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One-eyed  作者: 龍門 
ランク上げ編 =Envy and deliberation=
30/60

泰然自若~彼女は彼の為に重過ぎて、軽過ぎる愛を紡ぐ~

あれ? 何でこうなったの?

と、思われると思います。

ちゃんと次回で説明します。









 暗くて冷たい。

 苦しくて痛い。


 何も無い。


 体を動かす事が出来ない。

 息を吐く音しか耳に届かない。


 口を動かしているのか?

 眼球を動かしているのか?


 解らない。


 目を開けているのかすらも、解らない。


 此所は何処?


 何も解らない。


『――――――――――――――――――――』


 何か聴こえた。

 誰の声?

 何て言った?

 誰に言った?


『――――――――――――――――――――』


 まただ。


 ………………あぁ、そうか。

「久しぶり………だね」


『――――――――――――――――――――』


「今………思い出したよ」


『――――――――――――――――――――』


「………うん。大丈夫。有難う」


 静かに、小さく、ゆっくりと。思い出していく。


『天士、私はね天士の事………恨んでないよ?』


 彼女の言葉を。























 戦況は相変わらずの消耗戦だった。

 左右達の方が圧倒的にスペックは上だ。

 それでも数には勝てないと言う事か。質より量とは良く言ったモノだ。


「数が多すぎる………学!! 一気に片付けろ!!」

 月柏が肩で息をしながら木須に向かって叫ぶ。


 木須は眼鏡を上げながら頷いた。

「了解」

 それを聞いていた他の皆は一斉に後ろに跳ぶ。


 木須の能力を知っているからだ。

「駆逐する」


 木須が小さく呟いた瞬間、木須の後ろから複数のミサイルらしき物が現れる。

「逃げるなら逃げろ」

 ミサイルがゆっくりと動き出し、加速していく。


「その背中を爆撃する」

 ミサイルは四方に飛び、様々な方向から骸骨達を一掃する。


ドゴォォォォオオオオオォォォォォォンッッッッッッ!!!!!!!!!!!


 木須の能力は『誘導弾ミサイル』その名通りの能力だ。

 ミサイルを出現させ、攻撃する。十分凶悪で、遠距離ならば負けは無いだろう。

 それにリバウンドも何も無い能力。

 その分狭い所などではその力を発揮出来ないと言うデメリットもある。


ジジジジジジジッッ!!!


 雷が爆ぜる。

「木須先輩に全部持って行かれる前に………俺も暴れさせてもらうぜッ!!」

 草島が叫ぶ。

 足だけ雷と化していたのが、一瞬で全身を雷に変える。

「痺れ崩れろ」

 呟き、その瞬間地面を蹴る。


ドゴォッッッッンッ!!!


 衝撃で地面が抉れる。

 そして、


ジジジジジジジッッ!!!ドゴォォォオオオオォォォォンッッッッ!!!!


 爆ぜる。


「グラスはまだ暴れ足りないのかね」


「馬鹿だからな」

 鴨梨と越智が遠目から眺めていた。


「怪我してないでしょうか?」

 オロオロしている明堂。


「大丈夫でしょ?」

 つまらなそうに頬杖をついている陣内。


「俺も暴れたいけど、俺の能力って戦闘に向かないんだよなぁ」

 五十嵐が寝転がりながら溜息を吐く。


 この5人は複数を相手にしたら能力を存分に発揮でないタイプである。

 陣内と鴨梨は1対1ならば本領を発揮出る。

 越智は治療したとは言え、『破壊狂デストラクション・エンスー』でのダメージが残っている為に参加せず。

 明堂は『治療系能力キュア・アビリティ』の為不参加。

 五十嵐の『不死鳥フェニックス』は再生能力だけなので攻撃力は皆無。

 見学組である。


「ハァァァァァァァ…………ハッ!!!」

 溜め、見事な正拳突きを骸骨に食らわす四季波。

デスクワーク派の筈である四季波の能力は『無敵の破壊神インヴィンシブル・シヴァ』は完全な『攻撃系能力アタック・アビリティ』。

 女の子では考えられない威力で骸骨達を粉々にしていく。


「いやぁ、強い方々が一杯ですね」

 影八目はニヤニヤと笑いながら骸骨を見ずに撃破する。


「………お前………何者だ?」

 その後ろに立ち大熊田が尋ねる。


「ん? 何者って言われましても………」

 態と惚け、首を傾げる。


「………俺が思うに………今回の騒動………お前も一枚噛んでいる………だろ?」

 勘の良い大熊田は影八目を指さしながら尋ねる。


「さぁ。どうでしょうね」


「………一応部長………なんだ………元凶を放って置く程………生易しくもない」

 睨みながら影八目に向かって掌を向け、拳を作る。


 すると、


サァァァァァァァァァァァァ――――………。


 影八目の後ろに立っていた骸骨が粉々になる。

 それを見ながら影八目は微笑む。

「有難うございます。冷や冷やしましたがね」


「………逃げるなよ? ………『幻影の影シャドー・オブ・シャドー』」

「!!?」

 そう言い残し、大熊田は骸骨達に向かって行く。


「………まさか私の能力名を知っているとは………何者ですか彼は」

 大熊田の背中を見据えながら、此所に来て初めての表情を現す。闇に溶け込む歪んだ顔を。


 左右と月柏は並んで空河と対峙していた。


「詩祁芽姉さん………この後、どうなるか解ってますよね?」

 声のトーンを低くしながら尋ねる。


「解ってるけど、簡単には殺されないぞ?」

 笑いながら答える。


「………まぁ、逃げられるとは思いませんけど」

 トップの中のトップを纏めるトップは軽く殺気を放つ。


 だが、先代の会長である『天才ジーニアス』そう簡単に怯まない。

旋士せんしが居れば早く収まるのにな。まぁ、『騎士ジャック』が動く前に終わらせるに限るか」

 左右は話を変え、頭を掻きながら一歩前へ出る。


「それには同感です。ですが、忘れないで下さないね?」

 月柏が一歩、また一歩と前に出る。


「何をだ?」


 立ち止まり、振り返る。その時の表情は笑み。

「…………貴女でも彼は救えない・・・・・・・・・・


「なっ!!?」

 顔を歪め、らしくない声を出す。


 月柏はそれ以上何も言わず、前へ歩き出す。

 左右はその場を動かず、唇を噛んだ。

「………餓鬼が……」

 月柏の背中を睨み、吐き捨てた。


『………タスケテ………』

 人魂が動き出す。


貴方達・・・は助けられない。でもね、彼は助けてあげる。貴方達を殺した、彼は」

 月柏は静かに、悲しそうな顔で腕を振るう。

 炎が生まれ人魂を焼き払う。


「まだ、救えてないから」

 悲しい表情で、腕を再度振る。

 炎が生まれ焼き払う。


『………シネシネシネシネシネシネシネシネ』

 呪文の様に呟く。


 だが、それを聞いても涼しい顔で、悲しい顔で月柏は冷酷に腕を振る。

「一度、嘘を吐いた。………彼の心を抉る嘘を」


 腕を振る。

 一歩前に出て、もう一歩前へ出る。

 そして、手が届く距離まで近づき月柏はそっと空河の頬に触れる。

「……「忘れて良い」……そんな嘘を」


『アッ………ガガッ…………』

 動揺。此所に来て初めて空河の表情に表情が戻った。


 月柏は知っていた。

 空河が何故この能力を使うのかを。

 月柏は知っていた。

 空河が何故意識を途絶えてまで使うのかを。

 月柏は知っていた。

 それは逃げ出さない為だと。

 月柏は知っていた。

 全ては忘れない為だと。


 それを解っていたにも関わらず、嘘を吐いた。

 「忘れて良い」「辛かったら逃げても良い」「貴方のせいじゃない」

 詭弁で固めた、彼を止める為だけに言った嘘。自分の為の嘘。そんな簡単な事ではないと解っていたのに。


 その時の彼の言った言葉を、月柏は一生忘れない。


 悲しそうに振り返り、悲しそうな顔をして、悲しそうに呟いた。


『なら、俺を殺して下さい』


 その時から、月柏は空河天士と言う人間に興味を持った。

 表も、裏も。その感情が好きになるのに時間は掛からなかった。


 彼を救いたい。

 彼に救われたい。


 月柏の心はあの頃から、1㎜も変わっていない。

 それは重く、軽く、息詰まる程の………愛だ。


「殺さない。彼は………私の未来だから」


 静かに。


『アガッ………アァ………』


 凍える。


「まだ、彼も私も救われてない」


 少なく。


『アァ…………』


 穏やかな程に―――冷酷に。

 生死を彷徨う事を拒絶する。


「貴方はまだ死ねない」

 自分と彼の為に。

 月柏は死を求めた空河を拒絶し、止める。


 それは身勝手で、一方的な気持ち。


『………コロシテ』


「私が救われて、貴方を救ったら」


『………タスケテ』


「………本心では?」

 月柏が微笑む。


「………………俺が救われたら救ってやるよ」

 空河が微笑む。


「意地悪」

 静かに、静かに。














 一方、少し遠くで見ていた見学組。

「………あれ? 何か良い感じなのは俺の気のせい?」

 鴨梨が尋ねる。


「俺はてっきりあの『バーディア』産の天才ちゃんとだと思ったのだけれど?」

 越智が頬を掻きながら尋ねる。


「何で? 今回別にあの女何もしてないよね?」

 怒る陣内。


「………良い所持っていかれました」

 悔しがる明堂。


「まぁ、あの天士を止める事が出来るのは旋士と鈴葉だけだからな。詩祁芽も止められると思ったけど、今回の騒動に一枚も二枚も噛んでるからな。無理だろ」

 頭を掻きながら五十嵐が説明する。


「………去年と良い………何であの女が唯一の方法なの?」

 陣内が怒る。LOVEではなくLIKEでも苛つくらしい。


「まぁ、元もやろうと思えば出来るだろ?」


「……どうでしょうね」

 何故か、少し悲しそうな顔をする鴨梨。


「………まぁ、元や鈴葉、それに旋士は最初だからな」


「……私はどうすれば良いのでしょうか?」

 考え込む明堂。


「でも、別に止められるからってその人物と天士が近い関係って訳じゃないから、恋愛事情関係無いと思うぞ?」


「そうですよね!!」

 テンションMAXになる明堂。


 そんなこんなで、何とも言えない幕切れ………いや、まだ終わりには遠い。










「……姉さん」


「何?」


 空河と左右が見据え合う。


 そして、空河は星野宮を見る。

「………アンタの思惑に乗ってやるよ」


 その言葉を聞いた瞬間、左右は驚き直ぐに笑みに変える。

「………そう言う所は好きだぞ?」


「俺はそう言う所嫌いだよ」


 火種を全て消す為に、再度動き出す。













何で鈴葉?と、思われたと思います。

流れ的にミナじゃね?と。


一応の理由があるんです。

ミナや左右では天士を止められない理由が。

それは次回。

因みに、今回鈴葉と天士の間に何が?的な感じで書きましたが、別に天士が鈴葉の事を好きな訳ではないですよ?


まぁ、はい。兎に角次回で説明します!!

だから石や岩や泥などを投げないで下さい!!!


それではそれでは…………。

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