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One-eyed  作者: 龍門 
『殺人集団』襲撃編 =Blood-stained fight=
49/60

柊南天

柊南天、ひいらぎなんてんです。

花言葉は「激しい感情」「激情」「愛情は増すばかり」などですかね。

まぁ、「激しい感情」とか「激情」ですかね、今回は。


と、言いますか花言葉を探すのが一番手間だ。疲れる。


それと今回からグロイ描写が増えます。

何処までが良いのか解らないのでね。ぶっちゃけ。







 0時ジャスト。

 けたたましく鳴り響く警報。


 生徒や教師などが混乱している最中、既に何名かの生徒は動いていた。

 第二校舎屋上から下を見下ろす生徒。


 天下の生徒会長様、月柏鈴葉。

 腕を組み、髪を靡かせながら下を睨み付けている。


 月柏は考えていた。

 今回の侵入者は今までと違うと。


「…………この警報を聞いても尚、行動しないのは何故だ?」

 疑問を口にする。


 既に自分の存在を皆に気付かれているのだ。

 それなのに行動を起こさない。余りにも鈍すぎる。


「………厄介だな」

 明らかに今までと毛並みが違う相手に月柏は若干顔を歪めた。


 だが、直ぐにその表情を消し去る。

 目を瞑り足下に風を作り出す。


 ブオォォォォォォォォォォォッッッ――――…………。


 風が響き渡る。

 少しずつ体を浮かせ、飛ぶ。


「さて、相手は戦いをご所望の様だし………潰し合いね」

 そう呟き、猛スピードで闇に消えた。














 星野宮は突然の警報で混乱していた。

 部屋の窓から外を眺めるが、暗闇で何も見えない。


「一体………何が?」

 兎に角自身の立場を思い出す。

 生徒会員は外部からの侵入者を排除するのが仕事だ。


「動かないと………」

 星野宮は直ぐさま部屋を飛び出そうとしたが、

「あっ、パジャマのままだ………」


 暫く考える。

 このまま行くか? 着替えるか。

 こんな二択は速攻で決まる。


「着替えよう」

 握っていたドアノブから手を離し、急いで着替える。

「………制服で良いよね?」


 服に迷う。

 まるでデート前日に着る服で悩む女の子の様に。唯、顔に一切笑みが無いのは在る意味恐怖だ。


 日頃からこのスピードで着替えれば?と思ってしまう程の速さで着替え直ぐさま部屋を飛び出す。


 すると、

「おぉ~ミナちゃん♪ お出かけ?」

 麒麟音が手を振りながら星野宮の元へ駆けて来る。


「えっ!? あっ、紗々ちゃん! どうしたの?」

 急いでいるのだが、立ち止まる。


「そっちこそ♪」

 と、笑みを浮かべる麒麟音。


 星野宮は麒麟音を見て気付く。

 制服を着ている。

「………紗々ちゃん? 何で制服着てるの?」


「ん? 何でって、ちょっと今回は部屋で熟睡する訳にはいかなくてさぁ♪」

 頭を掻きながら笑う。


 星野宮は真面目な表情だ。

「………それって、麒麟音紗々として? それとも『隻眼の番犬ワン・アイド・ケルベロス』のσシグマとして?」


 星野宮は麒麟音の説明は受けている。

 『隻眼の番犬』に所属する空河の理解者だと言う事も解っている。


 だからこそ、尋ねた。

 麒麟音はRANK上げの時、その際に侵入してきた『隻眼の番犬』の1人と接触しなかった。

 気付かなかった。星野宮は最初はそう思った。


 だが、星野宮は麒麟音と此所何日か会って話をしていると、理解出来た。

 彼女は空河の事を理解していると。誰よりも空河を大切にしていると。


 そんな彼女がRANK上げの時の騒動、空河の危機でもあったあの場に居なかったのは、自分の力は必要無いと解っていたからだ。


 あれ程の事があったのに動かなかった麒麟音が、今回は自ら行動しようとしている。

 これは、麒麟音紗々として空河の為に行動するのか。σとして組織の命令で動くのか。


 この2つしかない。

 学園の皆を守るなんて事は100%無い。


「………両方だよ」

 麒麟音は星野宮の問い笑みを崩さず答える。


 星野宮は直ぐさま問う。

「もし、どちらかを優先する状況になったら、紗々ちゃんはどっちを優先するの?」


 空河を取るのか、任務を取るのか。


 その問いを聞いた麒麟音は間も空けずに答える。

「天士」

 表情に笑みは無い。


 これは決意なのかどうなのか。

 此所まで言い切れる彼女と空河の間に何が有ったかは、星野宮には見当も付かない。

 けれども、星野宮は小さく笑みを作る。

「惚れた相手だもんね」


 そう言われ、麒麟音も笑みを作った。

「弱みだよ。弱み♪」


 互いに笑う。


ドゴォォォォォォオオォォォォォオオォォォォォォオオオオオオンッッッッ!!!!!!


「「!!?」」


 何かが壁を突き破る音が響き渡る。

 直ぐさま星野宮と麒麟音は駆け出す。


「まさか見境が無いなんてッッ!」

 走りながら星野宮は叫んだ。


 侵入なんてモノは隠密だと思っていた星野宮に取って、この強襲とも言える攻撃に驚いている。


 だが、麒麟音はこの強襲に関しては至って冷静だった。

「既に侵入がバレているのに逃げない時点で、相手は姿がバレても問題無いって事だよ。それに、相手は………」

 言葉を切った。


 相手を知っている。

 言うのに躊躇っていると言う事はそれ程の相手。


 星野宮は気を引き締めた。

 彼女は『血塗れ姫ブラッディ・プリンセス』と呼ばれる程の残虐を誇った。


 けれども、それは飽く迄訓練での事だ。

 『バーディア』では限りなく実戦に近い訓練を行う。

 だが、彼女は経験した事は無い。無差別に冷酷に戦う場を経験した事は無い。


 止める教官が居なければ、決められた事などない。

 手を使うな、足を使うな。銃を使うな、剣を使うな。殺傷性の無い攻撃をしろ。

 こんなルールは無い。


 生き残れ。殲滅しろ。どんな手を使ってでも。

 それが戦いだ。


 本当の戦いを知らない彼女が、本当の殺し合いなど知る筈も無い。

 戦争にだって使用出来ない武器があるのだ。

 戦争にだって一応のルールはあるのだ。

 戦争にだって大義名分があるのだ。


 だが、殺し合いにそんなモノは一切ない。

 生き残る。

 それ以外に目標もない。

 殺す。

 それ以外に目的もない。


星野宮が走りながら考えている最中、真横の壁が爆ぜる。


ドゴォォォォォォオオォォォォォオオォォォォォォオオオオオオンッッッッ!!!!!!


「「!!?」」


 外からの攻撃。壁の破片が二人に向かって飛ぶ。


「『交響曲シンフォニー』!!!」

 叫び直ぐに弦を出す。破片は2人の前で何かにぶつかった様に空中で跳ね返り地面に落ちた。


 目の前の大きな穴から声が聞こえる。

「………貴女達は? 戦える? それとも戦えない?」

 問い。だが、その問いに意味は無い。


 どれを答えようとも変わり無いからだ。


 麒麟音の顔は歪んでいた。

「………派手な登場。そんなに目立ちたいの?」


「目立つ? それは違う。だって、此所には貴女達2人と私しか居ないじゃない。それでは目立たない。本当は観客ぐらい欲しかったの。でも…………」


ズズズズズズズ――――…………。


「「??」」

 何かが聞こえる。何かを引きずる音が。

 だが、壁の爆発により粉塵が舞い、視界が悪い。


「でもね、見られると恥ずかしいじゃない? だから、逆にこの方が居心地は良いの。そう、凄く良いの」


ズズズズズズズ――――…………。


 何かを引きずっている。

 少しずつ粉塵が晴れていく。

 だが、晴れた所で暗闇。そう簡単に何かは解らない。


 だが、麒麟音は唇を噛んでいた。

 慣れた臭い。鼻につく臭い。


「本当、此所は面白い場所ね? 外なら、私が能力者だと知れば無防備な背中を見せて皆逃げるもの。だけど、此所は逃げずに銃口を向けてきた。少し嬉しくて………凄く苛ついた」


ドシャッッ……………。


 何かが落ちた。

 それは何か。


 星野宮は目を凝らした。


 暗闇の中に立つ人影。

 そして、その人影の足下に転がる瓦礫。


 瓦礫…………星野宮目を凝らした。


「折角摘んだ花も、こんなに元気が無くなったの。水が必要。でもね、此所には綺麗な水は無いの…………どれもこれも皆、赤いの」


「!!?」

 星野宮は気付いた。


 瓦礫ではない。

 足下に転がるのは瓦礫ではない。


 見覚えのある服。

 警備員。


 だが、それ以外は解らない。

 顔を見れば、性別・年齢など大まかな事は解る。だが、


「彼のもね、真っ赤だったの。だから花にあげる事は出来なの」

 立つ影は足下に倒れる警備員を踏みつける。


「!? 止めろッッ!!」

 思わず叫んだ。


「止めろ? 貴女、彼と知り合い?」

 人影は尋ねる。


「………兎に角………止めろ!!」

 星野宮は唇を噛む。


 すると、人影は何が面白いのか笑いながら言った。

「アハハッ!! もしかしたら知り合いなのかもしれないわよ? だからほらっ! ちゃんと確かめないと!!」


パチッ。


 何かを押す音。

 その音は懐中電灯のスイッチの音。


 照らし出す。

 そう、見えてしまう。


「!!?」

 星野宮は口を押さえた。

 血の気が引く。


「でもね、顔じゃ確かめられないの。だって、此所に来る途中で、重くて斬り離したからね!!!!」


 人影は笑った。

 懐中電灯の光が照らすのは、その人影の足下に倒れる警備員。


 だが、首から上が無い。

 斬り口から、血が流れ出ている。

 肉が露出している。骨が露出している。


「なっ………」

 星野宮は声を失った。


 余りにも唐突に、余りにも露骨に。

 星野宮は人の死体を目の当たりにしてしまった。


 血塗れで生きている人は何度も見た事はある。

 だが、死んで血塗れの人間を見た事は無い。


 膝が震える。体が震える。

 恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。恐怖。


「うあ………あ………」

 精神が揺らぐ。

 自分の覚悟が揺らぐ。


 今までの事が全て生易しく感じる。


 死。目の前に広がる赤は命だ。

 それが唯々、無残に流れ出ている。


 吐き気。

 ついには星野宮は崩れ落ちた。

「ハッハッハッハッ……………!!」

 胸を押さえる。呼吸が困難になっていく。


 その様子を見た人影は揺らぐ。肩を震わせているのだ。

「アハハハッ!! もしかして怖いの? 人の死が怖いの!? それは傑作ね! 彼は唯、今死んだだけじゃない! 首が無いだけじゃない! それが他の死とどう違うの!? 病気で体を蝕まれた死体とどう違うの!? 唯、露骨に死を現しているだけじゃない! アハッハハハハハハハハハ!!!!!」


 笑い声が響く。響き渡る。

 これが壊れた人間。

 麒麟音はチラッと胸を押さえ震える星野宮を見る。


 これが差。解っていたが此所まで壊れている者が来るとは思わなかった。

 あの思考。彼女は生粋の殺戮者だと解る。


「………質問をしても良いかな?」

 麒麟音が尋ねる。


「ハハッ………貴女は恐怖していないみたいね? まるでその目、この死に慣れている様な目………面白くない。面白くない。面白くない」

 突然人影は殺気を垂れ流しにし始める。


 麒麟音は顔を歪める。

 これはヤバイ、と。


「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌ァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 叫ぶ。何かに怯える様に。怒る様に。


「愛を! 私は愛が欲しいのッ!! そんな目は要らない! そんなモノは要らない!! 私は私を愛でる愛が欲しいの!! 私は私を裏切らない愛が欲しいの!! そんなモノは要らない!! 私はァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 叫び出す。それは本当に壊れた人形の様に。


 支離滅裂に。

 自身の渦巻く感情を唯々口にし、叫んでいる。


「子供が愛を語るのは少し早いんじゃない?」

 突然声が聞こえた。


 それは人影の後ろから。叫ぶ少女の後ろから。

「んあぁ? ………アンタ………誰よ?」

 人影………少女は虚ろな目で振り返る。


 その後ろには、

「私も欲しいわね、裏切らない愛。でもその前に彼を振り向かせないとダメだと思わない?」

 少女の問いに答えず、笑った様な口調で話す。


「誰だって………聞いてるんだよォォォォォォォ!!!!!」

 叫ぶ。完全に情緒不安定だ。


ボウッ!!


 火が灯る。

 それは声の主が生み出した火。

「名乗りはしない。侵入者に対して、私は礼儀を知らない。此所で死ぬアンタに、名乗る必要も感じないしね」


 髪を靡かせる。

 足に風を纏い、中に浮きながら左手に生み出した火を少女に向ける。


「さて、愛を語ろうか?」


 天下の生徒会長様、月柏が戦いを始める。
















一方RANKⅣ男子寮付近。


ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!


「ぐが………あ………」

 警備の男性が体から血を噴き出し倒れる。


「結構多いんだね。大変だ」

 返り血を浴びながら、青髪の男か女か解らない人間が倒れた男を踏みながら先に進む。


グチャッ……グチャッ………。


 生々しい音が響く。肉を踏みつける音。血だまりを踏む音。

 だが、青髪はニコニコと笑いながら歩いている。


「さて、『永遠の未完ネバー・インパーフェクト』の居場所は何処かな?」

 辺りを見渡しながら歩くその姿は、完全に狂っていると言えた。


 どうして、片手に足を持っている?

 どうして、片手に頭を持っている?

 どうして、そんなにも笑っている?


 手や頭を、まるで荷物の様に。軽々と手に持っている。


 どうしてそんな簡単に人の足を千切れる?

 どうやったらそんな簡単に首を千切れる?


 何故、コイツは笑っている?


グチャッ……グチャッ………。


 肉塊と化した死体。それを躊躇無く踏みつける。

「何処かな? 早く見てみたいな」

 楽しそうに笑う。笑みには何も浮かんでいない。飛び散る返り血が何かのメイクに見えてしまう。


「………フフ、で、君は誰かな?」

 青髪は真っ正面を見据える。


 影が揺らぐ。静かに、静かに現れる。

「それは俺の台詞だ。お前は誰だ?」


「俺、または僕、または私の名前ですか? 俺、または僕、または私の名前は天酉凍と言います。お見知りおきを」

 自己紹介し、丁寧に頭を下げる。


「お前の名前じゃねぇよ。お前の正体が一瞬で解る情報を寄こせって事だ」

 先程とは違う、最初に現れた人影の後ろから新たな人影が現れる。


「俺、または僕、または私が誰か解る? ………そうですね。では、こう言っておきましょう。私の父は………狂獄道眼だ、と」

 笑みを濃くする。それは余りにも濃すぎる。


 一気に返り血が恐怖に変わる。

 手に持つ足や頭が目に映る。


 だが、二人の人影は動揺を見せない。

「随分な奴の名前が出たな。子沢山のお父さんとは」


「『殺人集団ファミリー』の人間………目的は天士か?」


 2人の人物は前へ歩く。

 上から照らす街灯。


 姿がハッキリと見える。


 1人は五十嵐久太郎。

 1人は越智宗次。


「おやおや、これは、これは…………面白い餌が現れました」

 天酉は笑みを浮かべる。


「「んあぁ?」」

 五十嵐は眉間に皺を寄せ、越智は天酉を睨む。


 そして、2人は同時に中指を立てた。

「「テメェが餌だよ」」


「フフ………始めましょうか? 仕事スキンシップを」


 3人の狩人。


 戦闘が始まる―――………。












戦闘は始まらなかった。

まぁ、次回は確実に戦うしね。


それにしても、天酉も姫響もかなり危ないキャラになった。

二人とも何故首を落とす?

とか、書きながら思ってました。


この作品の中で唯一ミナは他と若干違います。

彼女が有る意味正常とも言えますね。

主人公が若干そう言うのに慣れてしまっているので、ミナが代わりに。ごめんね。


それでは、次回もお願いします。

それでは、それでは………。

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