サーフィス・オブ・ザ・バック
今回は唯、『隻眼の番犬』を出したかっただけだ!!
まぁ、次回からは学園ライフをエンジョイするぜ!!
「はい。えぇ~今回は新たな生徒が増えました。しかも10人は過去最高ですね」
教壇に立ちながら白衣を着た女性教師が言葉を述べていく。
「まぁ、私は無能力者なので、能力関係で皆さんに何かを教える事は出来ないと思いますが、それ以外ならば教えられると思います。よろしくお願いします。因みに名前は句路摘季です」
句路が少しボサボサな髪を掻きながら、簡易な挨拶をし教室を見渡す。
「…………………………早速ですか?」
苦笑いしながら尋ねる。
それは、
「カエリタイ」
「オレモ」
「ワタシモ」
上から空河、鴨梨、陣内だ。
今日からRANKⅣに見事RANKが上がってしまった者達。
「ま、まだ始まったばかりですよ?」
「……………カエリタイ」
「オレモ」
「ワタシモ」
そんなこんなで、現在RANKⅣの教室で挨拶中。
まぁ、挨拶と言っても3人は放心状態だ。
RANK上げでは『ボードゲーム研究会』の面々は実力を出していなかった。と言うか空河・越智は調査を受けなかった。
なのに現在RANKⅣの教室で椅子に座りながら教師の話を聞いている。
空河は考えていた。
『………やられた。あの糞爺(理事長)にやられた』
鴨梨は考えていた。
『荻河原さん………何が去年と同じだよ!!』
陣内は考えていた。
『最悪あの女と一緒のクラスじゃなくて良かった』
3人は互いに険しい顔をしながら、舌打ち・貧乏揺すりを連発していた。
新手の教師イジメか?と思う程に句路のライフは0に近づいている。
そんな中1人の男子生徒が声を出す。てか、立ち上がる。
「君達! 少し落ち着く事は出来ないのか!? と言うか、何で君達みたいなのが此所に居る!?」
七三の名も無き彼が叫ぶ。
だが、今の3人に取ってそれは注意でも挑発でもない。唯の自殺願望だ。
「「「んあぁ?」」」
「ヒィッッ!!!」
小さく悲鳴を上げ、七三の名も無き彼は静かに椅子に座った。
これによって誰も3人に突っかからないと思ったのだが、第2名も無き彼が動き出す。
「んあぁ? 言って解らねぇなら実力行使だろうよぉ?」
金髪でガムを「くちゃ、くちゃ」と噛んでいるチャラ男が席を立ちながら空河に近づく。
空河の耳元で囁く。
「テメェ月柏と仲良いらしいじゃねぇか? ………調子乗んなよ?」
この脅しと言うか、何と言うか、でもまぁ予想はしていた事ではある。
RANKⅡが一気にⅣへ上がる事は今までに前例が無い。
その為、疑われる。
それに相次ぎ様々な事を混ぜ込んで、現在金髪チャラ男は空河に絡んでいる。
「あ、あのぉ………授業中なんですけどぉ?」
句路が恐る恐る声を出す。
だが、
「んあぁ? 黙れよ、無能力者。テメェーみたいな無能は徹夜しながら机に齧り付いてろ」
ケラケラと笑いながら馬鹿にする。
その時、何かが切れた音が響いた。しかも4つ。
「おい………黙れよ」
空河が睨む。
「んあぁ? テメェ誰に向かって口を―――」
「テメェこそ口閉じろ。悪臭が漏れて被害を受けている」
鴨梨がチャラ男の肩を掴む。
「なっ!? テメェ等―――」
「二度はないわよ? チャラ男A。その口を閉じ、迅速に死ね」
陣内が椅子に座りながら睨む。
「なっ、なっ、テメェ等………ふざけるな!! ぶっ殺すぞッ!!!」
そう言ってチャラ男が何かをしようとした瞬間、
「アンタが死にな♪」
ガシッ! チャラ男の後頭部を誰かが手で鷲掴みにする。
「フフッ………粛・正♪」
「なっ!? ―――」
チャラ男が後ろを振り返ろうとした瞬間、
ドオォォォォンッッッッ!!!!
「ぐぼべッッッ!!!」
机に顔面を叩き付けられる。
無論、チャラ男は空河の側に居た。必然的に叩き付けられた机は空河の机だ。
「良しッ!」
「何が良しだッ!! 何………が………」
空河はそこで初めてチャラ男を顔面から机に叩き付けた人物を見る。
そこには手を「パン、パンッ!」と叩きながら満面の笑みのオレンジ色に近い髪の色をした可愛らしい女生徒が立っていた。
だが、空河の目が丸くなっているのはそこではない。
彼女の髪がオレンジだとか、可愛いとか、そんな事ではない。
「ん? 何かな? 空河君♪」
色々と含む様な言い方。
そう、空河が目を丸くしているのは目の前に立って語尾に「♪」を付けるこの女生徒を知っているからだ。
名を、
「あ、私はねぇ、名字は麒麟音!」
ファミリーネームを麒麟音、
「んでね、下の名前は紗々!」
ファーストネームを紗々。
「繋げて麒麟音紗々! 珍しい名前でしょ♪」
麒麟音紗々――――又の名を、
“久しぶりだね♪ φ”
“………何で此所に居る? σ!?”
又の名を―――『隻眼の番犬』序列σ―――………。
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国。通称イギリス。首都、ロンドン。
大きなビルが立ち並ぶ中に、その光景には不釣り合いな一軒の見窄らしい家が建っている。それは余りにも不自然。だが、通行人は誰も気にせず、見もせずに前を通り過ぎる。
見窄らしい建物の名は、『学校』。
―――人の殺し方と、生き延びる方法を教える場所だ。
そんな外見通りの危なさを孕む建物の中に、5人の男女と2人の男女が机を挟んでソファーに座っていた。
5人の男女は、下衆を黙らす『隻眼の番犬』。
赤外線ゴーグルを付ける青年、序列をτ19番。名をクレン=ミロルス。
「相変わらずの薄暗さですね」
白いマフラーを巻いた女性、序列をθ8番。名をアフレミスト=ディード。
「………居心地悪い」
赤髪コーンロウの女性、序列をλ11番。名をバレキー=ノルワルス。
「そうねぇ~此所は何時来ても居心地悪いわねぇ~」
ツーブロックの男、序列をο15番。名を煌狼
「同意だ。同意。素早く帰りたい気分だ」
そして右目を眼帯で隠す男、
「話を聞いたら直ぐさま日本へ発つ。それまで我慢しろ」
序列α1番。『隻眼の番犬』の最強にして冷酷無慈悲のトップ。
名を、シャルド=F=クリフッド
そんな100人中99人が畏怖する5人の目の前に足を組んで座る男は笑みを浮かべたまま毒を吐く。
「居心地悪いとか言ってくれますね。私的にはテメェ等みたいな糞が家に居る方が最低に居心地悪いってもんですよ?」
男は畏怖もしなければその言葉に敬意の「け」の字も含まない。
「黙れ。貴様は俺の問いに答えれば良い」
シャルドは眉間に皺を寄せ、淡々と命令する。
「クククッ、相変わらずムカツク面に声ですね。いや、全てが私を苛つかせる。矢張りあの時殺せば良かったですかね?」
男は笑みを浮かべたまま言う。
「貴様などに殺されるか。言いから答えろ。手品師」
手品師と呼ばれた男は笑みを浮かべたまま、隣に座る少女を見る。
すると、先程まで黙っていた少女が口を開く。
「ハハッ! テメェー等に教える事なんて微塵もねぇーよ。それ以前に、オレ等は情報屋じゃねぇーんだ。情報関係は絵描きにでも頼みな!」
少女は外見の可愛さとは裏腹に、口の悪さを披露する。
「人形は黙っていろ」
人形と呼んだ少女を睨む。
「ハハッ! 殺意が篭もってるねぇー。でもよ、オレには効かないぜ? 何せオレはテメェーが何考えてるか手に取る様に解るんだからなッ!!!」
人形は続ける。
「怒り、怒り、哀れみに怒り。随分解りやすい心模様なこって!! 全く持っておもしろみに欠けてるぞ!? 人間に一番多いのは憎悪や憤怒だ! それはな、人間は歓喜のしかたを知らねぇーからだよ! テメェー等でテメェー等の幸福踏みつけて消してやがる糞野郎共だからな!! ハハッハハ!!!」
人形は笑いながら叫ぶ。
その笑い声を聞きながら、シャルドは更に眉間の皺を深くする。
「心を持たない人形風情が、人の感情を解った風に語るな。貴様は黙って展示されていろ」
「今少しテメェーの怒りが増したな!? 面白いなテメェーは!!」
「黙れ」
そうシャルドが言った瞬間、人形がいきなり黙る。
「………糞が。その眼だ。その眼が嫌いなんだ。殺意しか篭もっていない、感情の読みようがない、胸くそ悪い眼。「殺される」ではなく「死んだ」と思わせるその殺意。………面白くねぇー。全く持って面白くねぇー。だからテメェーは嫌いなんだ。感情を読んでも、ビクともしねぇーし、顔色一つ変えねぇー。人間は自分の感情を読まれたら、動揺するもんだろ? これだから嫌なんだ」
吐き捨てる様に、呟く様に本当に恨めしくシャルドを睨む人形。
「心を求めて人の感情を読み始めた貴様は、一生心などを手に入れる事は出来ない。感情は所詮感情だ。感情を心と直結するのは愚かだ。………心など、誰も何か知らないのだからな」
シャルドは吐き捨てる。
「チッ………最悪だ。最悪な気分だ」
「主の元にでも戻れ。そうすれば分解でもしてくれるだろう」
「テメェーを殺したら戻る事にするぜ」
ニヤリと笑う。
「言っただろ? 人形風情が、とな。貴様が俺に勝てる事など無い。言い切ってやるよ」
そう言いながら頬を吊り上げる。
人形とシャルドのやり取りが終わったの見計らい、手品師が手を叩きながら口を開く。
「いやぁやっぱり面白いやり取りだよ。ホント。まぁ、面白いモノ見られたから情報は提供するよ。だが、今度からは絵描きに頼む事だ。家は殺し屋育成学校だからね?」
「下らない。殺し屋を育ててどうする? 軍隊でも作るか?」
「それも一興」
「まぁ、貴様が何をしようが関係無い。前に立つなら殺して、後ろに立つなら殺して、どっちにしろ、変わらない未来が貴様を待っているだけだ」
「まぁ、唯では殺されるつもりは毛頭ないけど。で、何の情報だっけ?」
手品師が何処からか棒付きの飴を取り出す。
「狂獄道の居場所だ」
「壹の『亡霊』? 何だ、まだ生きているのか。相変わらずしぶといな」
手品師は棒付き飴を舐めながら少し驚く。
「その言い方だと、居場所は知らないらしいな。それならもうお前には用は無い」
立ち上がりながらそう吐き捨てる。周りの者もやっとこの空間から出れると背筋を伸ばしたり溜息を吐いたりと、似たり寄ったりな行動を取る。
「まぁ、壹の『亡霊』の居場所は知らないけど、陸の『亡霊』の居場所は分かるよ?」
「………本当か?」
「最新情報だよ。………えぇと、何処だっけ?」
首を傾げながら隣に座り『人形』を見る。
「……………………島国日本。『永遠の未完』を消しに行っている筈だ。陸の『亡霊』はアレにご執心だからな。10年前も、5年前も、な」
「………そうか。解った」
そう言い残し、シャルド達は歩き出す。
その背中を見ながら、人形が叫ぶ。
「気を付けろ。壱の『亡霊』が裏の表に戻って来たのなら、必然的に『殺人集団』の糞餓鬼共も動き出す。アレは一筋縄ではいかねぇーぞ!」
「あぁ」
それだけ言い残し、忽然と5人は部屋の暗闇に姿を消す。
残った手品師と人形。
すると、手品師が片目を開きながら人形を見て尋ねる。
「優しいお言葉だね」
その茶化した様な言葉に、人形はソファーに胡座をかきながら頬杖をついて怒る訳でも無視するでもなく、暗闇を見つめながらぼそっと答えた。
「………何となくだ」
いやぁ~色々と更なる新キャラ。
紗々はヒロインの1人です!!
ハーレムだよ!大好きなハーレムだよ!!
作者の中でのヒロインはミナ・鈴葉・紗々ですよ。
えっ? 亞美はどうしたと?
亞美はねぇ~……………どうだろうね。あんまり出番無いし。
まぁ、今回は紗々よりも『隻眼』の面々を出せた事に満足!!
かなりの頻度でキャラが増えていく。
ネタに困ったら取りあえず新キャラは止めた方が良いかもですね。
次回からは学園ライフです。
やっと戻って来ました。
まぁ、天士達がランクⅣでどうなるか!?
そして紗々は何故此所に!?的な事を書いていきます。
それでは、それでは…………。