藤袴
藤袴です。
花言葉は
「ためらい」「遅延」「躊躇」「あの日を思い出す」「優しい思い出」です。
そして、今回は「ためらい」とか「躊躇」とか。
それと少し「あの日を思い出す」とかですかね。
差ほど思い出していないのですが。
どっちかと音声のみですが………。
今回は少し難作。
久しぶりの主人公登場なのですが………
まぁ、読んでみて下さい。
時遡り、侵入者・桔梗姫響がRANKⅣ女子寮の壁を破壊する数分前。
RANKⅣ男子寮の一室。
相部屋なのだが、その相方不在の為に1人部屋と化している一室。
この時間、一応は消灯時間だ。
その為この部屋に居るべきは1人の男なのだが、何故か5人居る。
「おい! 誰だよスペードの10止めてるの!!」
トランプを手に持ちながら叫ぶ男、草島光輝。
「パスは3回までだぞ?」
笑いながら紙パックの牛乳を飲む男、五十嵐久太郎。
「既にグラスは3回パスしているからな。4回目からは命を賭けて貰うしかないな」
物騒な事を笑顔で言う男、鴨梨元。
「命って!? 7並べってそんな物騒な遊びだっけ!?」
「もしくはコレから先、お前の能力名は『雷化』となる」
チョコレートを口に運びながら笑う男、越智宗次。
「嫌だよ! てか、何でお前がそれを知ってるの!?」
「煩い。てか、パスするのか? しないのか?」
眉間に皺を寄せて尋ねる男、この部屋の主である空河天士。
「くそ、スペードを出すのは諦めるか………だが! 俺にはハートがあるのだよ!! って! 誰だ! ハートの4を止めている奴は!!!」
いきなり笑い出し、そしていきなり怒り出す。
「それを言ったらゲームにならないだろ? ほれ、さっさと止めようと頑張っていたクローバーのジャックを出せ」
「何故知っている!? まさか見たのか!? 見たのか!?」
五十嵐はニヤニヤしながら草島を見ており、それにより一層喧しく吠える馬鹿。
「さっきQちゃんが「あぁ~誰だよクローバー止めてるの」って言った時に笑っていれば気付くよ」
「んなぁッ!? あれは誰がクローバーを持っているか調べる為に………!? 嵌められた!!!」
劇画タッチになりながら驚く。
「早く出せよ。俺の番が永遠に回ってこない」
空河は草島に早く出すよう促す。
「くっ………さらば、俺のクローバー………」
涙を目に溜めながらクローバーのジャックを場に出す。
「ん」
空河がダイヤの4を出す。
「ほい」
五十嵐がクローバーのクイーンを出す。
「はい」
越智がクローバーのキングを出す。
「っしょ」
鴨梨がダイヤの3を出す。
「誰かハートかスペード出せよ!!!」
叫ぶ哀れな草島。
「パスか? それじゃぁ~」
ペナルティを考え始める五十嵐。
「命だけは………命だけはご勘弁を………」
「大丈夫だよ光輝………俺達もゲーム如きで命を取ろうとは思わない」
草島に笑みを向ける越智。
その笑みを見て、笑みを浮かべる草島。
「そ、それじゃぁ―――」
「隠しているAVを般若の部屋の前に置いておく事にしよう」
「ノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!」
頭を抱え叫ぶ。
結局命の危機に晒されるのに変わりはなかった。
唯、どんな目に遭うか想像するのは簡単になった。
「クク………ププッ………光輝がボロ雑巾になる日は近いな」
「なっ!? 止めてくれ! それだけは! それだけは!!」
五十嵐の足に縋り付く。何とも惨めな姿だ。
「グラス………長い様で短い間だったけど………」
態とらしく涙を拭う鴨梨。
「な、なんだよ………ま、ままままままま、まるで………えっ? マジなの?」
演技だと見抜けない辺り、大分キテいるらしい。
「ほい」
そんな姿に目もくれず、ダイヤの2を置く空河。
「お前は何俺の危機を無視して進めてんじゃ!!!!」
「いや、危機って。言っておくけど、お前の危機はソイツ等が運ぶんだぞ?」
耳元で叫ばれた為、耳を押さえながら鴨梨達を指さす。
その通りです。
越智達が草島秘蔵のAVを寮母、通称般若の澳町紡の部屋の前に置きさえしなければ、危機は訪れない。
「えっ? …………………………あっ!」
思い出したのかどうなのか。
上手い具合に周りに流され元々の原因を見失っていた本当の馬鹿。
「テメェ等!! 俺を嵌めやがったな!!」
「騙され易いって言うか………唯の馬鹿だな」
五十嵐が真顔でクローバー6を置く。
「騙されたって言うか、自分から泥濘に嵌って行ったけどね」
越智が真顔でクローバーの5を置く。
「天使ちゃんが言わなければ、面白い事起きそうだったのに」
鴨梨が真顔でダイヤの1を置く。
「お前等も何進めてるの!? てか! スペードかハート置けよ!!」
前回のUNOでもそうだが、何故草島はカードゲームで必ず苛められるのだろうか?
呪いか何か、か?
もしそうなら不憫………。まぁ、理由の大半は空河達が面白いって事だけだろう。
叫び疲れたのか、大きく息を吐き自分の持ち札を睨み付ける。
見事に1やらキングやら、皆が出さなければ出せない札ばかりだ。
「………これ、上がれな―――」
不意に、草島が口を閉ざす。
そして周りをキョロキョロと見渡し始め、目を瞑る。
その様子を見て、4人は察する。
静かに、ゆっくりと手に持っていたカードを床に置く。
「………いや、近くじゃない………」
立ち上がろうとする4人を手で制止ながら目を瞑る。
その瞬間、
―――ビィィィィィィィィィッッッッッ――――………………。
鳴り響く。が、近くではない。
「!? 警報………」
鴨梨がカーテンを少し開け、外の様子を窺いながら携帯を取り出し連絡を取り始める。
「この近くではないな………何処だ?」
五十嵐が鴨梨に尋ねる。
「あぁ………成る程………」
携帯を耳に当てながら、
「どうやらRANKⅣ女子寮付近みたいだね」
「侵入者か? ………雇われた三流傭兵か、雇われた一流傭兵………もしくは『外』の能力者………どれだと思う?」
「三流でも一流でも、傭兵であるならば警報を鳴らす様なミスはしない筈。それに、能力者相手にドンパチやる勇気はないでしょ? 馬鹿でない限り………だけど、能力者だった場合は………少し危ないかもね」
「ソイツ等に逃げ出す事は不可能。俺等を全滅させる事も不可能だろ………だが、数人殺す事は可能だ」
「見境の無い奴程、恐ろしい者は居ない。こっちは皆を非難させたくても、『外』から誰かが侵入したと言う事を高RANKの奴は兎も角、低いRANKの生徒には知らせたくはない」
五十嵐の問いに、越智、空河、草島と答えて行く。
「………解った。俺はそっちに向かう………あぁ、了解」
鴨梨が携帯をしまう。
「分担するか?」
「そうだな。んじゃ、元はどうやら相変わらずのツテがあるらしいから、俺と久太郎。んで、天士と光輝って感じかな?」
五十嵐の問いに、素早く越智が提案する。
その配置に逆らいもせずに、各々が動き出す。
「それじゃ、俺は先に行くよ」
鴨梨は片手を上げ、部屋から出て行く。
「………アイツの人脈は何だ?」
思わず思った事を口にしてしまう五十嵐。
その問いに、他の3人は苦笑するしかなかった。
素直に言ってしまうと、鴨梨の協力者が誰なのか知らない。
複数なのか、1人なのかすらも解らない。
それは空河達が連む様になった頃からだろう。
過去は詮索しない。
それが今までの関係上での暗黙の了解だった。
勝手に伝播して行く事はあるが………。
「俺等も早い所行くか………敵が複数であるなら、面倒な事極まりないからな」
越智は五十嵐を見ながら歩き出す。
「そうだな………」
越智の後を追い、五十嵐も部屋を出て行こうとするが、振り返る。
「………天士」
五十嵐は空河を見ながら、まるで死にに行くみたいな表情で名を呼ぶ。
「………何だよ」
五十嵐の改まった様な雰囲気。
「………覚悟を決めろよ」
「………どう言う意味だ?」
眉を細める。暗に、「それ以上言うな」と言う様な。その様な眼差しを向ける。
だが、五十嵐は続ける。
「もう、休暇で来ているとか面倒臭いとかで流せる程、事態は生易しくない」
空河から視線を外す。
空河の戦わない理由。自身の力を隠す理由は知っている。
無理矢理能力を使わせようなど、五十嵐は微塵も思っていない。
だが、
「………その場に突っ立てると、何時の間にか護れる者も護れないで終わるぞ………」
そう言い残し、五十嵐は部屋を出て行った。
残った空河と草島の間に何とも気まずい雰囲気が漂う。
だが、敢えて草島はその雰囲気を壊すかの様に口を開く。
「怖かったら逃げて良いぞ?」
「………誰が………伊達に戦場で生き残って来た訳じゃねぇよ」
「………そう言う意味じゃ………ないんだけどな」
空河の言葉に、草島は頭を掻いて苦笑した。
空河の耳には届かなかったらしく、空河は草島の表情に首を傾げた。
「いや、聞こえなかったんなら、そのままで言い。態々言い直す事でもないしな」
何時もの巫山戯た雰囲気などは無く、唯々ばつの悪そうな表情を浮かべ部屋を出て行く。
空河も立ち上がる。
ふと、足下を見る。
先程まで遊んでいたトランプ。空河が踏んでいたカード。
「………ジョーカー………」
三日月に佇むそのジョーカーは不敵に笑みを浮かべている。
最強にも、枷にも成り代わるカード。
眉を細め、部屋を出る。
『―――護れないで終わるぞ』
嫌な言葉だ。
空河の頭の中で、五十嵐の言葉がリピートされていた。
殺す力は持っている。
素直に言ってしまうと、空河はその力に嫌気が差していた。
散々奪って来た。
もう後戻り出来ない所まで来ている事も理解している。
だが、それでもこの学園生活………平穏を噛み締めていたいと思っている。
まるで、非現実の様な今までの世界とは180度違うこの世界。
此所には、休暇で来ているのだ。
任務も何も関係無い。
俺は、捲き込まれているのだ。
俺の意志は関係無い。
そう考えていた。
「………俺は………捲き込まれて―――」
「その言い訳を言わないと、動けないのか?」
不意に、声が響く。
「………木須先輩」
草島は後ろを振り返り、そこに立って居た者、声の主の名を口にする。
「………五十嵐や越智、鴨梨は?」
「既に動いている」
問いに草島が答える。
木須は「そうか」と短く答える。
その様子を見ながら、空河が口を開いた。
「………言い訳って何だよ………」
「そのままの意味だ。「捲き込まれた」と言う言い訳をしないと動けないのか? と、尋ねたのだ」
眼鏡を上げ、空河を見据える。
「………俺が………言い訳をしている? 何言っているんだよ………実際に、言い訳も何も俺は捲き込まれてるんだぞ?」
空河は直ぐさま木須から視線を外し、淡い笑みを浮かべる。
「捲き込まれている。俺の意志は関係無い。今までもこれからも、それを理由にお前は人を殺めるのか?」
「!? ………先輩………あんまり意味の解らない事を言うなよ………」
不穏な空気が流れる。
「意味が解らない? そんな訳無いだろ。お前は理解している。理解出来る程にお前は賢い。お前は本能で動くタイプではない。………お前は、狡賢い男さ」
「!!!」
瞬時に、草島は空河の腕を掴んだ。
「止めろ………身内同士で殴り合う場面でもないだろ」
空河は、木須の言葉に反応し木須の胸倉を掴んでいた。
表情には怒りが湧き出ている。
「………誰が………狡賢いだと?」
声を震わせる。
胸倉を掴まれているが、木須は不敵に笑みを浮かべる。
「お前だよ」
「俺の………俺の何処が狡賢いって言うんだよッッ!!」
思わず声を張り上げる。
「止めろ、天士」
草島は逆に、落ち着いた声で空河を睨む。
が、止まらない。
「言わないと解らないのか? ………お前は誰かに命令され、自らの手を汚している。捲き込まれ、渦の中に居ると、本当に思っているのか?」
「………それ以外に、理由があるのか?」
「阿呆か? お前は逃げているんだよ。命令された。捲き込まれた。俺の意志は関係無い。俺は自分の意志でやったんじゃない。俺は悪く無い。どんな結末になろうとも、俺は関係無い。そうやってお前は散々自分に言い訳してきたんだろうが!!! 少しでも自分の罪を軽くしようとする………狡賢い男だ」
木須が声を張り上げる。
「何訳の分からない事言ってんだよ!! 俺は俺の―――」
「本当に「俺の意志で」と言えるのか?」
心を削って行く。
それは無慈悲に。空河の心を削って行く。
「鈴葉はお前が力を使う事を望んでいる………それは、お前の意志を尊重してだ。殺す力を必要としているのではない………お前が自分で、自分の意志で誰かを護ろうとする事を望んでだ! 今のままだとお前は………誰も護れず失うぞ?」
「くっ………」
反論出来ない。図星だ。
捲き込まれてきた。
そう思えば、楽なのだ。
自分が力を十分に発揮しなくとも、俺は無関係なのだと。そう言えば楽なのだ。
渦の中に、自分から入るのが怖かった。
人殺しの力。
使うのは怖い。だけど、使われるのは幾分楽だ。
気付けば血の海など言うのはざらだ。
心を押し込める方法を知らない内に身に付けていた。
本心と食い違う口から出る言葉に違和感が無くなっていた。
何時からだ? ………逃げる様になったのは………。
「関係無いで動くな………それはお前の意志を押さえつける。護る為に動け。殺す為の意志を持つな………護る為の意志を持て」
殺す為に行使して来たのだ………今更………今更そんな事………。
愚かだ。と、言われれば激怒するだろう。
何も知らずに、そんな事を言うなと。
それでも全否定されれば、矢張り何処か楽だろう。
一から説明しなくて良いのだから。
聞き流せば済む話し。
だが、理解され全てを否定しない否定は、どう答えれば良いか解らない。
正しい道は見えている。けれども、そこは歩めない。自分の過去を呪えば良いのか? 自分の意志の弱さを呪えば良いのか? 自分の周りの人間を呪えば良いのか?
責任の転移は、見苦しいだろう。
だが、その責任が誰に、何処に在るか解らない場合はどうすれば良い?
流された者が負けか?
理不尽だから、と流せば良いのか?
見えているのなら進めば良いだろ。と、結局は簡単なのかもしれない。
進めるのならば、世界は善人で溢れているだろう。
もしくは、己の正しさを追求した偽善と悪に塗れているだろう。
殺める事と護る事は正反対で、紙一重で、実は繋がる。
誰かを殺めれば誰かを護れる。誰かを護れば誰かを殺める。
哲学を語る程、学は持っちゃいない。
殺すも護るも、結局は差し伸べるか、突き放すかの問題なのだ。
全く汚れの無い差し伸べられた手は、どんな風に見えるだろうか。
時間の経ち過ぎで、ドス黒くなった血塗れの手は………差し伸べた所で拒絶されるのが目に見える。
汚れずに、汚れた仕事は出来ない。
洗っても取れない汚れならば、差し伸べなければ良いだけの話。
………それでも―――………、
『掴んだ手を離す事は愚かな事だ。離す事が前提ならば、そんな手は掴むな。重荷を背負うだけだ』
師の言葉が浮かぶ。
『ん? 護る為の力? そんな物はお前の匙加減一つだろうが。誰かに言われて護るなど、そんな物は任務だけで十分だ。お前は、命令されて護る事に、何の意義を感じる?』
『殺す者に意志は要らない………そんな事は散々言われて来た。殺す者に護る事は出来ない………これも散々言われて来た………だがな、そんな掟は壊してしまえ………俺の元に、意志の無い殺人人形など要らない………そんな者を俺は求めない』
師の言葉が浮かぶ。
あの人は、散々俺に殺し方を教え込み、殺しを行わせた癖に………口から出るのは綺麗事ばかりだった………。
『天士の力はね! 私を護ってくれるんだよね!!!』
不意に、誰か解らない声が脳裏に蘇る。
だが、困惑はしなかった。
誰だ。とも思わなかった。
素直に………脳裏に浮かぶ声に頷いた。
血塗れの手だから、誰も護れない。
そんな事を思っていた癖に、既に俺は誰かの手を握ってしまっていた。
離す前提で掴んだ手に、意味など無い。
意義を求めろ。
俺の力の意義を。
俺の存在の意義を。
ワンパターンな手段など、捨ててしまえ。
俺は、俺の力は殺す為だけの力ではない。
そう、念じろ。信じろ。貫け。
『………うん………僕の力はね………―――ちゃんを護る為の力なんだ』
「俺の力で………誰を護る事が出来る?」
その問いに、木須は眼鏡を上げながら答える。
「それは、お前の意志で考えろ。全員であろうが、一人であろうが、護る事に変わりはない………動け。自分の意志で」
正義のヒーローは、『護る何かを』見いだして、力を増幅させた。
そんな事、感情論だろ。
人間、そんな便利な事はそう簡単に出来ない。
護る者を見つけようと無理だろうと、恐怖は平等に襲って来る。
諦める事も考えてしまう。
責任を感じてしまう。
重荷ばかりだ………。
だけどよ、正義のヒーローさん。
アンタも、俺と差ほど変わりないよな。
アンタも初めは、誰かの意志で動いただろ?
変わりないよな………。
俺でも、偽善なヒーロー程度には、なれるよな?
握ってしまったんだ。
それが不本意であろうとも、握ってしまった。
掴んだ何かを離す程、俺は堕ちてはいない。
不確かな自分の立場は、今でも十分不確かだ。
崩れてしまっても、消えてしまっても可笑しくは無い。
「………勝手な事ばっかり言うなよ………」
「何?」
空河は木須の胸倉から手を離し、頭を掻く。
「意志とかそんなもん。言われて直ぐに見つける事が出来る訳ないだろ? 30分以内に見つける事が出来る正義のヒーローとは違うんだよ………人間の課題を、そんな簡単に見つける事………出来る訳無いだろ………」
「なら―――」
「でもさ」
木須の言葉を遮る。
『―――うん! ずっと、私の手を握っててね!!!』
「………俺は、離す事を前提に手を握った訳じゃねぇ………まだ、完全に言える訳じゃないけどさ………護れるなら、護って損はないだろ」
昔に言ってしまった誓い。
相手は誰だか解らない。
それでも、破る必要はないだろう。
今もまだ、理由が無ければその道を歩む事は出来ないが、それぐらいは許してくれるだろう。
前までの言い訳より、この理由の方がよっぽど偽善で素晴らしいだろう。
やって来た今までの事を切り離せる筈はない。
それでも、………違う使い道を見つけてみたい。
その道を誰かが、正しいと言ってくれるまで。
気を遣ってではなく、素直に本心で。
握った手の相手が、笑顔で「俺で良かった」と言ってくれる様な、そんな先を。
「素直じゃないね」
草島が笑う。
「本当だな………だが、それで十分だ」
「………煩せぇ」
今もテレビの中で戦う正義のヒーローさん。
アンタは、自分の歩んで来た道に、後悔しているか?
最近のヒーローは、どうも現実味があり過ぎて、悩みまくりだろうけど。
俺は、アンタの身勝手過ぎる押しつけ正義が………結構好きなんだよ。
そんな奴が側に居れば、俺もそんな奴になれるって、そう思っていたから。
でもさ、それじゃ駄目なんだよな。
誰かに期待するのではなく、自分がそれを行わなければ、先は無い。
「―――さて、行きますか」
不思議と、面倒臭いって思わない。
今、自分の位置、道を見いだせた様な気がするから―――。
正義のヒーローさん。
アンタ今、誰の手を握っている?
俺は、随分沢山の奴の手を………握っていたらしい。
世界を護る正義のヒーローさん。
俺の護る対象が少ないって、笑わないでくれよ。
これが、今の俺の精一杯なんだ―――………。
『天士は正義の味方だね!!』
『………僕は、―――ちゃんを護れるだけで、十分だよ』
『それじゃぁ、私の味方だね!!』
『………うん』
『ずっと、ずっと! 味方だね!!』
『………うん!!』
前半と後半の落差と言ったら!!
前半はぶっちゃけ字数稼ぎですよ!!
………いや、書いてて楽しいんだけどね。7並べ………最近やってないな。
と、友達が居ないとかじゃな、ないんだからね!!
………少ないだけです。
リア充なんて滅びてしまえ………。
さて、今回の内容ですが、
天士君は捲き込まれ体質ではなく、捲き込まれないと動けない事が発覚!
そんな感じだったような………。
まぁ、支離滅裂なのは今に始まった事ではないです。
今回の事で天士君が能力をガンガン使うなんて事は起こりません。
飽く迄、このままじゃ駄目だよな。と痛感しただけです。
書いていて、少し楽しかった回でもあります。
正義のヒーローさん件ですかね。
憧れなんですよ。ですが、違う道を歩んでしまっていた。
葛藤です。解っているのですが、葛藤です。
では、次回も読んでくれると嬉しいです。