴走を止め、被害の拡大を防げる事」


 心の中で「素直だねぇ」と呟きながら、溜息を吐いた。

 が、不意に鴨梨が笑みを五十嵐に向ける。

「それと、ダチが助かる」


「!! ………臭い台詞どうも」

 

「まぁ、俺の私情で皆が動いてくれるか心配だったんだけど、向こうは俺に貸しが有る訳だし、そこは二つ返事で頷いてくれたよ」


「ご免なさいね。俺等のせいで貴重な貸しを使わせてしまって」

 再度嫌味を込める。


「まぁ、俺に何かあれば助けてくれれば良いよ。それでチャラ」


「貸し無しとかじゃねぇの? そこは」


「ギブ&テイク。これ俺の常識。例え親しい仲でも、そこを反故にしちゃ駄目でしょ」

 満面の笑みで五十嵐の顔を指さす。


「………そうですか………まぁ、別に良いんだけどよ。でもまぁ、何か奢るとかの方が気は楽なんだけどな。助けるって、スゲェ嫌な予感しかしねぇ」

 頬杖をつきながら再度溜息。


「小には小を返し、大には大を返せ。危機を救われのなら危機を救え。友を救われたのなら友を救え。命を救われたのなら命を救え。同等の対価。これを人間がちゃんと守っていれば、世界は幾分優しくなるだろうな」

 優れない表情を浮かべ、そう言った。


 何かあるのだろう。

 詮索はしない。言ってくれるのを待つ。


 美しい友情に見えるかもしれないが、

「結構………辛いんだよな」

 ボソリと、呟く。


 聞こえなかったのか、鴨梨は葉木城と『破壊狂』の戦闘を眺めていた。


「鴨さぁ~ん! 大雅の野郎ここら一帯を更地に変える気っスよ! どうします?」

 突然鴨梨の横に現れた長い黒髪を三つ編みにした少女。


「………その女もお前の協力者か?」


「まぁ、そうだね。彼女は夜百合夜暦やゆりやれき。RANKⅣ」


「鴨さんッ! 私の問い聞いてるっスか!? 完全に大雅の野郎手を抜く気無いっスよ! アスファルト粉々にしながら笑ってるっスよ!!」

 鴨梨の腕を掴み、ブンブン振りながら叫ぶ夜百合夜。


「ん~………俺あそこに飛び込む勇気無いからレズちゃん頼むね」


「レズって言うなっス!! 百合だからレズって!! 捻りもクソも無いっスね!!」


「女の子がクソとか言っちゃダメだろ? 言って良いのは………袖ちゃんと会長と姉さんぐらいだよ」


「その喋り方マジでムカつきますっス! 餓鬼扱いは止めるっス!! 私は立派なレディーっス!!」


「いやいや、君の方が十分ウザイ喋り方だよ? それにレディーって………似合わな」

 口に手を当てながら笑いを堪える。


「う、ウザイって!! 言って良い事と悪い事があるっスよ!? それに似合わないって何スか!! 訴えるっス!!」


「………漫才なら余所でやれよ」

 鴨梨と夜百合夜のやり取りを聞きながら溜息を吐く。


「ま、漫才とは失礼っスね!!」


「はぁ~」

 あからさまな溜息。


「なっ!? 喧嘩売ってるんスか!? 買ってやるっス! 直ぐさま買ってやるっス!!!」

 怒鳴りながら五十嵐に詰め寄る。


「………近寄らないで下さい」


「敬語!? 何時の間にか先輩と私の間に溝が出来上がってるっス!?」

 オーバーリアクションで驚く。


 漫才をしている中、葉木城と『破壊狂』の戦闘にスナイパーが加わる。


バンッ! バンッ!!


 二発の銃声。


ブシュッ! ブシュッ!!


 『破壊狂』の左右の太股が撃ち抜かれる。


「!?」

 一瞬『破壊狂』の動きが止まる。


「はぁああぁぁぁぁああああああああああああああああああああッッッ!!!!!」

 その隙を突き、葉木城は駆けだし拳を突き出す。


 が、その拳を『破壊狂』が捉えてしまった。

 不可視の攻撃。


「捻れろ」

 頬を吊り上げる。


 だがその瞬間。拳と『破壊狂』の間に一発の弾丸が通り過ぎる。


「!?」

 此所で初めて『破壊狂』が驚きだけの表情を見せた。


 拳を捻り切る筈だった不可視の攻撃は、弾丸を先に捉えた。


 飛ぶ弾丸はまるで螺旋の様に捻れる。

 そして、力無く地面に落ちた。


「チッ! ―――!!?」

 弾丸に気を取られている隙に、拳が当たった。


「吹き飛べやッッッ!!!!!」

 思いっきり殴り飛ばす。


「ぐがッッッ!!!!」

 頬を殴られ、真後ろへ吹き飛ぶ。


 地面を転がり、木に衝突し動かなくなった。

 その様子を見ながら葉木城が笑みを浮かべた。

「足りねぇな。もっと体を鍛えな」


 決め台詞。並に格好良く言い放つ。


「私が居なければ拳は捻り切られていたがな」


「それでも殴ってた」


「はぁ~………まぁ、これで終わりだな」

 現れたのは赤髪セミロングに羽根の髪留めを付けている女子生徒。クレファー=Nネルテミト=レルディア。


 3つの能力を有する多重能力者。

 先程の狙撃は全て彼女によるもの。


 クレファーは溜息を吐きながら手に持つ拳銃をホルダーにしまう。

「………報酬………ガ○ガリ君………まだ………RANK上げの時のも………貰ってない」

 銃をしまった途端に歯切れの悪い喋り方に変わる。


 銃を手に持っている時だけ饒舌になると言う面倒臭い性格なのだ。


「俺に言うな。それは鴨梨に言え」


「むぅ~………アイス食べたい」

 欲望剥き出し。


「お疲れさまっス!!」

 夜百合夜が両の手を広げながらクレファーに抱きつく。


「な? 俺のあだ名間違えてないでしょ?」


「成る程な」


「なっ!? これぐらい普通っスよ!! 変な事言わないで欲しいっス!!」

 慌てながらクレファーから離れる。


 鴨梨と五十嵐の会話に反論する夜百合夜なのだが、どうも分が悪い。


 そんなやり取りを尻目に、葉木城が尋ねる。

「アリスはまだか? アイツが居ないと出血多量で死ぬぞ?」


 『破壊狂』、越智の傷は深傷。

 止める為とは言え両脚を撃ち抜いたのだ。それに片腕も失っている。


 例え万能に思える能力でも出来ない事もある。

 治療する前に死ねばそこで終わりだ。


 鴨梨は腕を組みながら首を傾げる。

「いやぁ~彼女どうやら寝てたみたいでね。寝起き悪いんだよ」


「………お前援護に遅れたのはそのアリスって奴を捜してたんじゃねぇの?」


「いや、そうなんだけどね。起こした筈なんだけどなぁ」

 頭を掻きながら携帯を取り出す。


「私レズ違うっス! これは譲れないっスから!! 私違うっス!!!」

 未だにその事で叫んでいる夜百合夜。


「………暦………五月蠅い」

 両耳を押さえながら顔を顰めるクレファー。


「そんな!? クレファー先輩まで!?」

 両膝両手をつきながら落ち込む。


 またまたそんな様子を尻目に、葉木城は越智の手首に触れる。

「………ヤバイだろ」


「だってよ。どうするんだ? 元」

 五十嵐が急かす様に鴨梨を見る。


「ん~………ん~………」

 腕を組み唸り始める。


「アリス先輩は低血圧っスからね。中々布団から出ようともしないっスよ」

 何時の間にか立ち直った夜百合夜が頷きながら言う。


「………お寝坊さん」

 クレファーが口に手を当てながら笑う。


「アイツどっか抜けてるしな。道にでも迷ってんじゃない」

 同じく含み笑いをしながら小馬鹿にする葉木城。


「ほぉ~………言いたい放題ですね」


「「「!!!??」」」

 夜百合夜、クレファー、葉木城の背筋が凍る。


「急いで来た。髪もセットせずに。急いで来た。それなのに?」

 声質は柔らかい。のだが、どことなく殺気を孕んでいる。


「「「ア………アリスさん?」」」

 3人同時にブリキ人形の様にぎこちなく振り返る。


 そこにはボサボサの灰色のショートヘア。赤縁の眼鏡を掛けた女生徒。

 目の下にはクマが出来ている。

「寝不足はお肌の天敵………沈めますよ?」


「「「いやぁあぁぁぁああああぁぁぁああああああああああッッッ!!!」」」


 3人の悲鳴が響き渡る中、


「………人をからかうのが好きなお前が、何も言わなかった訳が分かったよ」


「………彼女地獄耳なんだよね………俺も前ああなった」


「………治療が必要な奴増えちゃうだろ?」










まぁ、何だ。特に書く事無いですね。

それでは、それでは………。

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