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One-eyed  作者: 龍門 
『殺人集団』襲撃編 =Blood-stained fight=
54/60

フォックスフェイス

花言葉は「偽りの言葉」


少し今回の話に合っていると思います。

まぁ、思うだけなんだけどね。


暫くは毎週木曜日更新になります。

他の作品も書かないといけないし、最近バイト忙しいし………。

学業? ………それでは読んでみてください。






 侵入者・桔梗姫響は恐れていた。

 目の前に立つ者を。


 能力で負けているからではない。

 彼女の事を知らなくとも、彼女の言葉の重さで、過去の惨状が解ってしまう。


 同じ程の、またはそれ以上の痛みを味わった、言わば同類。


 だが、彼女、麒麟音紗々はそれを認めなかった。

 何故彼女は私の事を否定する?


 同じ痛みを伴った者同士。

 それでも絶対に相容れない。


 桔梗は奥歯を噛み締める。

 恐怖。襲い来るは恐怖。


 戦いたくない。

 戦えば、彼女の言葉の重さに押し潰される。


 自分の言葉が軽いと思った事は一度も無い。

 辛い過去は誰よりも痛々しい物だ。


 そう、私は―――誰よりも………。


 桔梗の能力は『愛情の言霊アフェクション・エレジー

 言葉を扱う能力。

 有り得ない事を有り得る事として現実とする力。

 左右の能力『唯我独尊ワガママ』と似ている。


 有り得ない事、即ち分身、空中に立つ事が出来るなどだ。

 反則的で最強とも言える能力。


 だが、その能力には欠点があった。

 それは相手よりも優位の立ち位置に立ち、尚かつ自分の『言葉』を理解させてはいけない。


 支離滅裂な言葉を叫ぶのは、相手に理解させない為。

 言葉に隠された『言葉』は、理解される筈が無い。


 実際に、桔梗の『言葉』を理解出来る者はいない。

 それでも麒麟音がそれを消し去る事が出来るのは理解しているからではなく、その『言葉』以上の力を持っているだけの事だ。


 強い力、『言葉』により桔梗の『言葉』は消え去る。

 相殺ではない。消し去りながらも自身の力をぶつける。


 麒麟音は桔梗を力でねじ伏せているのだ。


 そして、その状況下で桔梗の方が有利な訳がない。

 劣勢。それは桔梗の動揺の仕方で解る。


 虚ろな目に、小刻みに震える肩。

 麒麟音を直視する事が出来ず、俯く。


 この状況下で、桔梗は能力を100%引き出す事が出来なくなっている。

 今までは桔梗の言動に誰しも恐れた。


 それが、絶対的な力に押されている。


「………何で………何で………何で………」

 俯きながら呟く。


 その姿を見ながら、麒麟音は哀れむ様な目で見つめる。

 これが、自分のもう一つの姿なのだ、と。


 麒麟音と桔梗は選択肢が違っただけなのだ。

 麒麟音の選択が桔梗と同じであったのならば、今の桔梗は麒麟音の姿。

 桔梗の選択が麒麟音と同じであったのならば、今の麒麟音は桔梗の姿。


 同じであった。

 けれども、人生に措いての未来の分岐点で互いに違う道を行った。


 桔梗は過去を恐れ、痛みを忘れられずに未来を見いだせずに、逃げる道を選んだ。

 麒麟音は過去を抱え、拭えない痛みを未来と言う薬を求め先を歩んだ。


 似ている。そう、似ている。


 だが、麒麟音はそれだけで手加減する事も観逃す事もしない。


「………終わりにしよう」

 麒麟音の眼が鋭くなる。


 その言葉を聞き、桔梗の肩はビクッと震えた。

「………終わり? 終わり? 私が………終わり? 愛を………十分に受けていないのに? 愛を………十分に捧げていないのに? こんな所で………アンタなんかに………」


 その言葉を聞いただけで、麒麟音は解った。

 似ている。だけれど、例えこうなっていない桔梗であろうとも、絶対私と相容れないのだろうと。


 彼女は―――酔っているのだ。

 悲劇のヒロインと言う立場に。


 彼女は、未来だけではなく過去すらも消し去っているのだ。


 先程の彼女の叫びは、紛れも無く本物、本心だろう。

 心の痛みは永遠に残り、彼女は恐れている。


 だが、彼女はそれに酔っている。

 自分は可哀想だ。自分よりも辛い過去を持つ者など居ない。


 矛盾。

 逃げ出したいのならば、そんな事は思わない。

 思いたいのならば、逃げ出そうともしないだろう。


 だからこそ、彼女の言葉は軽いのだ。


「私は………私は………終わらないッッッ!!!!!!!!!!!!」

 叫ぶ。その瞬間、桔梗の前に3人の桔梗が現れる。


「殺す! 殺す! 殺す! 殺す! 殺すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!!」


 桔梗の言葉に混じるのは殺意などではない。

 気付き始めた自身の『本心』への逃避。


 いや、気付き始めたのではない。

 気付いていながらそれに気付かないフリをしているのだ。


 桔梗は自身の過去を自身の最大の立ち位置として考えていた。

 自分以上に辛い者は存在しない。


 それこそが相手よりも優位に立てると考えていた。


 だが、その考えは余りにも狭すぎる。

 世界中に溢れる不幸の中で、彼女の不幸が露骨で痛々しかった。


 彼女は錯覚してしまった。

 この痛みは、自分だけ負っていると。

 この辛さは、自分にだけ襲って来ると。


 私は、悲劇のヒロインだ、と。


 だが、それすらも揺らいでいる。

 目の前に立つ、同じ程度の辛さを味わっただろう者が。


 『言葉』が揺らぐ。

 自分の痛みが呑み込まれる。

 私の立ち位置が奪われる。


 誰も私を見ない。

 誰も私を愛してくれない。


 私は、誰も愛せない?


 恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。


 私は、この女が恐ろしくて………殺してしまいそうだ。


「死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ね! 死ねぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇえッッッ!!!!」

 叫ぶ。目の前に立つ恐怖を消し去ろうと。


 能力で現れた3人の桔梗は一直線に麒麟音へ向かって駆ける。


「………終わりよ」

 麒麟音は『言葉』ではなく言葉で知らせる。

 これ以上は悪足掻きにもならない。


 この程度で麒麟音の『言葉』は揺らがない。

 既に、桔梗には麒麟音を倒すカードは残されていない。


 そう麒麟音は勝手に思ってしまった。決めつけてしまった。


 最悪の切り札は、麒麟音自身が持っている事を忘れ。


 1人目の桔梗が麒麟音と衝突しようとする間際、

「『消えろ』」


ブシュゥッ!!

 霧散し消える。


 そして2人目が麒麟音の横から突っ込む。

「『失せろ』」


ブシュゥッ!!

 2人目もまた霧散し消える。


 無駄な足掻き。

 が、霧散した2人。………後1人は?


「………キャハ! 後ろの少女はだぁ~れ?」

 桔梗がゆっくりと笑みを浮かべ顔を上げる。


「!?」

 麒麟音は直ぐさま後ろを振り返る。そして、『言葉』を発せようとした瞬間、立場が一瞬平等となった。


 この時、麒麟音が自身の最悪な切り札に気付いた瞬間。

 絶対的な立場が揺らぐ瞬間。


 桔梗は待っていた。壊れ掛けながらも、待ちに待って。

 『言葉』を崩すだけが、方法ではない。


「キャハッ!!!」


ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!


「!!!??」

 鮮血が舞う。


「隙………見つけた!! キャハッハハハハハハハハハハ!!!!!!」

 高らかに、壊れた様に笑う桔梗は何時の間にか麒麟音の真横に立って居た。


 そして、飛び散る血は麒麟音の右肩から腹部にかけて。


 やられた。麒麟音は顔を歪めた。

「クソッ………!!」

 瞬時に反撃に出ようとしたが、


「遅いんだよッ!! アンタは………遅いんだよッッ!!!!」

 桔梗が心底嬉しそうに叫ぶ。


 その姿を見ながら、麒麟音は視線を横にずらす。

 そこには、座り込み、自身の肩を抱く星野宮ミナ。


 そして、その横で笑みを浮かべる3人目の桔梗。


「終わりよ」


ブシュッッッッ!!!!!


「がはッッッ!!!!」

 口から血が噴き出す。

 腹部から激痛が走る。


 貫かれた。それは月柏同様。腕で。

「余所見厳禁………即死ぬわよぉ?」


ブシュゥゥゥウウウゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!


 腕を引き抜き、血が噴き出る。

「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッッッ!!!!!!!!!!!」

 高らかに、耳障りな程高らかに笑い叫ぶ。


 歪みに歪んだ表情は、桔梗を知る者でも彼女と断定するのに少し時間が掛かってしまう程に。真っ白であったドレスは真っ赤に染まる。自身の血ではない。他人の血で。


 眉を細め、口から血を流しながら麒麟音は力を振り絞り呟いた。

「………『死ねるか』………」


ドサッ―――………。


 力無く、麒麟音は倒れる。

 血は止めどなく流れ出る。


 見ているだけで、麒麟音の体温が失われていくのが解る。

 その姿を見ながら、桔梗は血塗れの腕を自分の胸へ持って行く。


「………アンタの事は愛せないけど………アンタは私を愛してよ、ね?」





















 『宝殿ほうでん学園』外部。


 目の前は森。そして一本の道を挟んだ世界はビル群。

 まるで現実と幻想の境目かの様に、不自然に存在する森。


 実際は、森は変わらず何年もその場に居る。

 増えたのはビル。コンクリで出来た建物は、その場に元から在った物を異質へと変えて行く。


 その自然を異質と変化させるビル群の1つ。

 焦げた茶色の外面。灯る光は疎らな雑貨ビル。


 そのビルの屋上に1人の男が立っていた。

 黒いスーツを着こなし、黒いハットを深々と被る男。


 男は森を静かに見つめる。


 何を考えているのか。それをまるっきり感じさせない無表情。


「………零………これが、君が護った者が作り出した幻だよ」

 言葉を零す。


 男の声は30代半ば程か、色気のある声だ。

 だが、その声の何処かに悲しみを忍ばせている。


「………『空が見える鳥籠』………こんなにも、君の考えと逆を行くとは………私も思ってはみなかった………だからこそ、その核である『永遠の未完ネバー・インパーフェクト』をこの目でもう一度見なければならない」


 風が吹き抜ける。

 真夜中に浮かぶ雲はゆっくりと動き出す。


「君の命を殺した私の計画が完成するか………君の心を壊した彼等が先に『鳥籠』を完成させるか………そして、狂ったあの科学者の『真なる能力者』が先に完成するか………山積みだよ」


 笑みを零す。

 自信に満ち溢れた笑みではない。まるで、この先の未来を予期しているかの様な笑み。


「………父上」

 不意に、男の後ろに人影が現れる。


 雲によって隠れていた月が、吹いた風により姿を現し月光が照らす。

 現れた人影は黒い包帯で顔を隠し所々見える黒髪を靡かせている。


 男は振り返らずに尋ねる。

「どうしました?」


「凍が、自害したようです」

 黒い包帯で顔を隠す男は伝える。


 その事を聞き、男は空を見上げた。

 まん丸な月。


「………だから、私は今こんなにも悲しいのか………」

 呟く。


 そして、頬に雫が流れる。


「父上、私とミルリラオも向かいます。父上はどうなされますか?」


「………暫く、風に当たるのも悪くありませんね」


「………そう、ですか………アネックが側に居ます。何かあれば彼女に」

 そう言い残し、顔を黒い包帯で隠した男は消える。


 男は暫く空を見上げていた。


「………掛け替えの無い家族ファミリーに………永遠の加護を」


 再度、月は雲に隠され月光は遮られた―――………。













指はスムーズだった!!


私の作品の中での思想などは偏ったものですので、これを読んで不快に思われた方申し訳ありません。


月柏、五十嵐に続き紗々までも!!

ミナ………此所で足を引っ張る。


どうやら、この作品のメインヒロインは月柏的に書いていますがね、ミナもヒロインですよ。

ミナの場合は過去の話をしない限り飛び抜ける事は無理です。

ですが!!

この先ミナは沢山登場します!!

増えろミナファン!!


そして最後の男の台詞。

色々含まれています。


謎を出して来たので、此所からは少しずつ消化し増やしを繰り返そうかなと思います。


完結するのはいつだ!!


それでは、それでは………。


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