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One-eyed  作者: 龍門 
次へのプロローグ =Long prologue to the following=
44/60

ピクニック・デート!! アナザー・タイム

あれれ? 若干シリアス?

否! これは許容範囲内!

それと、様々な「○笑」的な言葉を使っているのは態とです。

何時もはそんな事せずに苦笑か失笑なのですが、何となく。






 森の中。あぁ、凄まじく森の中。


 辺りを見渡しても草木が生い茂っている。

 道………と、言うか獣道を歩く2人。


 デート?いやいや、探検の間違えでは?

 そう言ってしまいそうな程だ。


 飛び出ている木の枝を空河が折り、倒れそうな星野宮を空河が支え、虫に驚く星野宮の為に虫を投げ飛ばしたり………紳士だね!!


 と、まぁ見ればカップルと言うか、姫と護衛みたいな関係の2人。

 だが、行動する前に一々空河が「面倒臭い」と呟いているのはどうかと思う。


 そんな空河が逃げないのは、星野宮に手をがっちりと掴まれているのが原因。

 星野宮は積極的に手を繋いでいるのではなく、虫が怖く無意識に手を掴んでいるのだ。


 虫が怖いなら何故森に?

 度々尋ねようとしたが、それはそっと胸の中にしまう。

 ………面倒な事になりそうだから。


 暫く歩き、流石の空河も尋ねる。

「……………………目的の場所までは後何分?」


「……………………………………………………………」

 星野宮は辺りをキョロキョロしながら答えない。


「………おい、ミナ?」

 顔を覗き込む。


「ひゃっっ!! えっ? ど、どどどどどどどどどうしたの!?」

 顔と顔が近かった事に顔を赤くしながら尋ねる。


「いや、さっきからキョロキョロしてるから、何かあったのかと思ったんだけど?」

 頬を掻きながら尋ねる。だが、空河は良くも悪くも鈍感の分類に入るのだ。

 現に、今も面倒臭そうな表情だ。


「えっ、い、いや、む………虫が………いる……気配が」

 と、真っ赤な顔を直ぐさま青に変色させ、辺りを見渡す。


「気配って………」

 苦笑と溜息。

「で、何処に向かってるんだ? 唯森の中歩くだけじゃないだろ?」

 尋ねられ、星野宮が何故か一瞬考える。


「……………………………えっとぉ~………確かこの先に?」

 そう言って歩き出す。


 その後に続きながら、

「何故疑問形?」

 と、首を傾げる。








 一方追跡する者達はと言うと…………。



「此方茨姫。見つけたわ。でも、この先って一本桜よね? 誰が教えたの? どうぞ」

 ※月柏。

 2人の後ろから無線で尋ねる。



「此方赤ずきん♪ その一本桜って、樹齢200年の桜だっけ? 確か……木の下で告白したら必ず結ばれる、だっけ? どうぞ♪」

 ※麒麟音。

 木の枝を上下に振りながら森の中を歩く。



「此方長靴を履いた猫。その噂もあるんだけど、あの桜には色々噂があるし、告白しても振られたって男子生徒が居るし、多分デマだと思うけどね。どうぞ」

 ※鴨梨。

 小石を蹴りながら説明する。



「此方白雪姫。てか、誰がミナに教えたの? 此所に来てまだそんな経ってないわよ? 一本桜の話は有名だけど、場所は知らない人の方が多いわよ? 現に天士も解らないぽいし。どうぞ」

 ※陣内。

 持ってきた水を飲みながら尋ねる。



「此方シンデレラ。も、もしかしたら四季波ちゃんかもしれませんよ? どうぞ」

 ※明堂。

 若干道に迷いながら言う。



「………やられたわね。四季波なら知っていても不自然じゃないし」


「そうね。てか、何でアンタが此所に居るの?」


 何故か合流しちゃった2人。月柏と陣内。

 仲が悪いからか? 何故か妙に合ってしまう。


 まぁ、この後は予想通りの口喧嘩勃発。



「ところで、裸の王様は?」


「ん~………解らない♪」

 此方も合流した2人。鴨梨と麒麟音。


「元さぁ~ん! 紗々ちゃぁ~ん!」

 遠くから手を振りながら走って来る明堂。


「おっ! メイドちゃんが居るならお昼食べられるじゃん」


「お昼♪ お昼♪」

 テンションを上げながら明堂に近づく。


 その様子を見ながら、鴨梨が尋ねる。

「………ジュラフちゃんは良いの? 天使ちゃんと幼なじみちゃんが一緒に居て会長みたいに嫉妬的な感じとかは」


「ん? あぁ~まぁ、勝負で負けたしね。それに、同じ人を好きになった同士、フェアに行きたいじゃん♪」

 と、満面の笑みを浮かべる。


 鴨梨は驚く。

 『隻眼』の中にも、この様に自分の気持ちを素直に言える人間が居たのかと。

 聞いたこっちが恥ずかしくなるような、そんな台詞を言える事に。


 鴨梨は薄く笑みを浮かべる。まるで羨む様に。

「そっか、そっか。まぁ、ドロドロするよりマシだろうね」

 だが、その笑みを直ぐ消し態とらしく笑う。


 一瞬垣間見た笑みを、不審がりながらも追求も考えもせず、麒麟音は満面の笑みを作る。

「でしょ? まぁ、最後に勝つのは私だけどねぇ~♪」

 明堂が持つ大きなバスケットの中を覗く。


「何の話ですか?」

 明堂が首を傾げながら尋ねる。


 が、鴨梨と麒麟音は笑みを浮かべて、

「「秘密♪」」

 と、誤魔化した。

















 2人は未だ森の中を歩いていた。

 ピクニックと言っても獣道でのピクニックはテンションが上がらないモノだ。


「……………………何処に行くの?」

 この質問は何度目だろうか?

 面倒くささMAXの空河は相変わらず手を引っ張られながら尋ねる。


「ん~………………………後少しの筈」

 星野宮自身もこの学園に来てどう長くない。てか、短い。


 頻りにポケットの中に入っている紙を覗きながら先を進む。

 いや、周りがこうも木や草ばかりだと、何時の間にか逆走しているのかもしれない。

 空河は遭難者の気持ちを味わっていた。


「別に部屋でも良かっただろうよ? 何でピクニック?」

 聞かない様にしていたのだが、もうどうでも良くなり尋ねる。


「……………………へ、部屋は………まだ早い」

 顔を真っ赤にし、小さな声で答える。ピュアって言ったらピュアなのかもしれない。


「まぁ、別に良いんだけどよ。…………ん? 森終わるぽいな」

 目を凝らし、先を指さす。

「へ? ………本当だ!」

 指が指された方を見て、一気にテンションを上げる星野宮。


 振り返り、空河を見て笑みを浮かべ引っ張り走り出す。

「行こっ!!」

 子供だ。そう思いながらも、空河は軽く笑みを浮かべた。


「そんな引っ張るなよ」

 などと文句を言いながら。


 星野宮に引っ張られ、空河は走る。

 枝を避け、石を飛び越え、木を躱し。


 何だかんだ言っても、空河の表情は笑みだった。

 楽しいのでは、多分ないのだろう。

 今でも面倒臭いが殆どを占めている。


 それなのに、笑みを浮かべているのは今、自分の腕を引っ張る星野宮が原因なのだろう。

 子供の様に笑みを浮かべ、子供の様に駆け、子供の様に息を切らし。


 何となく、昔の記憶を思い出していた。


 今にも消えてしまう様な。

 靄が邪魔して思い出せなかった記憶。


 手を引かれ、近くの山を探検した記憶。

 あの時も、今の様に引っ張られていた。


 右に行ったり、左に行ったり。木に登ったり、川を飛び越えたり。


 小さな頃の記憶。

 それが、この様な日常で浮かび出す。

 その事に、空河は笑みを浮かべていた。


 空河ではなく、蓮見だった頃の記憶。

 5歳と言う、思い出せなくとも可笑しくない記憶。

 その記憶の鮮明さに、思わず笑みを零す。


 目の前に光が近づく。

 森の終わり。目的地。


 ふと、空河の頭の中に声が響いた。

 記憶、昔の声。

 同じシチュエーション。


 駆け、駆け、光が見えて、俺はこう言った。


『出口だ!!』


「………出口だ」


 すると、俺の腕を引っ張る彼女は声を張り上げた。


『出口じゃないよ!! 入り口!!』


「出口じゃないよ? 此所からが入り口!」


 その意味が解らず、俺は………僕は尋ねた。


『えっ? だって、森の終わりだから出口でしょ!?』


「森の終わりだろ? それだったら出口だろうが」


 彼女は、走りながら振り返る。その時の表情は、笑みだった。


『終わっちゃ、楽しくないもん!』


「終わりじゃ、楽しくないじゃん!」


 そして、こう続けた。


『「もっと、もっと! 沢山一緒に居たいじゃん!!」』


 目の前だけではなく、周りも光に包まれる。

 森の暗闇に目が慣れていた為、いきなりの明るさに目を瞑る。

徐々に瞼を開ける。


 すると、目の前に黄色が広がっていた。


 蒲公英が絨毯の様に咲いている。

 その一本一本が風に揺らぎ、鼻を擽る特有の匂い。


 周りに隔てるモノは一切無く、一面が黄色に染まっていた。

 その黄色の世界の真ん中に威風堂々と一本だけ大きな木が聳えていた。


 それを見て、呟く。

「………一本桜」


 樹齢200年を超える桜の木。

 今は六月の下旬。今年の開花は早く、殆どが緑色になっていた。


 だが、それでも異様な圧迫感と緊張感が襲った。

 見とれている。この表現が一番合っているだろう。


 黄色の中に、あまりにも堂々と立っているその姿に、思わず息を吐くのを忘れる。


「凄いね」

 隣に立つ星野宮が呟く。それと同時に、握る手の力が強まる。

「さっきね、何となく、デジャヴな感じだった」


「デジャヴ?」


「うん。何処かで……もしくは昔言ったのか解らないけど、頭の中に浮かんだ言葉を思わず口にした。無意識の内に、何かを………思い出そうとしていた。忘れてしまいそうだから、忘れないように口に出した………」

 自分でも良く解っていないのか、頻りに首を傾げながら説明する。

「ごめんね。訳の分からない事言って」

 苦笑しながら話を切った。


 空河は何も言わなかったが確実に、空河は思い出していた。

 覚えているのが不思議な程、鮮明に。


 あの時は、目的地は………何処だったかな?

 空河は頭を掻いた。

「……で、此所が目的地?」

 考えるのを止め、尋ねる。


「うん………実はね、四季波ちゃんに聞いたんだ。一本桜の噂」


「告白とか、そんなのだろ?」


「うん。でね、どうしてそんな噂が流れるのか解った様な気がする」

 星野宮は後ろを振り返る。

「此所まで来た道のり、ハッキリ言って獣道だったじゃない? 何か出るかもしれない恐怖で、少し2人の距離が縮まる。そして、この一本桜と蒲公英の絨毯。達成感と爽快感! 2人で何かを成し遂げたって気持ちが、互いの気持ちを勘違いさせる。一種の媚薬だよ。シチュエーションに酔って、OKしちゃうからこんな噂が流れたんだよ」


「随分雰囲気をぶち壊す見事な見解だな」

 苦笑する。


 すると、星野宮が空河と向き合う。

「じゃぁ、今私が告白したら………」

 空河を見つめ、繋ぐ手に力が篭もる。

「………OKしてくれるの?」


 冗談なのだろうが、目の奥は潤んでいた。

 普通の思春期男子ならば、この目で落ちるだろう。

それでも、空河は苦笑で流した。

「確かに、噂は噂だな」


「………でしょ。だから、私が言ったことは間違いでもないんだよ」

 手をゆっくりと離し、空河に背を向ける。


 何か言葉を掛けるか?

 そう考えたが直ぐに消した。この様にしたのは自分なのだから。


 空河は心の中で嘲笑した。

 救われたい。それは空河に取っての最大の目的であり目標であった。


 もし、此所で冗談かもしれない星野宮の告白を受けていたら、救われていたのだろうか?

 そう考えてしまっていた。


 そんな自分に、空河は腹が立っていた。


 自分。自分。自分。

 自身が助かる、救われる事しか考えていない鬼畜だ。


 これっぽっちも、星野宮の事など考えていなかった。

 直ぐさま浮かんだのは、損得。


 実に現実的で、反吐が出る。


 自分の損得は何か?

 そう、飽く迄も自分基準なのだ。


 物事も、人間関係も、殺生だって損得勘定を踏まえてだ。

 どれが得で、誰が損で、誰を殺せば、誰を生かせば。


 もう一度言おう。反吐が出ると。


 何故救われたいかも解らない癖に思考回路は実に自分の性格を的確に把握している。


「………俺には、此所は過ぎた場所だ」

 思わず口にしてしまう。


 星野宮は空河を見ず、一本桜を見つめる。

「………今すぐに、変わる必要も無いと思う」


「………慰めか?」


「違う。………だって天士、此所が素敵な場所だって思うからそんな事言うんでしょ? なら、直ぐに変わらなくとも大丈夫だよ。………綺麗なモノを見て、手付かずのモノを見て、直ぐそれに飛び込もうとする人は、大切さを知らない人。逆に、唯々見つめて、自分の在り方を考える人は…………ちゃんと見ている人だから」

 この時の星野宮の表情は、正直に言って儚かった。


 壊れてしまう程に、何編にも変わる表情の1つなのに、もう一生見られないと思う表情。

 思わず空河は星野宮を見ていた。


 此所で、手を伸ばせば。

 此所で、唇を近づければ。

 此所で、何かを口にすれば。


 そんな事を考えるが、直ぐさま消える。

 今そんな事をしても得が無い事を知っているから。


 憫笑する。

 「あぁ、俺は本当に最悪だ」心の中で呟く。

 矢張りこんなシチュエーションでも損得で考えている自分に………嫌気が差した。


 それでも、今の自分は捨てられない。

 上辺だけのこの最悪な自分を。


 きっと、これが自分の仮面ペルソナなのだろう。

 心を中途半端に開き、その隙間から世界を見つめる。

 手を伸ばし助けを求める事も、大声を出して自分の居場所を伝える事も、何一つしない。

 その癖、心の中では助けを求めている。


 矛盾。

 自分がなんだか解らない。混濁する思考の中、空河は一本桜をもう一度目に焼き付ける為に見つめる。


 いつか、本当にいつか。扉が壊れる時が来るのなら。

 自分が救われるだけではなく、誰かを救うだけではなく、誰かと救われる日が来るのなら。

 こんな仮面を捨てられる時が来たのなら、………その時は、


「………また………此所に来よう」


「うん。………一緒に」


 これ以上は言葉を交わさなかった。

 デートと言うには些か淡泊過ぎて、それでも空河に取っては濃くて悲しい時間。

 でも、思わず笑みを零した。


 面倒臭いで腕を引っ張られ連れて来られた場所で、自分の醜さを教えられ、自分の先を教えてくれた。


 知っているか? ミナ………この一本桜のもう1つの噂を、俺はこっちの方は信憑性が無いと思っていたんだが、強ちそうでも無いらしい。


『運命の分岐点』


 この桜を見たら、運命が変わると。


 今、俺の運命は………変わったのか?


 今度は失笑。

 だが、幾分か心は晴れている。

「……………有り得ねぇ」

 そう思いながらも、絶対で切り捨てられない夢見がちな自分が居た。

 100%神とは思えない者を拝む人の様な、不確かな何かに縋ろうとしている自分。


 今度は戯笑。滑稽過ぎて、

「………笑えねぇ」


 それでも、一応笑っておこう。

 空河は、媚笑を浮かべた。100人のヤンキーが見れば、その100人全員が青筋を立てる様な笑みを。

 どうか運命が変わりますように、と。小馬鹿にしながらだが。








 そんな空河だが、今日は少し、ほんの少し―――一歩前に出た日だった。












心理描写と言うか、今現在のその人の気持ちを書くと、中々に言い回しが解りづらくなる。

原因としては「此所で全部語るには………」的な事を思ってしまい、核心の部分は隠しながら書いてしまうのが、今回。


今回、天士と言う人物について天士視点から書いています。

が、中々に伝わりにくい感じです。


簡単に言ってしまえば、自分が救われたい。

そう思って居る自分に腹が立っているんです。

相手の事は二の次で、まずは自分。と言う自己中心的な損得勘定しか出来ない自分に反吐が出るんです。


それよりも、ミナが少し大人っぽくなったのでは?

てか、丸くなりましたよね?

その変の描写は進むにつれて書きたいと思います。


まずは物語を進めないと人物紹介しづらい。

それと、天士はミナが自分の事を好いてくれている事は知っています。

ミナ言っちゃったしね。

でもその事を口には出しません。

損得で考えたくないから、胸の奥にしまっているんです。

答えを出さないといけないその時まで。


てか、私は多分凄まじく影響を受けるタイプだと思います。

好きな小説の言い回し、好きなアニメのシチュ。

気付いたら「あれ? 少し書き方変わってる」と言うのが多々。


もし、今後も描写が変われば「あぁ。試行錯誤してるな」とか「あぁ。またあのラノベの真似を」とほくそ笑んで下さい。


影響されやすいんです。

因みに、とあるとラグーンはかなりの影響を受けています。

それと成田良悟先生の作品全般に影響されてます。


他にも様々。

そんな作者ですが、まだまだこの話も続くのでよろしくお願いします。



それでは、それでは…………。





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