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One-eyed  作者: 龍門 
次へのプロローグ =Long prologue to the following=
39/60

オンルッカー・フー・コメント

いやぁ~………色々面倒。





 馬鹿と角刈りの戦闘を観戦していた空河達。


「あの角刈りの能力は何だ?」

 空河が尋ねる。


「確か、『大地掌握アース・コントロール』だった筈。普通に考えれば雷では到底勝てないわ」

 月柏が空河の問いに答える。


「実際に勝てたのは能力的に光輝が上回っていたのか、唯々角刈りの能力が下だったかの事か」


「まぁ、RANKⅣって目指すモノが中々無いですからね♪ 此所が天辺だと思っているのなら、勘違い。RANKなんて学園内での優劣を決める物差しでしかないのに」


「それでもまぁ、グラスの方が戦い方を知っていたって事だな」


「使う者が使えば能力のRANKなんてどうにでもなるだろ。能力戦に措いて感情の善し悪しなどない。と言うけど、頭の使い方によっては、上にも下にもなれる。随分面倒な事極まりないじゃねぇか」

 眉を細め、空河は草島から目線を外して周りの野次馬を見る。


 空河の言った「能力戦に措いて感情の善し悪しなどはない」の意味は、感情で補える程能力戦は甘くないと言う事だ。

 怒りで補う事も出来なければ恨みで補う事も出来ない。


 自身の能力は感情で上がる程簡単なモノではない。

 経験と機転・相性、その能力自体の力がモノを言う。


 草島の能力と角刈りの能力。普通に考えれば角刈りの方が圧倒的に有利だ。

 だがその能力の弱点を補ったのは感情ではなく草島の経験だ。

 そして角刈りの経験不足。それに油断だ。


 角刈りと同じ能力を使う百戦錬磨の奴と戦えば、草島は敗れるだろう。


 能力戦に措いて「同じ」は無いのだ。


 能力の絶対的な差は経験と機転で埋める。それは微々たるモノだ。

 それでも勝てない場合は自分に才能がないと諦めるしかない。


 草島は決して能力に優れている訳ではない。いや、「凡人」だ。

 『雷化イカズチカ』も超越する程の優れた能力では無い。

 肉弾戦では最強に近いが、それでも持続時間があるし、能力制限がある。

 一対一の個人戦であれば、問題は無いだろうが複数を相手にする時、しかもその相手が自分と同じかそれ以上だった場合、草島は負ける。


 それを補う為に草島は一部分だけを雷に変えると言う方法を取った。

 同時に自身の能力向上に励んだ。


 それを成功させる草島には十分な才能があったと言えよう。

 それでも能力値の差は戦闘に措いて絶大な差だった。


「あの角刈りが本気で励めば、光輝じゃ勝てないな」


 その言葉を否定する者など居ない。

 それが「凡人」の宿命でもある。


「あの能力で『異常系能力アブノーマル・アビリティ』に勝ったり出来るんだ。十分に「才能」はある。だが、それでも「才能」有る「凡人」だ」

 月柏の言葉に容赦は無い。その無意味さを知っているからだ。


「いや、アレはアレで十分「才能」ある………『異常者アベレイション』だよ♪」

 麒麟音が微笑む。


「それ、何処かで聞いた事あるね。「凡人は天才にはなれない。だが、異常者と言う新たな枠組みを作ることは出来る」誰の言葉だっけ?」


「…………『バーディア』創立者の言葉だ」

 鴨梨の問いに月柏が面白くなさそうに答えた。


「『天才を殺す男ジーニアス・キラー』の言葉か」

 五十嵐がその者の異名を口にし、眉を細める。

「この男も「才能」ある「凡人」止まりだった。だが、この男は生きている内に自分より格上と言われた能力者に勝っている。しかも複数。才能有る能力者は脅威に感じ、才能無き能力者は目標にした男。ストイックに強さを求めた男。それが『異常者』。『天才ジーニアス』の枠組みを壊し、能力値の差を有耶無耶にした男」


 「才能」ある「天才」は矢張り『天才』と呼ばれる。

 だが、「才能」ある「凡人」は『天才』とは呼ばれない。


 所詮「凡人」は「凡人」なのだ。

 だが、『バーディア』創立者はそれを壊した。


 「天才」は『天才』を名乗れば良い。

 ならば「凡人」は『異常者』を名乗ろう。と。


 これは、『天才』に勝つには「常識を逸しないとならない」と言う事。

 努力ではない。そんなモノは常識の範囲内。


 『異常者』とは、力を求め溺れた者を差す言葉。


「………その言葉の反論が出来ないのが、少し歯痒いな」

 空河が苦笑する。


 誰も麒麟音が草島の事を『異常者』と言った事に反論出来ないのだ。

 それが事実であるから。


「『天才』だの『異常者』だのは所詮名称だから。その者を差す言葉でもなければ、その者の強さを現す者でもない。………でも、言われていい気はしないけどね♪」


 格上に勝つ方法は、経験・機転・相性。そして人を捨てる事。

 そう簡単に出来ない為、「格上に勝つ事は不可能」とまで言われている。


「理不尽なのが、この世界の秩序ってね。胸くそ悪くてたまらない」

 鴨梨は吐き捨てる。


 今までの事を踏まえても、「才能」に「努力」は勝てず、「凡人」は『天才』になれない。

 勝つ為には『異常者』になるしかない。


 平等などない。不公平で理不尽。それがこの能力であり世界である。


「おっ、3人が近づいているな」

 五十嵐が目を凝らしながら見る。


「彼等にプライドはないのか? 幾らなんでも3対1は酷い。まぁ、光輝は受けるだろうな」

 月柏は苦笑する。


「……ん? 熊先輩だ」

 野次馬を掻き分けて草島に近寄る大熊田を見つける空河。


「吉が出るなら勝てるだろうな。アイツの能力に相性の悪さ無いし」

 五十嵐は笑みを浮かべる。


 大熊田の能力は草島の様に「雷」など相性がハッキリとするモノではない。

 その為、幾分かは草島より戦いに措いて有利。


「………あの金髪君誰?」

 麒麟音は野次馬の中から飛び出して来た金髪男を指さしながら尋ねる。


「さぁ。見た事ない顔ね」

 月柏が首を傾げる。


 その時、特別事務室の扉が開く。

「会長ぉ仕事して下さいよ。私と副会長だけでは大変なんですよ?」

 入って来たのは若干涙目の星野宮。


「此所に来たって事は終わったと言う事でしょ? なら、私が居なくとも問題無いと言う事で」

 振り向きながら微笑む。


「………もう良いですよ。………えっ~と、貴女の名前は」

 麒麟音を見ながら名前を思い出そうとする星野宮。


「私はね。名字は麒麟音。下の名前は紗々。紗々と呼んでね♪」

 自己紹介しながら手を差し出す。


「あっ、私は星野宮ミナって言います。よろしくお願いします」

 麒麟音の手を握りながら、同様に自己紹介する。


「おいミナ。あの金髪誰か知ってるか?」

 空河が星野宮に尋ねる。


 この時月柏は気付く。空河が星野宮の事を下の名前で呼んだ事に。

「………天士、何時から下の名前で呼んでいるの?」


「んあぁ? …………確か、この前見舞いに行った時からか?」

 星野宮に尋ねる。


「えぇと、確か。それまでは「星野宮」とか。「ミナちゃん」って昔呼ばれていんですけど、今そう呼ばれるのは少し恥ずかしいからミナって呼び捨てで呼んでくれって頼んだんです」


 頬赤らめる星野宮を見て麒麟音は勘づく。

“ま、まさか!? ミナも!?”

 そう思いながら、月柏を見る麒麟音。


 月柏は冷静そうにその理由を聞いているが、拳を異常な程強く握っている。

 それを見て更に気付く。

“鈴葉も!?”

 麒麟音は今、自分の敵を理解した。


 そして、麒麟音が静かに燃やす闘志に気付く月柏と星野宮。


“紗々も!?”


 そして、


“………………負けない!!!”

 などと思っている女性3人。


 それに気付かない、

「なぁ、ミナも知らないか? 見た事無いんだけど」

 男と。


“面白い事になりそうだ”

 その闘志に気付き、笑みを浮かべる五十嵐と鴨梨。


「おいミナ? 聞いているか?」

 ある意味空気読めない男が尋ねる。


「えっ? あっ、えぇ~と誰だっけ?」


「あれ。あの金髪。何か今光輝と話して笑ってるけど」


「ん~………解らないなぁ。………でも、何処かで見たことあるかも。………でもやっぱり解らない」

 首を傾げ、唸りながら考えたが矢張り知らないらしい。


「そっかぁ。………ん? あの金髪がやるのか?」

 金髪が前に出た事に驚く空河。


「へ? あれ? てっきりグラスが出ると思ったんだけど。しかも1人で?」

 それには鴨梨も驚く。


 すると、男子生徒の1人が体に炎を纏い金髪に突進する。

「炎か。だが、体に纏うのは少し安易だろ。温度上げられないからな」

 冷静に分析する五十嵐。

「「「「「「!!?」」」」」」

 その時、この場に居た6人は気付いた。


「何だ………? あの金髪」

 空河が金髪を凝視する。


 金髪は炎を纏う男子生徒に向かって拳を突きだした。

 遠くから見ても届く距離じゃないのは解る。


 だが、


「凍った♪」

 麒麟音がその状況を見て微笑む。


「あの金髪君は氷系の能力者なのか?」

 鴨梨が誰も答えられない事を解っているが問う様に言う。


 だが、鴨梨のその考えは間違い。

 それは直ぐに解る事。


「!? また変わった・・・・

 月柏が呟く。


 それを聞いて五十嵐が月柏を見る。

「視えたのか?」


 月柏は頷く。


「………何の能力で、何が見えているの?」

 麒麟音が尋ねる。


 その問いには月柏の代わりに五十嵐が答える。

「『理解する雰囲気アンダスタンディング・アトゥモスフィア』。変装している奴とかを見分ける程度の能力だ。その者特有の雰囲気を視るんだよ。唯一無二だからな。結構便利な能力ではあるかもしれない。で、どうだ?」


「………今、女よ? どう言う事? さっきまでは男だったのに」

 月柏は目頭を押さえる。

「………限界。これ以上は」


「まぁ、それだけでも十分でしょ? 男なのに雰囲気は女だった。随分奇天烈だけどね」


「………多重人格者とか、違いますかね?」

 星野宮が尋ねる。


「いや、その様な感じはしなかった。唯、人格は変わっている。でも、多重人格って感じではない。まるで、何処かから引っ張って来ている様な感じだった」


「引っ張る? どう言う意味だ?」

 五十嵐が眉を細める。


「ん~………多分だけど、何かに人格と言うか精神と言うか魂を閉じ込めているんだと思う。そして、その何かを有して人格をチェンジしている」

 麒麟音の見解に鴨梨は聞き返す。

「魂なんかをそんな風に出来る能力あるの?」


 その問いには、空河が答える。

「………知っている限りだと、手品師マジシャンか人形愛好家だな」


「うん。でも、その2人が生きている人やましてや物に魂を入れるとは考えにくい」

 麒麟音は顎に手をやり、彼女らしくない真面目な表情で考え込む。


「兎に角、あの金髪は似非多重人格者って事で今の所は良いだろう」

 考えても答えが見つからない為、五十嵐が適当に思考を断ち切る。


「そうね。………!!?」


「「「「「!!??」」」」」

 6人が気付く。


 金髪から放たれている「人を殺す」本物の殺気に。


「あれはヤバい」

 鴨梨が言うのと同時に、5人は窓から飛び出す。


 落下中月柏が叫ぶ。

「一気に運ぶわよ!!!」


 その瞬間強い突風が吹く。

 運ぶ、と言うよりは飛ばされる。


「わぁおっ♪」

 楽しむ麒麟音。


「「………酔う」」

 などと顔を青くする空河と五十嵐。


「これ下からスカートの中丸見えでは?」

 結構空気読まない星野宮。


 そして、

「ミナ!!」

 月柏が叫ぶ。


「は、はい!!」

 頷いた瞬間、星野宮の周りの風が消え、落下する。


「『夜想曲ノクターン』」


 地面に降り立ち、

「『生徒会』よ。『決闘』中悪いのだけれど、放っておいたら死人が出来る勢いなので、介入させてもらうわ!!」

 腰に手を当てながら叫ぶ。


 金髪は星野宮を見る。

 その瞬間、


「やり過ぎだ」

 五十嵐に羽交い締めにされ、


「『決闘』は殺さず、だよ♪」

 麒麟音が右腕手首を掴みながら微笑み、


「下手に動けば即………解るわよね?」

 月柏がタルトの額に人差し指を当て、


「………まぁ、一応、だ」

 そう言いながら、空河は金髪の右手人差し指を嵌められた指を掴む。

 そして、小声で金髪に呟く。

「近くで見て気付いた。これか。紗々の言っていた………何かって」


「………人差し指の指輪だと、何故確定出来た?」

 金髪は眉を細め尋ねる。


 その問いに、笑みを浮かべる。

「さぁ? 唯、人差し指から血が出ているから、かな?」



















 空河達が『決闘』に乱入した時、第二校舎の屋上から1人の男が見ていた。

「空河天士。まさか理事長と統率局長が彼等のRANKを上げるとは………」


 その人物は青が混じった黒髪を靡かせている。

 伏見右京。『執行部』の部長。


「でも、これで接触し易くなった。後は『殺人集団ファミリー』がどの様に動くか、か」

 微笑む。それは微かに。だが確かに。不気味で、不吉な笑み。


「眠れる老人にシスター。2人の要注意人物が動き出した。それに、あの金髪の彼………フフッ、面白い事になってきた」


 そう言いながら、屋上を後にした。




















 第二校舎教室。

 その教室から校庭を見る生徒が3人居た。


 1人は赤髪に羽根の髪留めを付ける、クレファー=Nネルテミト=レルディア。

「…………ガ○ガリ君………ど忘れ」

 銃を持たない彼女は口数が少ない。


 1人はカチューシャを付けている男子生徒。

「アレが噂の新RANKⅣかい? 面白いな。確実にRANKⅣだ」

 笑みを浮かべる。


 1人は眠たそうな眼を擦る、啜れた白髪ボブカットの女生徒。

「………名前、天使って言うんだって」


「ほぉエンゼルってか?」


「うん。ミカエルかな? ガブリエルかな? それともラファエルかな?」

 眠そうな眼を輝かせるボブカットの女生徒。


「………違う」


「そうだぜ? 羽根も無いし輪っかもないからな」


「………………きっと取れたんだよ」

 断固として天使にしたいらしい。



















 野次馬の中、1人の男子生徒が見ていた。

 そして、呟く。


「…………あれが紗々の言っていた……空河天士か。それに旋士も言っていたな」

 笑みを浮かべる。


「面白い奴だ。アイツとなら………友達になれそうだ」


 そう言い残し、背を向け歩き出した。



 様々な者達が、動き出す。

 善し悪しは関係無しに、動き出す。


 それが、どの様な結果になるのか?













『異常者』とか能力の優劣とかそこら辺の説明が面倒。

色々訳解らない感じに。深夜やに考えちゃダメな事だ。うん。


てか、あまり書く事ないので、

それでは、それでは……………。

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