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One-eyed  作者: 龍門 
プロローグ =Long prologue=
2/60

Had the dream~夢を見た~

短いです。

短く行こうと思いまして。







 夢を見ていて「これは夢だ」と気付く事は良くある事だ。だが、解っていても中々覚めないのも良くある事。

 今の俺はそんな感じだ。宙を浮きながら昔の自分を見ている。

 何とも不安定な浮遊感。何時落ちても可笑しくない、そんな危うい浮遊感。


 俺が見下ろしているのは砂場で遊ぶ2人の子供。

 若干メタボの幼馴染みの女の子と、砂場で遊ぶ5歳児の俺。現在俺は16歳だから11年前の俺。


 城を作るために水をバケツで運んでいるのだが、上手く出来ずに幼馴染みが怒っている。

 短気だったな。そう言えば。


 何故11年前の事を夢で今更視ているのか、それは俺にも解らない。記憶が鮮明と言う訳では無いが、あの幼馴染みの事を忘れた事は無い。

 だがしかし、忘れた事は無い、とは言ってみるものも彼女の名前や細かな事は覚えていない。

 外面的な事でなく内面的な事しか覚えていないのだ。


 幼馴染みは俺の鈍くささに苛々してか何度も叫びながら俺に指示を出している。


 すると、公園の外に黒塗りの外車が止まった。当時の俺でも理解出来たお金持ちが乗る車ってヤツだ。

 そこから黒いスーツを着た男が数名降りて砂場までやって来る。


 俺はビビって幼馴染みの女の子の手を握り、幼馴染みは俺を守る様に前に一歩出る。

 が、幼馴染みは暗い顔をしてスーツの男達と会話を交わす。


 会話の内容は覚えていない。

 無論覚えていないから聴こえない。


 男の一人が幼馴染みの手を引っ張り連れて行く。


 攫われていく様に強く引っ張られ幼馴染みは体勢を崩しながらも振り返る。


『―――――――――――――――――――――』


 その時、幼馴染みが何か俺に言っていた。

 ………覚えていない。あの時何を言ったか、全く思い出せない。


 すると、そこで景色が真っ暗になる。

 夢の終わりら………し………い……………。
















「………何で今更」

 目を開けながらそう呟いた。


 カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる。

 布団の中から手を伸ばし、携帯を手に取り時間を見る。


 ………まだ、6時。

 早く起き過ぎた。これでは連続遅刻記録が………。

 などと下らない事を考えていたら、二段ベッドの上から声が聞こえてくる。


「へへへッ………そんな………1人ずつちゃんと相手するから………ゲヘヘヘ」

 寝言だ。


 此所は高校の寮だ。んで、二段ベッドの上で寝ているのが俺の相部屋相手。

 草島光輝くさじまこうきだ。寝言を聞いて解る通りの変態だ。


 光輝とはこの高校に来た時からの親友………って事になっている。

 実際は入学当初に一悶着あって、互いに生死を彷徨ったのだが、此所では割愛する。

 因みに俺は今高校二年だ。


 さて、皆もう知っていると思うが俺は俗に言われる能力者だ。

 RANKはⅡ。しかもⅡでも下の下だ。因みに光輝も。


 落ち零れ。そう言われる人間である。

 まぁ、気にしてはいないが。


 能力は………説明が面倒だからこれも割愛だ。


 俺は布団から出て、テレビを点ける。某テレビ局のニュース。

 それを見ながら欠伸をする。


「………二度寝でもしようかな」

 テレビを点けたまま再度ベッドに横になる。


 すると、面白い位に瞼が重くなった―――………。















 特別校舎。理事長室。


 赤茶色の机。それに向かって座る男。

 この男が宝殿高校理事長、朝部寛太朗あさべかんたろうである。


 歳は70代。

 頭は見事にハゲ散らかしている。


 朝部少し難しそうな表情を浮かべながら机の上に広げられた資料を見ていた。


 その様子を後ろで手を組み真っ直ぐに立ちながら見つめる女の子が居る。

 ブレザーを着ている為、この学校の生徒であろう。

 黒髪のショートヘア。10人中10人が振り返る程の容姿。


 朝部の目の前に立っている制服を着た女子生徒がゆっくりと口を開く。

「この2人を入れたいのですけど」


 朝部は資料に張られた写真をトントンと突く。

「この女の子はRANKⅣですから、入れる事は可能でしょうね。けれども………」

 そこで言葉を切り、もう1つの資料に貼られた写真を先程と同じくトントンと突く。

「彼では他の者が反発するだろうね」

 写真に写る人物は面倒臭そうな、開ききっていない目で此方を見ている。


「ですが、彼は自身の実力を隠しています」


「それは解りますよ。彼が此所に入る前に、私に直接言ったのですから」

 当時の事を思い出しているのか、朝部は頬を吊り上げる程度の笑みを作る。


「ならば極秘で入れます」

 変わって朝部の前に立つ女子生徒はそんな笑みを浮かべてはいない。

 どうでも良い訳ではないが、適当に流されていくのは困るからだ。


「君は相変わらず彼にご執心だね」

 朝部は片目を瞑りながら思いだして浮かべていた笑みを女子生徒に向ける。

 表情からして、何故この女子生徒が此所までその彼にご執心なのか知っているのだ。

 それを態とらしくあたかも知らない風に言葉に出す。


 その問いに、女子学生が微笑む。

 女神か、はたまた唯の性悪な笑みか? 真意を掴ませない笑み。

「えぇ。だって、彼はこの私を負かした男ですから」

 そう言いながら、生徒会会長の月柏鈴葉つきかしわすずはは自分の胸を指出した。


「たった一発。此所に一発入れられて私は負けた。屈辱を感じながらも、嬉しさを感じた。そんな感覚を、まさかRANKⅡに身を隠す彼に味合わされるとは思いませんでしたけど」

 後腐れが無いと言えば嘘なのだろうが、その状況の有無は解らないにしろ、その笑みに憎しみなどが無いのは見ていて直ぐに解る。


「ハハッ。彼も大変だねぇ。………昨日執行部部長も彼を部に入れたいと言ってきたよ?」

 執行部部長と、そこを強調して言う。


 月柏は顔を歪めた。聞きたく無かった名を聞いた為だ。

「相変わらず………情報関係は『噂部』と同等だな」


 そう呟くと、彼女はその場から一瞬で消えた。


 朝部は月柏が居た場所を見ながら、笑みを浮かべる。

「相変わらず現れるのも消えるのも急だなぁ」


 流石能力者を集める学校なのか、一瞬で目の前から消えても吃驚のビの字も無い。


 ふと、視線を机の上に置かれた資料に落とす。

 資料に書かれた人物。


 1人は星野宮ほしのみやミナ。今日アメリカの能力者育成学校『バーディア』からやって来る転入生。


 そしてもう1人は、落ち零れの天士エンゼルだった。


「フフ………君は必死に隠しているけど、私は隠す気など毛頭ないよ?」

 笑みを浮かべながら呟いた。














 夢を見ていた。

 嫌な夢だ。


 七歳の頃の夢だ。


 俺は家族でイギリス行きの飛行機に乗っていた。

 何故イギリスかと言うと、商店街の福引が当たった為だ。


 初めての海外で俺は興奮していた。図書館でイギリスと書かれた本を探して、分かりもしない事をあたかも理解しているかの様に母さんと父さんに自慢していた。何をしようか、何を食べようか、日本と何が違う?お土産は何が良いか。写真をいっぱい撮らなきゃ。

 初めてが沢山あり過ぎて、行く2日前ぐらいから寝られなかった。それ程に興奮していた。


 ―――俺達家族が乗る飛行機が堕ちるまでは。


 事はいきなりだった。飛行機の右翼がいきなり爆発。乗客はパニックに陥った。

 俺は両親に抱かれながら、泣き叫んでいた。


 神にも祈っただろうし、色々な事を謝っただろう。

 だが、矢張り飛行機は海に堕ちた。


 生存者は2名。その中に俺は含まれていない。


 実は俺は死亡している事になっている。

 俺はそこに居合わせたある組織に拾われた為、発見されなかったからだ。


 その組織の名は『隻眼の番犬ワン・アイド・ケルベロス』。

 能力者の組織だった。

 主な活動は犯罪に手を染めた能力者の排除。


 能力者、無能力者両方から嫌われ恐れられる組織。

 能力者が絡めば何処にでも現れる組織。名も組織の人間も有名だ。

 名が割れている者もいれば、顔を知られている者も多い。


 話が若干逸れた。で、どうやらこの飛行機の爆発も能力者絡みの様で、その場に来た『隻眼の番犬』の人間に拾われた訳だ。


 俺は重傷の怪我を負っていたみたいで、その影響で左目の視力を失い、その事が原因で能力を得た。と、説明された。


 俺は拾ってくれたこの組織で能力の使い方を覚えた。

 だが、訓練など生易しいモノはなかった。全てが実戦。

 俺が弱音を吐き、組織を辞めたいと言った時に俺の師が言った。


『嫌なら変わりを連れて来い。そうすればお前は自由だ。その変わり、お前が連れて来た奴は今のお前と同じ痛みを味合うが、な』


 その後の地獄を知っていれば、俺は頷いていただろう。

 だが、その当初俺は8歳だ。自己犠牲が格好良いと思って居る年頃。


 訓練と言う名の実戦を積み、15歳になった頃に『宝殿高校』の理事長の元へ預けられた。

 俺は戦争に介入するなどと言った大きな作戦には加わっていなかったから、大々的に顔や名前が知られていなかった為に学生生活を送るには差程支障は無かった。


 だけど、俺は学校に行くのは嫌だった。

 死んでいる人間。その人間がどう普通に生活するのか?


 その事を師に言ったらこう俺に言った。

『人を助ける事は誰かを殺す事だ。だが、誰かを殺す事は助ける事に繋がらない。これは矛盾なのさ。永遠と回り続ける』


 俺の尋ねた事とは全く関係の無い事だった。

 だが、俺は何も言えなかった。


 元々師の言葉は絶対で、逆らえる筈も覆る筈も無い。

 俺は渋々理事長に預けられた。


 『隻眼の番犬』として生きていた時と一変し、高校生活は生温く感じだ。

 そして、師の言っていた言葉を考える機会が増える様になった。


 誰かを救えば、誰かが死ぬ。

 誰かを殺せば、誰も救えない。


 悪を殺せば、誰かを救える様な気もする。

 だが、その悪にも家族やその者を慕う誰かがいるのだ。その者達は救われない。

 誰かを助けると、誰かが帳尻合わせの様に死ぬ。

 もしくは救った人間が誰かを殺すかもしれない。


 こんな事言ってしまえば何も出来なくなってしまう。

 それでも行動出来る奴が紙一重の善悪なのだ。


 今まで散々汚い任務をさせた癖に、良く言う。と、思った。

 その理由を今考えると、唯々師は理由を言うのが面倒だったのだろう。


 けど、まぁ休暇だと思えば差ほど嫌でもない。だから俺は全てを隠している。

 組織の人間だと言う事を。俺の能力を。言ってしまうと平穏が崩れるからだ。


 ………まぁ、結構俺の事知っている奴は多いけどな。

 俺は2、3人にしか言っていない筈だが、情報に詳しい奴は俺の外見や少しだけ使った能力だけで特定しやがるし、心を読む能力だってあるんだ。仕方はないだろう。


 けどまぁ、師は俺に平穏を与えてくれたのだ。そう思う事にした。

 元々死人なのだから、仕方の無い事だけれど。



 そこで、夢が終わった。












全然能力が使われない!そんなもんさ!!

などと開き直り。

はい。すいません。暫く能力は出てきません。

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