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One-eyed  作者: 龍門 
ランク上げ編 =Envy and deliberation=
26/60

唯我独尊~彼女は自身の為に苛つきその元凶を他人に消させる~

今回は少しなんて言うか、ダメですね。

予定通りに持っていこうとしたら結構急な感じに。






 第二校舎校庭。


 調査は終盤を向かえ始めた。

 RANKⅣの人数は少ないが、その分癖のある能力などが在るためにスムーズに進まない。


 その中で既に調査を終えている五十嵐四季波は膝の上にノートパソコンを置いている。凄まじい速さのブラインドタッチだ。

 能力は攻撃系なのだが、基本はデータと睨めっこだ。もしくは格ゲー。


 四季波の周りにカタカタカタカタカタカタッ―――と、言う音が響く。

 周りの生徒達はその姿を凝視しながらも近づかない。

 唯々怖いのだ。色々と。


 四季波は無表情。

 それが一層怖い。


「何調べてるの?」

 タオルで顔を拭きながら月柏鈴葉がやって来る。

 画面を観ながら答える。

「鴨梨さんが調べてくれって………」


「元が? 何を調べてるの?」

 画面を覗き込む。


「……………………これ私非公認よ?」

 月柏が顔を顰める。


 四季波が調べているのは『会長に切り捨てられ隊』つまりは月柏のファンクラブ(非公認)だ。

「でしょうね。会長さんがこんなのを公認する筈ないですもん。まぁ、今回はこの非公式の外道共が問題なんです。大人しく追っかけ回していれば良いものを………」


「追われるのは私でしょ?………潰すか」

 などと顎に手を当てながら考えている。

 ぶっちゃけ月柏が一言言えば潰せる。鶴の一声と言うヤツだ。伊達に会長ではない。


「で、この変態共は何をしたの? もしくは何をしようとしているの?」


「私もちゃんとした説明はしてもらってないんです。何か調べてくれっていきなり電話着て。でも、調べれば調べる程湧き出てきます」

 顔を顰める。


「例えば?」


 月柏に尋ねられ、そこで手を止め画面を指さす。

「まずこのファンクラブNo.5の男。彼女子寮に侵入してますよ。澳町おきまちさんにフルボッコにされています」


 澳町つむぎ。この学園の寮全ての寮母。そして般若。


「………何で私が知らないの?」

 月柏が顎に手を当て首を傾げる。


「まぁ、澳町さんが秘密にしたんでしょうね。多分この男が土下座でもして泣きながら謝って許してもらったんでしょう。澳町さんそう言うのに弱いですから」


「成る程。でも、何でその事が解った?」


「此所のサイト、会員制なんですけどハッキングしました。余裕です。朝飯って言うより三日ご飯食べて無くとも余裕です。此所の掲示板は何か会長さんの事を書いているらしいです。ストーカーなどをして。この男も調子に乗って書き込んでますし」

 四季波の周りから黒い何かが沸き上がっている。


「………アンタ今日少しご機嫌斜め?」


「…………………………………………………………………………………さぁ」

 長い沈黙。


「まぁ、原因は解るけど」

 そう言い溜息を吐く。


 四季波がご機嫌斜めなのは無論五十嵐久太郎のせいだろう。

 それと左右だ。

 まぁ、妹に取って兄の元カノって言うのはその兄よりも複雑な心境だ。


ブゥーブゥーブゥーブゥー――――…………。


「ん? 誰だ?」

 月柏がスカートのポケットに手を入れ、携帯を取り出す。

 そして画面に表示されている名前を見て、顔を歪める。


 そしてゆっくり四季波を見ながら一歩ずつ後ろに下がる。

 どうやら四季波のご機嫌斜めの原因を作った張本人からの電話らしい。


「…………はいもしもし? …………いきなりは………何処に居るんですか? えっ? そこには行かなくて良いんですか? じゃぁ、何処に? ………………それは本当ですか詩祁芽姉さん。…………………了解です。速攻で潰します。髪の毛1本残さず消します」

 最初の方では困った顔をしていたのだが、後半何故か黒い笑みと言うか怒りを露わにして物騒な事を言っていた。


パタンッ―――。


 携帯を閉じ、四季波に寄る。

「………今聞いた。で、一番可能性の高い奴は?」


「……………この男ですね。No2の男です」

 四季波は画面に映る写真を指さす。


 月柏はその写真を睨む。

「………覚えた。それじゃ、即デリートだ」

 凶悪な笑みを浮かべその場から一瞬で消えた。


 残る四季波は静かにパソコンを閉じる。

「………やっぱりあの女は疫病神だ」

 頬杖をつきながら、不機嫌に息を吐いた。














 第二校舎付近の森。

「良し。今鈴葉に連絡した。これでこの騒動は解決に進んでいるぞ!」

 左右が笑いながら言う。


 だが、その場は死屍累々だった。


「何で監視だ? 理由を言えよッ!!!」

 空河が吠える。

「いやぁ言えない。残念」

 微笑みながら首を傾げる影八目。


「うぅっ………」

 呻いている男子。

「ズタズタだが、何とかなりそうだな」

 治療しながら溜息を吐く男。


「足を切るなんて………でも切断面が綺麗で良かった。これなら大丈夫だ」

 気を失う越智の隣で切り落とされた足を付けている男。


「腕も足も捻れているけど、何とかなるよ。後遺症は残らないと思うしね」


「あ、有難うございます………」

 星野宮は軽く頭を下げる。


「大変ネ。大変ネ。大忙しで大変ネ。ぶっちゃけ稼ぎ時ヨ。稼げる時、稼ぐネ」

 白衣を纏う片言と言うか、似非中国人風の格好をしている男が左右に手を出しながら言う。


「………なんだその手は?」

 左右はその差し出された手を睨みながら尋ねる。


マネーネ! 私辞書にノーマネー無いネ! ボランティアなんて糞食らえヨ!」


「何故私に請求する?」

 左右は顔を顰めて男を睨む。


 だが、男は退かずに平然と金を請求する。

「シギメ姫金持ちネ! 黒いカードなんかも一杯ネ! 少しぐらい分けてネ!」


「煩い。てか、知ってるんだぞ? この前大きな仕事入って大金ゲットしてただろ?」

 左右が睨む。


「ウゥッ! ………シラナイネ」

 完全な片言へチェンジ。嘘が下手な男だ。


「黙れこの闇医者!! お前が集めている壺粉々にするぞ!!」


「それだけはダメネ! 後生ネ!! 私の宝ヨ! 壊すダメネ!!!!」

 左右の足にしがみつきながら泣き叫ぶ男。


「喧しい離れろ闇医者ッッ!!!」

 足を振り振り払おうとするが、

「金くれるまで離れ無いネ!!!」


「テメェッ! 結局金かッ!?」


 コントを見ながら影八目が空河に尋ねる。

「………あれは誰ですか?」


「んあぁ? 知ってるだろ? 『医療術式』のトップだ」


「あの似非中国人がですか!?」


「いや、あの人はもう日本に来て20年だ。元々頭の良い人らしいから日本語はペラペラだ。あれは態とだよ」

 頭を掻きながら答える。


「初めて見ましたが、まさか『医療術式』の頭が彼みたいな人だとは」

 少しショックを受けている影八目。


 『医療術式』。

 世界的な医療チームの名だ。

 『治療系能力キュア・アビリティ』のトップが集う医療関係のスペシャリスト。

 世界中の治療系能力者が目指す終着点である。


 そのトップの名がワン

 似非中国人風の中国人。だが名前は偽名だ。

 この男は治療系能力者の中ではトップの実力を誇るのだが、金にがめつい。


「払わないと治さないネ!」

 腰に手を当て叫ぶ王。


 だが、

「王さんッ! 今全ての治療が終わりました!!」

 『医療術式』の面々が額の汗を拭いながら何かをやり遂げた表情で駆け寄ってくる。


「んなぁッ!! もう終わっちゃったネ!? ヤバイネ!」

 慌てる王。


 他の『医療術式』の面々は互いに健闘を称えていた。

 随分気持ちの良い人達だ。


「………まぁ、理事長に金の事は言っておく」

 左右はそう言いながら星野宮を見る。


「本当ネ!? それは良かったネ!」

 王は随分現金な奴だ。


 左右は星野宮を見ながら眉を細めた。

 その表情に気付き、王が小声で言う。

「彼女知っているネ。五年前『バーディア』で見かけたネ。随分危なっかしい子だったヨ」


「………あぁ。だろうな」

 左右は顔を顰めたまま星野宮に近づく。

「良かったな、腕も脚も治って」


「………………えっ? ……あっ、はい」

 星野宮は随分歯切れ悪く頷く。

 それよりも、星野宮は左右を見ていない。


 見ているのは空河。

 それ以外は見ていない。いや、見えていない。


「何が気になる?」

 左右は片目を瞑りながら尋ねる。


 空河を見ながら尋ね返す。

「………………何がですか?」


「天士の事なら考えなくとも良いぞ? 今のお前には関係無い」

 笑みを浮かべる。


 それには星野宮も反応する。

「!? …………どう言う意味ですか?」

 左右を睨む。

 だが、左右は笑みを浮かべ動じない。

「意味? この言葉に裏も奥も何も無い。そのまんまの意味だ。お前は何も天士の事は考えなくて良い」

 左右は殺気を少しずつ放出しながら言葉を紡ぐ。


「…………意味が解りません」

 その殺気に殺気で返す。


「言ったろ。意味は言った通りだ」

 そう言いながら星野宮から離れる左右。


「なっ! どう言う事だッ!! 答え―――」

「誰に向かって口を利いている?」

 言葉を遮り、凄まじい殺気が放たれる。


「!?」

 星野宮は立ち上がろうとしていたのだが、殺気に気圧され固まる。


「おい。なにカッカしてる?」

 殺気に気付いた空河が左右に近寄りながら尋ねる。


 左右は空河を見ながら笑みを浮かべた。

「…………天士。暴れたくないか?」


「はぁ? いきなりなんだよ」


「その『対策装置』の実験も兼ねてだよ。………それと、何も知らない餓鬼に灸を据えるって目的もあるけどな」

 笑みを浮かべながら星野宮を見据える。


 左右は星野宮の目的・モチベーションに気付いている。

 それに気付いている為に、空河に星野宮を「潰せ」と言った。


 だが、今それが変わった。

 「潰せ」から「暴れろ」と。


 「力の差」や「考えの改め」など、もう左右にはどうでも良かった。

 苛つく。それだけの感情で全てを投げ捨てた。


「久しぶりに苛々してるんだ。だから…………私のストレスの元凶は消さないと、な」


 星野宮は自信の心境の変化に気付いていない。

 「空河の為」が「自分の為」になっている事に。


 いや、気付こうとしていない。

 今の考えが正しい。自分の行動は正しい。

 その矛盾を孕む責任転換が、左右の鶏冠に来ている。


「天士。もう一度命令・・する。この餓鬼を潰せ………徹底的に、な」


 場の空気が左右の纏う、発する雰囲気に支配される。

 空河も星野宮も固まっている。


 『医療術式』の面々もだ。


 だが、その中で影八目だけは笑みを浮かべていた。

 その笑みを浮かべたまま、言葉を発する。

「ダメですよ。そのお嬢さんがエンゼルに勝てる訳がないでしょう?」


「お、おい! 何言ってるんだテメェ!?」

 空河が勢い良く振り向き、叫ぶ。


「………どう言う意味ですか?」

 星野宮は静かに尋ねる。


 その様子を見ながら、左右は笑みを浮かべた。


「どう言う意味? ………簡単な事です」

 そう言いながら、影八目は指を鳴らした。


パチンッ!


「さぁ、ステージへ移動です」

 その瞬間、影八目の影が動き、『医療術式』と倒れる男子生徒以外を飲み込む。


「「なっ!?」」

 空河と星野宮はいきなりの事で動けず、影に飲み込まれる。


 左右は笑みを浮かべたまま、王を見る。

「金は理事長に請求しろ。それじゃ」

 飲み込まれる。


 森に取り残された『医療術式』の面々は、首を傾げた。











最近書き方を変えたんですよ。少し説明が多くなっているのですよ。

今までは色々と隠しすぎて中々に内容が分からなくなっていたので。

大きな事は隠しておいて、小さなその人間の心理描写とか過去とか考えている事とかそう言ったものは細かに出しているんですよ。


ですが、今回は微妙です。

ミナと天士との戦闘に持っていきたかったのですが、情緒不安定じゃない天士はミナに喧嘩売らないし、他の誰かがけしかける事も難しく。


まぁ、その為の左右なんですけどね。

次回で親玉との戦闘が始まり終わると思います。

そしてその次がミナVS天士です。


ミナVS天士の戦闘は激しさと言うか、心理描写が多くなると思います。

その戦闘でミナの事は全て暴露するつもりです。

まぁ、秘密にしている事はないのですけどね。

考えとか。色々と。


それにしても、左右と会長は本当に使いやすい。

どこでも出せるもん。

左右は適当に暴れさせて、会長は「天士ぃ~」とか言わせながら登場させれば万事OKでしょ?(笑)


それでは、次回こそは!!←なにが?

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