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One-eyed  作者: 龍門 
次へのプロローグ =Long prologue to the following=
40/60

ハイ・ウォール






 第二校舎校庭。

 『決闘』に乱入した5人。


 抑えられるタルト。


 その様子を見ていた周りの生徒達が静寂から蘇る。

「お、おい………生徒会長に五十嵐、それに元『バーディア』の星野宮だぞ?」

「珍しいな………あの3人が一緒なんて」


 などと小さな声で話している。

 そんな声を無視し、月柏はタルトの額に人差し指を指したまま命令する。

「………殺気を抑えろ」


 その命令に答えず、此方も命令する。

「いきなりだな。さっさと私から離れろ」


「殺気を抑えろと言っている」


「何故? ………………殺すぞ?」

 タルトは更に殺気を放出する。


 その殺気を浴び、月柏は顔を顰める。

「………貴様」

表情に怒りが浮き出す。


 その表情を見て、空河達は焦る。

 月柏は普段は温厚だ。だが、それは生徒会会長としての立場があるからだ。

 冷酷に人を切り捨てられる月柏だからこそ、日常にはその姿を見せない。


 だが、今生徒達が見ているこの場で月柏は怒りを露わにしていた。


「ダメだ。それはダメだ。抑えろ鈴葉!!」

 五十嵐が焦る。


 トップの中のトップを集めたトップ集団のトップ。

 その馬力を知っているからこそ、焦る。


「余り私を舐めるなよ? 今貴様の目の前には2つの道がある。どちらか一方は地獄への道だ。お前は………どちらへ行く?」

 殺気がどんどん濃くなっていく。

 その殺気は、周りの生徒達が気付く程だ。


「ダメだ………会長」

 空河も焦り出す。


 だが、止まらない。

「答えろ」


 濃すぎる殺気を直に浴びながら、タルトは笑みを浮かべた。

「飾りが」


 その一言は月柏の怒りの沸点を上げるのに十分だった。


「―――殺す」


「クソがッ!! 離れろ!!」

 五十嵐は叫ぶ。止められないと判断したからだ。


 その言葉を聞き、空河、麒麟音、五十嵐は後ろに跳ぶ。同時に、月柏の両手から炎が生まれた。


「燃え、消えろッ!!」

 その炎を容赦無く至近距離のタルトに向かって放出する。


ゴォォォォオオオオォォォォォォオオォオォォオオオオオオッッッ!!!!!


 それを見て周りの生徒達は同じ事を思った。

 死んだ、と。


 だが、月柏は直ぐに動く。

 跳び上がり両手に炎を生み出しそれを真下へ投げる。


 ドゴォォォォォンッッッ!!!!!ドゴォォォォォンッッッ!!!!!


 着弾。だが、


「Is tepid. Cannot do hotter? (生ぬるい。もっと熱く出来ないのか?)」

 炎からその場から動かず服すら燃えずタルトが上を見上げる。


「Die (死ね)」

 その瞬間、月柏に異変が起きる。

「ぐッ! ………がはッッ!!」

 首を押さえ、苦しむ。


 息が出来ないかの様に。


 息が出来ないこの状況で月柏は思考を巡らせていた。

 何故、自分は今苦しんでいるのか?


 直接的な攻撃はなかった。

 ならば、その様な攻撃ではない。


 では?


 ―――『領域テリトリー』。


 考えろ。考えろ。考えろ。

 月柏は先程の空河とタルトのやり取りを思い出す。


『………人差し指の指輪だと、何故確定出来た?』


『さぁ? 唯、人差し指から血が出ているから、かな?』


 タルトの指から血が出ていた。

 その血が能力に関係あるのは解る。では、どうやって今の状況を作り出している?


 血を対象にかける?


 いや、そうだとしてもかけただけで息が出来ない様にするのは不可能だろう。

 この呼吸困難は内部からじゃない。外部からだ。


 月柏は思い出す。

 草島と大熊田を。


 あの3人もタルトの「人を殺す」本物の殺気は感じていた筈。

 だが、止めなかった。


 いや、止める事が出来なかった。


 何故?


 動けなかった。

 動きを封じられた?


 完璧に相手や事象を操れるならば、呼吸困難なんて手を使わず、心臓を止めれば良い。頭を吹き飛ばせば良い。


 それは出来ない。

 では、どうやって草島と大熊田の動きを止めたのか?


 月柏は答えを導く。


 制限が付いているのだと。


 「動くな」ではなく、「早く動くな」や「遅く動け」など、全く動くなと言った絶対的な命令は出来ない。それに相手を操る事は出来ない様だ。

 操れるのならば「自分で自分の首を絞めろ」と言った命令が出来る筈。それは出来ない。

 ならば、今苦しいのは周りの空気が薄くなっている。いや、領域内がか。


 そこで一旦月柏は思考を止める。


「舐める………なッ!!!!!!」

 足下に風を集め、上に飛ぶ。


 まずは領域内からの脱出。

 上へ、上へ。


 高さ20メートル程。

 月柏は止まる。


 呼吸の確認。

「はぁ~………すぅ~……はぁ~………良し」

 下を見る。


 生徒達が上を見ているのが解る。

 そこで、再度月柏は思考を巡らせる。


 では、この能力と血がどう関係している?

 

 月柏は自身の記憶の中から、今まで見てきた能力を思い出す。

 似ている能力を探し出す。


 そして、

「………『未来の日記フューチャー・ダイアリー』」

 『未来の日記』。一週間以内ならば書いた事を現実に近い出来事として実現する事が出来る。

 その場合、シャーペンやボールペンで書くのではなく、自分だと証明出来る様に、血で書く。


「血………何処に書いている?」

 もし『未来の日記』同様ならば何かに書かなければならない。


 では、何処に?

 下を見る。


 領域内。

 周りの生徒達に苦しむ者はいなかった。


 ならば、

「確かめるか」

 月柏はもう一度先程自分が居た場所に瞬間移動テレポートする。


「……………くッ!」

 戻った瞬間、再度息がしづらくなる。


 その中で、下を見る。

 地面。

 書くのならば、そこ以外ない。


「…………………………『thin』…………」

 見つける。地面に書かれた、血で書かれた文字。


 それが解れば、月柏は動ける。

「………小賢しい!!!」

 右手に炎を生み出し、血文字めがけ投げる。


ドゴォォォォォンッッッ!!!!!


 着弾。それと同時に呼吸がし易くなる。


「チッ!」

 タルトは小さく舌打ちをする。


「………貴様の能力は随分小さいな」

 挑発。


「………Shut up!!! (黙れ!!!)」

 叫ぶ。だが、既にこの場の流れは変わっていた。


 能力が月柏に理解された時点で、此所は既に月柏の独壇場だ。


「私の立場………生徒会会長って言うのは象徴なんだ。全校生徒の投票、教師からの推薦。そして………強さ。私の立場は象徴。そんな私が………貴様如きに負けると思うか?」


 その刹那―――、


「貴様は挑む相手を間違えた」


 瞬時にタルトの後ろに移動する。

 それに気付いても、タルトは振り返る事は出来ない。


 月柏の舞台はまだ終わっていない。

「天狗になるのも大概にしろ。今から………貴様に壁を教えてやる」


ジジジジジジジッッ!!!ビリリッ!


 月柏の右腕が雷と化す。

 草島の『雷化イカヅチカ』。


 その雷と化した手をゆっくりとタルトの後頭部に近づける。

「………目を覚ました時に、もう一度地獄を見せてやる」


 触れる。


「ぐがぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」

 叫び、タルトは膝を地面に突いた。


 手を離し、月柏は周りを見て叫ぶ。

「速やかに教室に戻りなさい! これはお願いではありません。命令です!!」














 時間が経ち放課後。生徒会室。


 ソファーに座りながら空河は欠伸をした。

「ふぁ………一時は面倒な事になると思ったが、あっさりと終わったな」


「てか、会長俺の能力もコピーしてたんすか?」


「だって、使い勝手が良いから。スタンガンみたいで」


「人の能力を護身用みたいに言うなよ!!」

 立ち上がり叫ぶ草島。


「そんな事は良いとして。彼は起きたのかしら?」


「良くないわ!!」

 流されるのがお気に召さない草島。


「黙りなさいよ。アンタの能力を『雷化スタンガン』にするわよ?」

 睨む。


「い、嫌です」

 それだけ言って草島は静かにソファーに座り直す。


「それにしても、天下の生徒会長様に喧嘩売る奴が居るとはね」


「………お前、今まで何処に居た?」

 ニコニコと笑みを浮かべる鴨梨に空河が眉を細めながら尋ねる。


「え? 特別事務室から見てて、会長が『雷化スタンガン』使った辺りから購買行っておばちゃんと話していた」


「………まぁ、良いや」


「良くない! 俺の能力をスタンガンと言うな!!」

 叫ぶ立ち上がる草島。


「煩いわよ、光輝」

 睨む。


「は、はい」

 静かに座り直す。


「で、お前は仕事サボってそんな愉快な事していたのか?」

 青筋を浮かべながら木須が眼鏡を上げる。


「サボって何かないわよ。親睦会的な事をしていたらそこの光………馬鹿が暴れ出して止めたのよ。仕事をしてたのよ」


「おい! 何で言い直す! 何で馬鹿と言い直す!!」


「煩い」


「はい」


 木須は大きく溜息を吐き、月柏の目の前に大量の書類を置く。


ドスンッ!!


 重量感ありまくり。

「………これは?」


「報告書。『決闘』後に書くだろ? 本当は『決闘』を行った奴等が書くのだが、数名気絶していて書けないのでな。その分はお前が書け」

 眼鏡を上げ、お返しとばかりに笑みを浮かべる。


「えっ? それにしても厚いわよね? 何かと混ざってない?」


「あぁ。それは1ヶ月後にある『披露会』の書類だ。目を通しておけ」


 『披露会』と聞き、今まで空気だった星野宮が尋ねる。

「『披露会』って何ですか?」


「それは俺も知りたいな。そんな行事あったか?」

 空河も知らないらしく尋ねる。


「あぁ。お前等は今までRANKⅡに居たし、星野宮は来たばかりだったな。『披露会』とはRANKⅣに上がった生徒がRANKⅣの目の前で自分の能力を披露する場と言う事だ」

 木須が眼鏡を上げながら説明する。


「………それって俺達の事か?」

 空河の表情が固まる。


「そうだ。まぁ、『感覚系能力センス・アビリティ』などは難しいけどな。その場合は一発芸でも可だ」

 笑みを浮かべる。


「………それって、イジメでは?」

 鴨梨の顔が引き攣る。


 『披露会』とは別に行事ではなく、言ってしまえば歓迎会みたいなものだ。

 自己紹介を兼ねて能力披露。


 能力を見せたくないのなら、一発芸披露。


 おきまりの洗礼ってヤツだ。


「一ヶ月後だからな。それが終われば夏休みだ」


「………あっ! 夏休みで思い出したよ天使ちゃん!! この前言った『鳥兜とりかぶと島』の件考えてくれたか!?」

 鴨梨が空河に詰め寄る。


「んあぁ? ………何の話?」

 首を傾げる。


「何言っとんねんッ! 前話したやん! 『南国の島、鳥兜島とりかぶとじま!!~この島で………素敵な思い出作らないか?』だよ!!」

 フレーズを聞いて、思い出す。

「あぁ………行かないって言わなかったか?」


「なんでやねんッ! ちょっ、なんでやねんッ!!」

 何故か二度繰り返した関東人。


「えっ!? 天士行かないのか!?」

 草島が驚く。


「2人で行けよ」


「それは無いぜ!! 俺と元だけじゃナンパ成功しないだろうさ!!」

 叫ぶ草島。


「俺を利用しようとするな」


「えぇ~行こうよ! 行こうよ! 行こうよォォォォォ!!!!!!!!」

 喧しく騒ぐ草島。


「ええやろ? 夏の想い出作ろうや! 俺等の仲やろ? な!」

 何処から取り出したか、パンフレットを両手に持ちながら詰め寄る鴨梨。


「行かねぇーよ! 行く訳ないだろ!!」

 草島を蹴り、鴨梨を押し退けながら叫ぶ。


 すると、

「へぇ~南の島ね」

 何時の間にか鴨梨の手からパンフレットを取って読む月柏。


「へぇ~私有地なんですか」

 それを覗く星野宮。


『『…………チャンス?』』

 鴨梨と草島は同じ事を思った。


「そうやで! 綺麗な海! 綺麗な砂浜! 綺麗な空!!」

 鴨梨が叫ぶ。


「南国ならではの果物に食事! 現地の食べ物使ってバーベキュー! 夜はキャンプファイヤー!! しかも、見て!」

 叫び、パンフレットのページを捲り指を指す。

「何と高級コテージ!! 露天風呂付き!!」


 どうやら乗せて行くと言わせようとしているらしい。

 その様子を見ながら空河は溜息を吐く。


「行く訳ない―――」

「良いわね」

「ですね」


「は?」


 月柏と星野宮は食い入る様にパンフレットを見ている。


「海………良いわね」

 月柏が呟く。


「高級コテージ………」

 星野宮が呟く。


 それを見て、ヤバイと思った空河は木須に助けてもらおう事にした。

「き、木須先輩。言って下さいよむ―――」

「うむ。4泊可能だ!!」

 手帳を見ながら、親指を立てる木須。

「露天風呂だ!!」

 どうやら風呂に釣られたらしい。


「そうと決まれば決定ね!!」

 拳を掲げる月柏。


「楽しみです!」

 ニコニコしている星野宮。


「「………良し!」」

 肩を組み、親指を立てる鴨梨と草島。


「やったね! ミーはBarbecueが楽しみダス!!」

 両手を挙げて喜ぶタルト。


「「「「「…………………………何時の間に!!?」」」」」


「おぉ!! 見事にvoice揃ってるデスだネ!! ミーもその仲間に入りたいデスだヨ!!」

 羨ましそうに言うタルト。


「…………い、いや………えっ、えぇ~?」

 空河は「お前何時から友達だ?」と言おうと思ったのだが、何となく言えずに言葉に詰まった。












最初戦闘とかでキメてたのに、後半は何?

的な感じで。


これで鳥兜島行くことに決定!

水着だ!水着だァァァァァァァ!!!!!!!!


コテージで男女………膨らむぜ!!


………まぁ、もう少し先の話だがな!!

てか、何話まで行くのだろうか?


さとて、次回はタルトの説明。

それでは、それでは………。



追伸

萌えとは何ですか?

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