轍鮒之急~それは序章に過ぎず、後一歩で全てを巻き込む~
伏線だらけになってきた。
まぁ、次回からは普通の日常っス!楽しみっス!!
まぁ、あれだよな。伏線だらけは回収に困りからな。程々だよな。
てか、何だかんだで30話。長かった?いやいや、全然話進んでねぇーよ!!
そんなこんなの30話。まぁ、整理ですよ。そして新たな!?
空河と星野宮の戦闘が何とも言えない感じで終わりを迎えた。
その後、月柏と陣内と明堂がもの凄い険相で、弦で共に縛られている空河と星野宮の所へ向かい弦を切っていた。
もの凄い勢いで。「あれ? 弦ってこんな簡単に切れるの?」的な感じで。
空河から星野宮を引き離し、月柏が空河に迫った。
「何でそうなる!? 何故にそうなる!?」
若干以上にキャラが壊れている月柏。
「納得いかない! 全然納得いかないッ!!」
空河の胸倉を掴み叫ぶ陣内。
「………弦で縛れば?」
危ない方向に思考が行っている明堂。
「いや………何言ってる?」
意味が解らないと眉を細める空河。
それを聞いて月柏と陣内がもの凄い勢いで振り返り、星野宮を指さす。
「「この女と何故!!?」」
そんなこんなでカオス状態。
その後も月柏と陣内が魔女裁判にでもかけるか?的な勢いで迫った。
だが、尋問途中で空河が倒れた為に凄まじい速さで病棟校舎に運んだ。
空河が倒れたのは『|死の行列行進(デス。パレード)』が原因。
肉体面でも精神面でも負担をかけるあの能力は空河の体力を削っていた。
直ぐに倒れなかったのは『対策装置』が作用していたからだろう。
マッドサイエンティストが何か仕掛けていたにしろ、ちゃんと作用していたらしい。
だが、『対策装置』を外し、しかもその後“力”を使ったのが更に追い打ちをかけたらしい。
まだ学園に残っていた『医療術式』の王が治療した為目覚めるのに差程時間は要らないらしい。
去年は目覚めたのは一ヶ月後だった。金の亡者で胡散臭くとも『医療術式』の頭だ。
因みに、王を見て明堂が酷く落胆していた。彼女も『治療系能力』の為、『医療術式』に憧れていたのだ。
王はその後理事長に洒落にならない程の額を請求したとかしなかったとか。
此所までが空河のその後だ。
『生徒会』
騒動から1日経った今日。
月柏は疲れで生徒会室の机に突っ伏していた。
「………無理よ」
彼女らしくない弱音を吐きながら。
「現在までで、空河を除く『ボードゲーム研究会』(非公認)を襲おうとしたのが34名。その内精神崩壊を起こしたのが14人。負傷者は20人。………こう数字にすると多いな。それに、流石だ」
木須が眼鏡を上げ、手に持つ書類を見ながら驚嘆する。
「感心してるんじゃないわよ………今回の騒動で私がその内の何人か再起不能にしちゃったから『執行部』に回る筈の仕事が『生徒会』に回ってるのよ………自業自得だけど「早急に調べ提出」って、王さんに金巻き上げられた事を私に当たってるわよね。理事長」
突っ伏したまま文句を言う。
完全な自業自得なのだが、彼女は別に疚しい事はしていないので強気でいれば良いのだが、調査以外での能力使用が利いている。
『執行部』は執行に当たって能力の使用は許可されているが、外部との敵だけにしか『生徒会』は能力の使用は許可されていない。
その為、天下の生徒会会長様でも他の生徒同様に処罰される。
今回の処罰は『一週間の謹慎』。
だが、生徒会会長である月柏には面目や体裁がある。他の生徒会役員もだ。
その為月柏・木須、そして星野宮には『無条件ボランティア』が義務づけられた。因みに期限は無期限。
他の『ボードゲーム研究会』と『噂部』の五十嵐、四季波は普通の謹慎だ。
問題は左右なのだ。
教師である彼女が、生徒が能力を行使しているのに止めなかった。との事で彼女は『眠れる老人の所で一週間過ごす』と言う一般性が聞けば「は?」なのだが、知っている人が聞けば「何て残酷な!」的な処罰が下った。
処罰を下す前に皆は「左右は絶対逆ギレする」と思ったのだが、すんなりとその罰を受けた。
理由としては空河への罪悪感と五十嵐からの叱咤では?と、言う噂。飽く迄も噂。
とまぁ、他のモノ達が寮で謹慎中の間月柏と木須は今回の騒動を報告書に纏めていた。
因みに星野宮は怪我の為治療中だ。
「今回の騒動ってさ、結局はどうなのかしら? 全部が全部中途半端な感じだったわよね」
手元の書類を見ながら月柏が尋ねる。
「計画の練りが雑過ぎたんだ。まず、『ボードゲーム研究会』の面々に喧嘩を売る自体で負けは見えている。それに宗次は『狂者』だぞ? それを見誤ったのが最大の誤算だろうな。まぁ、RANKⅡとⅢだからと言って油断していたって言う事だ」
木須はつまらなそうに理由を述べる。
「ふぅん」
此方もつまらなそうに書類を見ている。
知っての通り、この騒動の原因は「空河と月柏の仲が良い」何て噂が原因だったのだ。
その噂に憤怒した月柏のファンクラブ。
それに便乗した『ボードゲーム研究会』の面々に恨みや妬みがあった連中。
この連中達が起こした騒動は、見事失敗に終わった。
現在、騒動を起こした連中は殆どが怪我を負っている為、病棟校舎に幽閉されている。
皆が皆「今回の騒動に俺は関係無いッ!」と、見え透いた嘘を吐いている。
どの様な処分が下るか解っているからだろう。
「………はぁ~今回は面倒だったわ」
そんな疲れ果てている月柏に、木須は一枚の紙を差し出す。
「ん?」
疲れ果てた顔でその紙を受け取り、目を通す。
「………無能力者統率局長の荻河原さんと理事長が面白い事をしてくれたみたいだよ」
そう言って微笑む。
「………フフッ。やっと、か」
月柏も同様に微笑んだ。凄まじく、黒いオーラを放ちながら。
『噂部』
『噂部』部室にて、五十嵐は実の妹である四季波の機嫌の悪さが怖かった。
「………どうした?」
変な汗をかきながら尋ねた。
四季波は椅子に座り、ノートパソコンと睨めっこしている。
その様子を見ながら、「顔が険しいのはパソコンの小さな文字に目が疲れているから」と、言い聞かしながら再度質問する。
「………どうした?」
「………ねぇ、兄さん」
「な、なんだ?」
「…………………………………………………………………………………何でもない」
間をたっぷり開けて結局聞かない。
何とも言えない感じの雰囲気が流れる。
因みにだが、五十嵐は四季波が左右の事を嫌っている事に気付いていない。
「………そうか」
この2人も謹慎中なんのだが、それを無視して部室に来ている。
「………また、付き合うの?」
四季波が尋ねる。
「ん? ………誰と?」
「誰とって………何でもない」
そこで会話終了。
五十嵐からでは丁度パソコンが邪魔で四季波の表情が見えない。
四季波は、若干涙目でキーボードを叩いていた。
………難しい年頃なのだ。
五十嵐は必死に妹の不機嫌の原因を捜していた。
「昨日勝手に食べたプリンか?」「四季波の格ゲーキャラのレベルを勝手に上げた事か?」
などなど。まぁ、例が2つしか挙がっていないが挙げればキリがないと言う事で。
だがどれもイマイチピンと来ない。
では原因は?
「彼って結構鈍いよね。病」の五十嵐には誰かに尋ねるか、本人に聞かない限り答えを導く事は無理だろう。
何とも言えない雰囲気の中、五十嵐は博打に出た!
「………いやぁ、そう言えば昨日左右がブゴブラッ!!!!!」
ガシャァァァァァァァンッ!!!!!!!!
……………アウトだよね。速攻で顔面を思いっきり殴られた五十嵐。
後ろの窓にぶつかり、ガラスを見事に割った。
そして、仰向けになりながら気絶開始。
そんな空気読めないと言うか、天然と言うか、どうしようもない兄を見ながら、四季波は溜息を吐いた。
「………相変わらずなんだよ…………馬鹿が」
少しの笑みを浮かべて。
『ボードゲーム研究会』
部室にて、謹慎中の筈だが物の見事に集まっている。空河除き。
「結局皆何人ずつ倒したの?」
草島が不意にそんな事を尋ねる。
「俺と、メイドちゃんは0だよ」
「はい」
鴨梨が答え、それに明堂が頷く。
「何でそんな事聞くの?」
陣内が将棋をやりながら尋ねる。相手は越智だ。
マッサージチェアに座り、足をバタつかせながら草島が陣内の問いに答える。
「いやぁ何かさ、今回襲ってきた人数って俺等へのあれでしょ? 俺が倒したのは最初は2人。この内の1人は鴨を狙っていた。つまりは、俺と鴨1人ずつって事でしょ? 舐められてたって事でしょ?」
つまり草島が言いたいのは、倒した数=襲ってきた人数=それだけ危険視された=実力者って事らしい。
「私は2人よ。三流以下の下種野郎と調査員の女」
心底どうでも良いのだが、答えないと煩いので陣内が答える。
「2人か……まぁ、その調査員は能力者じゃないからノーカン」
草島には何の権限が?
まぁ、彼は馬鹿野郎なので仕方が無い。
鴨梨が2人を見る。2人と言うのは越智と大熊田だ。
「掃除機とプーさんは?」
「「……………………………………………………………………」」
沈黙を決め込む2人。
「………何人?」
草島が近寄り尋ねる。
表情は笑みだが、何となくの威圧感がある。
その表情に耐えかねて、
「………5人」
大熊田が答える。
「5人ッ!? まさかの熊さん5人!?」
オーバーアクションで驚く馬鹿。いや、草島。
大熊田の数を聞いてホッとした越智が答える。
「俺も5人だった」
「「「「…………嘘だ」」」」
声の揃う明堂を抜く4人。
「あっ、えっと……」
オロオロしている明堂。
「な、何で嘘だと!?」
立ち上がっちゃう『天才』。
「だって『狂者』が5人で終わる訳なじゃない」
陣内が桂馬を取りながら言う。
「いや、5人倒した辺りで『バーディア』産のあの子が現れたからね」
『バーディア』産とは星野宮の事だ。
「あぁ、何だかんだ言ってもあの子は『バーディア』の『天才』なんだな。『破壊狂』を止めるんだから」
鴨梨が頭の中で星野宮の戦闘を思い出しながら言う。
「弦の扱いは上手いよな。音を操りながら弦も操る。まぁ、弦を振動させて動かしているみたいだし、簡単に腕吹き飛ばされたし。音もエゲツないし」
実際に体験した越智は若干顔を蒼くしながら震える。
『破壊狂』の時は凄まじい程の戦闘狂なのだが、使用してなければ普通の「怠い」事が嫌いな天才だ。………普通か?
グシャッ!!!
「「「「「!!??」」」」」
何かを潰す音が聞こえ、その音がした方を一斉に見る。だが、直ぐさまその目線を逸らす。
「………あの女か」
黒いオーラを出しながら将棋の駒を潰している陣内。
「えっ? 将棋の駒ってそんな簡単に女性が潰せるの?」的な疑問を頭に皆浮かべたが、そっと胸の奥にしまい込む。もう、臍繰り隠す以上に必死に。思春期の男子がエロ本を隠す以上に必死に。
すると、不意に思い出した様に、
「………矢張り幼なじみは強いのかな?」
などと呟く明堂。
「まぁ、天使ちゃんはそう言うの鈍いと言うか態と気付いていないフリするからな」
鴨梨が苦笑しながら立ち上がり、ドアへ向かう。
「ん? 鴨ぉ~何処行くの?」
草島が尋ねる。
「お見舞い」
それだけ言って鴨梨は部室を出た。
鴨梨が居なくなって、皆の表情から笑みが消えた。
正確には緊張の糸が切れたのだ。
「………アイツは、何を隠しているのかね」
草島が少し悲しそうな表情で呟く。
「元には元なりの何かがあるんだろ」
越智の表情にも笑みは無かった。
鴨梨はギブアンドテイクの関係と言ったが、矢張りそれだけでは寂しい感じではあった。
何かの目的がある事は解る。だが、それ以上は本人から聞かないと解らない。
何とも言えないもどかしさだった。
だが、皆は理由が無い限り深入りしない。
「友達だから」とかそんなのは皆の中では理由にならない。
もっと、自己中心的な理由がなければ。
「…………不穏だよね。何か起こりそう」
陣内が不意に呟く。
だが、皆同じで何かが始まるか、終わるのを感じていた。
特に、
「…………姉さんが何か始めて終わらせてそうだ」
越智が顔を蒼くしながら呟いた。
あれ?途中までシリアスだったよね?
『病棟校舎』
病室。病院特有の匂いと白さに包まれながら星野宮は窓の外を見ていた。
外傷は差ほどないのだが、疲労が溜まっていたらしい。
その為「疲労回復するまでは安静にしていろ」との事で、星野宮は病室に居る。
その表情は…………………………茹でタコ並の赤さだった。
「どうしよう………好きって………言っちゃった………」
両頬を抑えながら真っ赤になっている。
昨日の空河との戦闘で、流れに身を任せてか雰囲気で「好き」と言うか「好きになる」的な事を言ったのが今更になって羞恥心として襲ってきたらしい。
「………どうしよう……「幼なじみの特権で天士とラブラブになろう! 計画」が………あれ、でも別に言っても支障はない? ……それでも恥ずかしい!!」
などとベッドの上で悶えていた。
―――コンコン
「どうしようどうしよッ!! 嫌われてないかな!? そうだよね………昨日色々あったし……嫌われてないかなッ!!?」
「………コンコン」
「でも………逆にこうやって自分の好意を示した方が伝わりやすいのかな? ………どうかな!?」
「知らね。てか、気付け」
「へっ!?」
気の抜けた声を出しながら、枕に埋めていた顔を勢い良く上げ、ドアの方を見る。
そこには不機嫌そうな左右がドアの前に立っていた。
「ノックした」
それだけ言って病室に入る。
「ど、どうしたんですか? てか、聞いてましたか?」
ベッドの上で正座をしながら尋ねる。
ベッド横のパイプ椅子を取り出し、それに座りながら左右は答える。
「うん。全部聞こえた。まぁ、別に今更だけど。お前の天士への好意は解りやすかったしな」
缶コーヒーをポケットから取り出し渡す。
「……そうですか。あっ、コーヒー有難うございます」
缶コーヒーを両手で持ちながら、少し安心した笑みを浮かべる。
「………なんだ、その顔?」
「えっ、何か付いてますか?」
「違う。………何でそんなに安心した表情かと聞いた」
「………嫌われていると思っていましたから」
「私がお前をか?」
「はい。でも、こうやってお見舞いに来て―――」
「嫌いだよ」
声を遮ってまで言う事か?
「へっ?」
また間の抜けた声を出す星野宮。今回は仕方が無い。
「今回お見舞いに来たのは謝る為だ。心配してではない。唯謝りに来ただけ。昨日の事がなければ来ない」
コーヒーを流し込みながら断固として心配ではないと言う。
それに昨日の事が無ければ星野宮は此所には居ません。
本人前にしてまで言うか?と思いながらも笑みを浮かべる。
「あっ、そうですか………でも、来てくれて嬉しいです」
「んあぁ? ………あぁ、ドンマイ」
見舞いに誰も来ないらしく、かける言葉は「ドンマイ」………。
結構扱いは酷い筈なのに、星野宮は微笑んでいる。
その笑みの理由が気になりつつも、聞けずにいる左右。
空の筈の缶を何度も何度も口に付ける。
「………………………………………………………」
チラチラと星野宮を見る。目が合いそうになったら缶に口を付けて窓の外を見る。これの繰り返し。
そんなある意味カオスな雰囲気な中、矢張り口を開くのは左右だ。
「…………何でそんなに笑ってる?」
そう言われ、慌てて自分の両頬を抑えながら恥ずかしがる。
「えっ!? わ、笑ってましたか? 頭可笑しな子だって思われる………」
両頬を抓ったり伸ばしたりしながら笑みを消そうとする。凄く可愛く思うのは気のせいか?
「………ぷっ、クックク………クフッ………フフ」
必死に笑いを堪える左右。星野宮に失礼とかじゃなく、何となく星野宮で笑ったら負けだと思った為。変な対抗心だ。
「わ、笑ってますね!? ………フフ………ハッハハハ!!!」
結構豪快に笑う星野宮。
5分程度星野宮の病室から笑い声が響いたとか響かなかったとか………。
何だかんだ言って2人して笑って、そして笑い疲れで息が上がっている。
「ふぅ~……まぁ、嫌いだけどな」
唐突に、そして雰囲気をぶち壊す発現。彼女は一体何様だ?
「はぁ~………私はそれでも大丈夫ですよ」
笑い過ぎで流れた涙を拭いながら答える。
「………何故?」
自分で言って措きながらこの質問。
「私、『バーディア』に居た頃、友達が居ませんでした。話すらしなかった。いや、出来なかった。私はその頃は「天士を守る」って言う目的の為に強くなろうとしていました。実戦形式の戦闘で、私はストップが掛かっているのに止めずに相手を攻撃し続けました。多分、焦ってたんだと思います。自分で強さが実感出来なくて、時間が早く進んで行って。でも、ある日私は『天才』って言われる様になりました。同時に『血塗れ姫』とも。どちらも私が強くなったからだと思っていました」
一度切る。
「でも、間違いだって此所に来て解りました。結局は、同じ所をグルグルと回りながら、何時の間にかスタート地点に戻ってきていた。でも、それで良いと今は思ってます。新しい目標、目的。そして今回はその目標の人が側に居る。それだけで十分私は強くなれると思います」
「随分自信家なんだな。お前はそこでストップかもしれないぞ?」
「大丈夫です。この学園には、私より強い人が沢山居ます。まだ、私はゴール出来ない。だから強くなれます。結局人の思いは匙加減1つなんですよ? 能力なんて。ですから私は嫌われていたって前よりマシだから大丈夫なんです。前は、嫌ってくれる人すら居ませんでした。恐怖、でしたから」
そう言い切り、笑みを向ける。
自虐混じりの笑み。だが、今の心境だからこそ浮かぶ笑みでもある。
「………ふっ。まぁ、良いや。今の話を聞いて少しお前が好きになったよ。………まぁ、ミジンコ並の小ささだが、な」
最後の一言は余計だ。
不意に、左右の表情が真面目な顔になる。
「2つ程尋ねる。黙秘はないからちゃんと答えろよ?」
「えっ? は、はい」
人差し指を立てる
「1つ。昨日、天士が能力を発現させた事を知った、と言っていただろ? あの場で、お前は聞いたと言った。誰に、だ?」
左右が言っているのは、昨日闘技場で星野宮が怒鳴った時に入っていた、その時は流した言葉。
『―――「蓮見天士は能力を発現させた」―――』
「それは、私も良く解らないんです。その頃私は7歳でした。でも、良く考えたら可笑しいですよね。私の考えでは天士は『外的誘発能力発現』だと思っていました。だから、違和感を全くなかった。でも、左右先生の推理だと天士は7歳の頃のテロで『損傷能力発現』って事ですよね? でも、私にそれを教えてくれた人はテロ前だった筈です………どうして?」
星野宮が首を傾げる。
空河は5歳まで星野宮と一緒に居た。その時の空河は無能力者。
その2年後、星野宮7歳の時ある人物に『蓮見天士が能力を発現させた』と聞かされる。
そして、空河の乗った飛行機がテロによって墜落。
時間軸的にはこう言う流れだ。
明らかに可笑しい。
星野宮はテロ前には空河もう能力を発現させていたと思っていた。
対して左右はテロ後に能力を発現させたと推測。
つまり、この2人の考えの真ん中に、第三者が居ると言う事だ。
誰かが偽、または本当の情報を星野宮に流した人物が。
だが生憎と10年前の出来事は既に星野宮の記憶では薄れていた。
その時の雰囲気は何となく覚えてはいるのだが、顔や声、服装、髪型その様な大切なところが抜けている。
「スイマセン」
頭を下げる。
「いや、まぁ予想はしていた。それでも聞けただけで十分だ」
そう言って左右は腕を組む。
「それで、もう1つは?」
「ん? あぁ、後はだな。………お前、『天才』の意味が解るか?」
「えっ? ………そのまんま天才って事では? 人より優れた才があるとか、超越したとか」
星野宮は首を傾げながら答える。
「いや………1つ忠告だ。あまりこの学園……いや、此所でなくともだ。天才を名乗らない方が良い。このままだと、何時の間にか歯車の一部にされるぞ?」
「歯車? ………どう言う事ですか?」
益々首を傾げ、頭の上にクエスチョンマークだ。
「いや、今はまだ時期ではない。早く話過ぎると気付かれる。時期が来たら話す。まぁ、もう帰る………今回はすまないな。………うん。すまない」
最後の方で背中を向けながら謝る左右。
「あっ、いえ、大丈夫です。言われた事が無い事を言われて、少し今は嬉しいので」
などと言って微笑む星野宮。
すると、何かを思い出した様に左右に尋ねる。
「わ、私からも1つ聞いて良いですか?」
「ん? 天士の事は本人に聞けよ?」
「ち、ち、ちちちちちちちちちち違いますッ!! えぇ~とく、草島? さんの事を」
「ん? 光輝に乗り換えるのか?」
「違います!! えぇ~と、昨日草島? さんに言われたんですけど、私は贋作だって、それに『バーディア』の本当とも言っていました。これって、どう言う意味ですか?」
「………光輝がそう言ったのか?」
目を丸くし、そして尋ねる。
「あ、は、はい」
「そう、か。残念な事に私は知らない。だが、解ったら教えよう。それでは、な」
そう言い残し病室を出る左右。
呼び止めようとしたが、呼び止めて再度尋ねようが、あの様子だと左右は答えないだろう。
だが、絶対に何かがある。星野宮は自身で調べる手を考えながら、ベッドに潜った。
星野宮の病室を出て、左右は顔を険しくしながら考えた。
「病室の前でその顔はダメだと思いますよ?」
「んあぁ?」
険しい顔のままその声がした方を見る。
「………早いお目覚めだな。矢張り王の腕は確かだな」
「そうですね。まぁ、俺に請求来ないで理事長に行ったのは幸いでした」
壁に寄り掛かりながら、缶コーヒーを啜る空河。
「………私のコーヒーは?」
「えっ? ………いや、買ってません」
「………そう。てか、何で此所に? 病室に居ろよ」
「いや………」
空河は頬を掻きながらチラッと星野宮の病室を見る。
「見舞いか?」
「まぁ、そうなんですけど、何となく会いづらいと言うか」
「ふぅ~ん。まぁ、良いや。会ってやれ。喜ぶ筈だから。私はもう用を済ませたし、帰る」
歩き出し、手をヒラヒラと振る。
すると、不意に立ち止まり振り返らずにある言葉を発する。裏を知らないと解らない、暗号の様で、警告の様な言葉。
「………『正直者は毒林檎に齧り付く』」
「!?」
「………じゃぁ、な」
そう言い、左右は帰って行った。
左右の背中を見ながら、左右が言った事の意味を考える。
『正直者は毒林檎に齧り付く』、これは『白雪姫』の事を言っている。
白雪姫は老婆扮した魔女に渡された林檎を疑いもせずに食べた。
結果として助かるのだが、この言葉は別に魔女がどうこうの話ではない。
これは裏では隠語の様に扱われる。
正直者は毒に気付かない。その林檎があまりのも美味しそうだったから。
つまりは、『テメェーの周りの仲間の誰かが裏切り者だ』と、言う警告に使われる隠語。
だが、今では裏の誰もが知っている為に使われなくなった言葉だ。
「………俺の周りに、敵が?」
空河は表情を歪めた。
左右はこの意味通りに言ったのか?
それともこの隠語の中に更に何かを隠したのか?
でも、解る事は『警戒しろ。誰が敵か解らない』と言う事だ。
缶コーヒーを、ゆっくり口に運んだ。
えぇ~まぁ、色々出てきましたよね。
天士の能力発現の謎。
鴨梨は一体何者?
草島の言う『贋作』そして『バーディア』の本当とは?
左右が言う『歯車の一部』とは?
左右が言った『正直者は毒林檎に齧り付く』………その裏切り者は誰?
などなどです。
まぁ、草島の件は暫くは放置ですわ。まだ早過ぎる。
鴨梨の件は多分もう少しじゃないか?
天士の件は………どうだろうな。ある意味これはラスボスに通ずるからな。
左右の件は徐々に。まぁ、うん。徐々に。
いやぁ~大分物語の全貌が……見えないね。
もうそろ敵を出したい。
つまりは………狂獄道さぁ~ん!出番ですよぉ~!!
彼は大好きなキャラです。
まぁ、何て言うか敵らしくない敵を出したいと思います。
「コイツ敵キャラなのに人気投票いつもトップ3だよな」的なのを目指す!!
けどまぁ、狂獄道さんは動きませんからね。
動くのは『殺人集団』通称『ファミリー』ですから。
それではそれでは…………。
追伸
最近のアニメは何で13話前後で終わる?
第二期やるなら一気にやっちまえよ!!俺はカッパも星も金星人も大好きだぁ~!
………まぁ、視聴率とかあるから仕方無いよね。