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One-eyed  作者: 龍門 
プロローグ =Long prologue=
3/60

Foolish communication~馬鹿なやり取り~

まだ能力が出てこない。

出すタイミングを・・・見失った・・・・。







 ある女子生徒が理事長室の前に立っていた。

 腰まである長い茶色がかった黒髪。その後ろ髪を1つに束ね三つ編みにし、少女と言っても差し使い無い程少しあどけなさを残した顔。美少女と言われる類の子だ。


 女性生徒が理事長室の扉をノックする。


コンッ――コンッ―――………。


「入りたまえ」

 中から直ぐに返事が返ってくる。


「失礼します」

 金メッキのドアノブを掴み、ゆっくりと扉を押す。


 直ぐに大げに大きい椅子に座る朝部寛太朗あさべかんたろう、理事長が目に入る。

「ようこそ。宝殿高校へ」

 朝部は軽く微笑む。


 女子生徒は理事長の前まで行き、そして同じく微笑み、

星野宮ほしのみやミナです。今日からよろしくお願いします」

 軽く自己紹介しお辞儀をする。


「此方こそ、お願いするよ」

 そう言いながら朝部は机に置かれた資料を手に取る。

「………アメリカの能力研究の高校『バーディア』。優秀だね」


 『バーディア』。能力研究の第一人者であるバーディア=ネクリストと言われる人物の名から取った高校だ。

 1、2を争う程の有名高校であり、目的は宝殿高校とは大差変わらない。

 だが、在学生のレベルなどは向こうの方が上だろう。


 その高校からの転入。RANKはⅣ。最高RANK評価。


「自分が優秀だと思った事はありません。ですが、強者だとは思っています」

 躊躇も無しに星野宮は言ってのける。


 朝部は笑みを浮かべたまま尋ねる。

「君は、何の為に力を求めているのだい?」

 意味深な質問。


 それを感じてか、その問いに星野宮は顔を少し顰める。

「………それはどう言う意味ですか?」


 暫くの無言。だが、朝部は変わらぬ笑みを浮かべたまま。

「いやいや、何となく知りたいだけなのだよ。今のままでも十分な力を持ちながら尚、上を目指す。何か理由でもあるのかと、思ってね」


 怪しみながらも星野宮は口を開く。

「私は………昔の誓いを守りたいだけですから」


「誓いですか? それは初恋の相手とかにですかな?」


「なっ!? なっ、ななななななな!!! 何を言っているんですか!? そんな訳ないじゃないですか!! わ、わわわわわわわわわ私は天………か、彼の事なんて何とも思っていませんよ!! えぇ。そうです!! 絶対です!!!」

 初恋と言われ、顔を真っ赤にし叫ぶ。

 自分から「そうです」と言っている様な反論の仕方。ある意味ベターだ。


 それにしても、先程までのクールな面影消えてしまっている。


「はっはっは!! いやいや、少し意地悪な質問でしたな。年頃の女の子はそう言うのは言いづらいモノ。これは失礼しました。はっはっはっ!!」

 笑いながら頭を掻く。あからさまだ。態とこの様な質問をしたのだ。


「なっ!!? ………大声を出して申し訳ありません………」

 顔を真っ赤にし、俯きながら謝る。


「いえいえ、私の茶目っ気が出てしまったのが原因なのだからね!! ………それでは、君の学年は二年B組………それと、『生徒会』への入会が決まっているからね。何か異論があるかい?」


「………いえ、在りません」

 朝部と全く目線を合わせない。からかわれた事がかなりご立腹の様だ。


「そうか。それでは―――」

 理事長の言葉を遮る様にドアがノックされる。


コンッ――コンッ―――………。

「木須です」

 扉の外から男子生徒の声。


「入りなさい」


「失礼します」

 黒髪に眼鏡と言った優等生を絵に描いた様な青年が入って来た。


「彼は生徒会副会長の木須学きすまなぶ君だ。君を案内してくれる」


「どうも。木須です」

 木須は星野宮へ向かって軽くお辞儀をした。


「星野宮ミナです。よろしくお願いします」

 彼女も軽くお辞儀をする。


「それでは、適当に彼女を案内してやってくれ」


「解りました。それでは」


 星野宮は一度理事長にお辞儀をし、先に出ていった木須の後を追って理事長室を後にした。

 二人が出ていった後、理事長は溜息を吐いた。

「もう出てきても良いだろう?」


 誰も居ない理事長室でそう呟いた。

 すると、誰も居ない所から一人の男が現れる。

「バレていましたか?」


 男は微笑みながら理事長の前へゆっくりと歩く。

 先程の木須と同じ制服を着ている所から、彼も学生なのだろう。


「バレないとでも思ったのかね?」

 理事長はお茶を啜りながら微笑む。


 だが、その笑みは優しいものじゃない。暗に、「お前如きが私から隠れきると思っているのか?」と言っている。


 学生は苦笑しながら扉を見つめた。

「………彼女が噂の転入生ですか」

 学生の横顔。それは笑みだ。それも玩具を見つけた、とびっきりの嫌な笑み。


「彼女はもう『生徒会』への入会が決まっている。『執行部』の君でも手出しはいけないぞ?」


「解っていますよ。今回はただ彼女の事を見てみたいと思っただけですし。それに、僕が今どうしても欲しいのは彼ですしね」

 そう言いながら学生は理事長を見る。「僕は全てを知っている」と言っているかの様に。


「………『生徒会』と取り合いだな。だが、彼が自身の能力を隠している意味を理解しているだろうね?」


「えぇ。だから困っているんですよ。『執行部』は『生徒会』と違って表立った仕事が多いですから」

 そう言いながらドアへ向かって歩き出す。が、急に足を止める。

「それと、彼の能力って、本当にアレ・・なんですか?」


 理事長は静かにお茶を啜る。

「………そうだが? 何を勘ぐっているのかね?」


「ハハッ! そうですよね。…………えぇ、そうですよね」

 最後に不敵な笑みを残し、学生は朝部に軽くお辞儀をし、部屋を出て行く。


 学生が出て行き、理事長は溜息を吐いた。

「………流石だな」

 表情に笑みは無い。


「………『女王クイーン』。それに『騎士ジャック』にまで好かれるとは………彼は既に渦の中、か」























「おい! 起きなされ!! 起きなされ!!」

 草島光輝くさじまこうきは布団にくるまっている空河天士そらかわてんしを起こしていた。


 体を揺すり、喧しい程大きな声で叫ぶ。

「んあぁ? ………まだ8時だぞ? 後1時間は寝られる」

 時計を見ずに空河はそう言いながら再度眠りにつこうとする。


 だが、草島はそれを良しとはしない。

「起きなされ!! 今日は転入生がやってくる日だぞ!? しかも女子でッ! しかもあの『バーディア』に在学していた………RANKⅣの女の子だぞ!?」


「………知らねぇよ。興味無い」

 そう空河が言うと草島はオーバーアクションで驚く。

「な、な、な、なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!??」


 叫び、そして空河のくるまる布団を剥ぎ、胸倉を掴んで揺さぶる。

「健全な思春期男子がこんな好物件に「興味無い」だって!!? 目を覚ませ!! 昔の貴様は女と聞いただけであんなに興奮してギャウッッ!!?」

 草島が叫んでいる最中に空河の拳が顔にめり込む。


「勝手に俺の昔捏造するな。俺はそんなある意味健全で不健全な男子じゃねぇよ」

 そう言いながら再度布団に潜ろうとする。


バンッッッ!!!!―――、

「アカンで!! そりゃぁアカンで!! そんな事言っている時点で天使ちゃんは健全な男子ちゃうでッ!!!」

 部屋の扉の前で口に薔薇を咥えながら立っている男。

 名を鴨梨元かもなしはじめと言う。


「………お前それ本物の薔薇じゃん。口からスゲェ血流れてるぞ?」

 布団にくるまりながら空河は鴨梨の口からドクドクと流れる血を指さす。


「いや、何かインパクトのある登場をしないといけない気がして………」

 そう言いながらゆっくりと薔薇を口から離す。

 離している時に小さく「痛い………血が………」と呟いていた。


「それと、お前別に関西人じゃないじゃん」


「それも何となく雰囲気で」


何時の間にか正座をしている鴨梨。

 まだダウンしている草島。

 もう一度眠りにつこうとしている空河。


 この3人は『落ちこぼれ』と呼ばれる代表である。

 この3人に+2人でこの学園では結構有名な『五人衆』と呼ばれる者達だ。


 この寮はRANKⅡの学生寮。

 学年関係無しにRANKⅡが一纏めにされている。

 この学園の寮は学年で分けられるのではなく、RANKで分けられているからだ。


 因みに、一番人数が多いRANKはⅢ。2番目はⅡ。3番目はⅠ。そしてⅣだ。

 大抵の能力者はⅢまで到達出来る。だが、そこからⅣへ上がるのは100人に1人居るか居ないかの確率だ。

 その為大抵のRANKⅢはⅢ止まりで終わる。


「何で天使ちゃんは転入生に興味を示さないの?」

 鴨梨は正座しながら空河に尋ねる。


 空河を襲う眠気は疾うに消えていたのだが、それでも怠慢は発動中だ。

 布団にくるまりながら鴨梨の質問に答える。

「どうせ高飛車なお嬢様だろうさ。俺はどっちかと言うと庶民なんでね。興味無し」


「あぁ~………だからメイドちゃんの事が気になるのか」

 腕を組みながら「うん、うん」と頷く鴨梨。


「何でそこで明堂めいどうが出てくる? 言っておくけど、俺は別にアイツにそんな感情抱いてないぞ?」


「天使ちゃんにその気が無くとも、僕が見ている限りではメイドちゃんの方は天使ちゃんに気があると思うけど」

 そう言いながら未だダウン中の草島の顔を「ぺち、ぺち」と叩く。


「………へぇー」


「へぇーって………まぁ、天使ちゃんはそうだったよな」


「うぅ………ハッ!! 俺は何時の間に眠っていたのだ!? うぉっ!? 鴨!? 何故此所に?」

 遅れてきた馬鹿野郎ムードメイカーが叫ぶ。


「いやいや、天使ちゃんが転入生に興味を示さないからさ」


「そうだッ!! おい天士ッ!! 貴様何故に転入生の女の子に興味をしグゲッ!!!!」

 再度空河に顔面を殴られダウン。彼のライフはもう0だ。


「あんまり殴ると顔の形変わっちゃうぞ?」


「………整形の手伝いしてるんだよ。格好良くなりたいみたいだったから」


「………これで格好良くなれるなら不良の大半はイケメンだな」

 苦笑しながら言う。

 ふと、鴨梨は部屋の時計を見た。


『9時20分』


「……………………………………………………………………」

 目を擦り、再度時計を見る。


『9時20分』


「……………………………………あきませんがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 何故か関西弁で叫び、そして立ち上がる。

「グラス!! 大変や!! 大変や!! 既に9時回っとるわッ! 今回遅刻したらデーモンに殺されるでッッ!!!!!」

 何故か関西弁。そして焦った表情でダウンする草島を起こす。


「フフッ………君の禁断の果実は………どんな味がするのかな?」

 寝言を漏らす馬鹿野郎アブノーマル


「起きろ変態ッッッ!!!!!!!」


「………………んなぁッ!! ………おぉ~鴨じゃん! 何で此所に?」


「その件は既に終わっとんねんッ!!!!!」

 鴨梨は叫ぶ。


 草島は首を傾げる。

「何でそんな慌ててるの? まだこんな時間……………………………あきませんがなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 何故か関西弁になる草島。


「どないしてこんな………どんだけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 古い流行語を叫ぶ。


「早う行くでッッ!!!!!」

 凄まじい速さで部屋を出て行く鴨梨。

「合点だ!!!」

 叫び飛び出していく草島。


 そんな彼等のやり取りを見ていた空河は呟く。

「制服とか………鞄は?」


 教室に駆け込んだ彼等に制裁が下ったのは言うまでも無い。











能力はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??

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