Is the wriggling hell peaceful?~蠢く地獄は安泰か?~
今回は敵と組織を出しました。
早めに登場だけでもさせないと後々登場させづらいので。
ですが直ぐには行動しません。
次回からまたドタバタします。
スーダン共和国・ダルフール地方。
2003年から続く紛争。
反政府組織と政府組織との衝突。
その中、異質さを醸し出す者達が銃撃戦の中に居た。
黒いコート。そのコートの背中には銀色の文字で刻まれる言葉。
『Cerberus of one-eyed』
突如現れる謎の組織。
『隻眼の番犬』
裏では有名な能力者集団。
能力者絡みの事件などに対して介入を続ける者達。
その行動は国境関係無く活動している。
組織内のメンバーも多国籍で構成されている。
そしてこの紛争にこの組織が居ると言う事はこの紛争に少なからず能力者が絡んでいると言う事だった。
現在、銃撃戦のど真ん中に立っているのは5人。
その中の1人、左目を眼帯で隠す男が煙草に火を点ける。
その様子を見ていた赤外線ゴーグルを付ける青年が言う。
「毎度の儀式ですか?」
眼帯の男は煙草を放り投げ答える。
「流儀だ」
それを聞いた赤い髪をコーンロウにしている女性が笑う。
「ハハハッ!! 流石だねぇ~渋いねぇ~」
白いマフラーを巻く女性が呟く。
「………煙草臭い………」
それに髪型がツーブロックの男が言う。
「煙草の臭いより硝煙と腐った肉の臭いの方が臭いさ」
そんなやり取りがなされている間にも、頭の上では銃弾が飛び交う。
そして、眼帯の男が口を開く。
「我々の目的は能力者のみ。死に行く兵士は横目で見捨てろ。使えるのなら盾にしろ。我々は善良な組織ではない―――」
冷酷な言葉。
そう、彼等は戦争の鎮圧に来たのではない。
あくまで目的は戦争に関わっている能力者の抹殺。
それ以外の目的はない。
それが番犬。何を守るのか?全てを謎にして唸る。
「―――10分で探し出し、抹殺しろ」
「「「「了解ッ!!!」」」」
眼帯の男以外の4人が一斉に散り散りになる。
1人残る眼帯の男は腰から拳銃を抜く。
「………アイツからすれば鉄の塊か。………だがな、この鉄の塊に篭められた銃弾は………全てをぶちまけるぞ? 天士」
眼帯の男はそう言い、拳銃の銃口を上に向け、引金を引いた。
「ハッ………クションッ!!!!」
空河が大きなくしゃみをする。
「風邪か?」
隣から鴨梨が尋ねる。
鼻を啜りながら手を振る。
「いや、完璧平熱」
「もうすぐ夏だって言っても気を付けろよ? 夏風邪が一番厄介だからな」
鴨梨はそう言いながら、鞄の中に手を突っ込んでいた。
「………何してんの?」
「ん? ………いやな、今の夏で思い出したんだけどさ………今年の………夏は………」
言いながら鞄の中から何かのパンフレットを取り出す。
そして、満面の笑みで叫ぶ。
「ジャッ! ジャジャァ~ンッ!! 『南国の島、鳥兜島!! この島で………素敵な思い出作らないか?』………どうよ? 魅力的だろ?」
青空と青い海の写真が表紙のパンフレット。それを空河の目の前へ出す。
「………『鳥兜島』? 何処よ? 聞いた事ないぞ?」
眉間に皺を寄せながらパンフレットの表紙の写真を凝視する。
「誰かの所有地らしい」
「………所有地をリゾートして貸し出してるのか?」
「そうなんじゃない? 詳しい事は書いてないので解らないけど。せやけどッ!! このパンフの写真見てみぃやッ! めっちゃそそられるやろッ!?」
興奮して関西弁になる生粋の関東人。
「そうか? てか、鳥兜って名前が毒々しい」
興味無しの空河。
「おぉ~ぅ………女の子にも興味無い。リゾートにも興味無い。………天使ちゃんは本当に高校男児かぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」
机をバンッ!と、叩き立ち上がり叫ぶ。
「そうだろうよ? てか、良くパンフ見ただけでそこまで盛り上がれるな」
空河は頬杖をつきながら欠伸をする。
「大体はパンフで盛り上がって、実物観てがっかりすんやで?」
「何だそらぁ。無駄な体力使うよ………ほれ、アイツみたいに」
空河はそう言いながら窓の外を見る。
「ん? ………あぁ~グラスかぁ。アイツ選択実技だったな」
何時の間にか関西弁から元に戻っている。
窓の外、つまりはグラウンドでは体操着を着た学生達が自分達の能力を使って何かをしている。
この学校では2つのカリキュラムが用意されている。
1つは実技。
将来能力を行使する役職に就く人間がこのカリキュラムを受ける。
もう1つは技術。
能力関係の研究、開発を主にしたカリキュラムだ。
実技は体。技術は頭と言った感じだ。
殆どの生徒が実技に流れる中、頭を使うのも面倒臭いと言う空河が何故教室に居るのか?
つまりは技術のカリキュラムを選んだからだ。
何故かと言うと、能力を使いたくないからだ。
実技は能力を使う事を主にしている為、空河は最初から技術を選ぶつもりだった。
鴨梨は体よりも頭を使う方が得意だからだ。
因みに、何故実技に流れる生徒が多いかと言うと、基本この学校では能力の使用は授業と学校側のイベント以外では禁止されている。
その為、少しでも能力を使ってストレス発散がしたいのだろう。
今グラウンドで縦横無尽に走り回っているあの草島はどうか知らないが。
「アイツの脳味噌は絶対空っぽだな」
「グラスは体動かす方が合ってるから良いんじゃない?」
「そんなもんかねぇ」
そう言いながら窓の外を見る2人。
さて、外では草島が授業を受けている。
この2人は今教室に居る。
つまりは、
「………2人共。今授業中なんだが?」
教壇に立つ教師が体をプルプル震わせながら尋ねる。
「へ? ………あぁ、ごめんね。どうも面倒臭くて。サボっちゃ駄目?」
空河が頭を掻きながら尋ねる。
「駄目に決まっているだろ………」
教師は額に青筋を浮かべる。
「なぁ~天使ちゃん。鳥兜島行くだろ? 夏休みにさぁ~」
鴨梨は未だにパンフを握りしめながら空河を誘っている。
「鴨梨。今は授業中だ。そのパンフを鞄もしくはゴミ箱の中に突っ込め」
青筋が増えていく。
「毒々しいからパス。てか、面倒臭い。海嫌い。しょっぱいから」
「高校生は無条件で海と聞いたら喜ぶのに。天使ちゃん実は高校生じゃないな?」
「授業中だぞコラァ?」
「海も山も嫌いなんだよ。俺はクーラーが効いた涼しい部屋で寝るのが好きなんだ」
「レジャー系が全部無しかッ!? 今年の夏は去年出来なかった事しようって言ったじゃん!?」
「おい鴨梨。立ち上がるな。叫ぶな。涙を流すな。そして今は授業中だぞ?」
「そんな事一言も言ってない。光輝でも誘って行けば良いだろ? それに宗次とか熊さんとか明堂とか陣内とか」
「グラスは無論行くと言った。だが、掃除機は怠いからパスと。プーさんは和菓子の何かがあるから行けないと。メイドちゃんはお前が来ないと絶対来ないし。袖ちゃんはそもそも夏自体が嫌いだから絶対部屋から出ない。さて、どうする?」
「計画立てるのは良いが、今は授業中だぞ?」
「なら2人で行けよ。高校生ぽいだろ? そして向こうで誰かナンパでもすれば良いだろう?」
「俺とグラス2人でのナンパ成功率は1割を下回っている。掃除機か天使ちゃんが来てくれないと………」
「ナンパとか良いから、兎に角真面目に授業受けてくれ………」
「嫌だ。面倒臭い。以上。先生! なで肩なのでトイレ行って来ます」
立ち上がり、手を挙げ有り得ない理由で教室を出ようとする空河。
「えぇ~天使ちゃん行こうよぉ~。あっ、先生! ドライアイなのでトイレ行って来ます!! 待ってよ天使ちゃん~」
有り得ない理由で出て行く鴨梨。
「もう………良いよ。好きにしてくれ………」
上を向いて涙を堪える教師。
教室に居た生徒達は教師を不憫に思い、顔を引き攣らせていた。
スーダン共和国・ダルフール地方。
『隻眼の番犬』介入から10分後。
「1人ずつ仕留めた数を言っていけ。ソイツの所属組織が解るならそれもだ」
眼帯の男が他の4人を見ながら言う。
最初に報告したのは白いマフラーを巻いた女性。
「………6人。唯の戦闘狂………」
次は赤外線ゴーグルを付けている青年。
「結構仕留めたんですね。俺は2人です。所属はしていなかったと思います」
次は赤髪コーンロウの女性。
「私はねぇ~4人よ。その内1人が『溶けた翼』の人間だったわねぇ~。でも、下っ端ね。全然骨がなかったもの」
最後に髪型がツーブロックの男が報告する。
「俺は2人。その内1人も『溶けた翼』の人間だった。………それと、もう1人。コイツ所属はなかったんだが」
そこで一度切る。
「………何だ?」
「………ソイツが死ぬ間際に言ったある人物の名ってのが………狂獄道眼」
「!? ………奴を崇拝する者達………通称『殺人集団』か」
眼帯の男はスーツのポケットから携帯を取り出す。
「何処に電話するのですか?」
赤外線ゴーグルを付ける青年が尋ねる。
「狂獄道が動き出したのなら、必ずあの2つの組織が動き出す。皆に知らせるだけだ」
白いマフラーを巻く女性が組織の名を呟く。
「………『雷の投擲』………『神秘なる使命』」
赤髪コーンロウの女性が少し心配そうな表情になる。
「………問題は天士ね」
ツーブロックの男が言う。
「狙われる可能性は大だな。5年前の事件で、狂獄道が天士に興味を持ったのは確実だしな」
電話を掛け終わった眼帯の男が携帯を胸ポケットにしまいながら言う。
「今から一度ロンドンへ行く。そこで手品師と人形に会って準備だ。直ぐに発つぞ」
そう言い、歩き出す眼帯の男。
それに続き、他の4人も歩き出す。
「天士の方は? 連絡しますか?」
赤外線ゴーグルを付ける男が眼帯の男の隣を歩きながら尋ねる。
「いや、天士本人には知らせない。アイツには知らせておけ」
「了解です」
歩く道は血で塗れ、倒れる者達に統一性はない。
死人を踏み、何かを守る番犬。
彼等は何を喰らうか?
戦う意味、殺す道理を求めるか?
掲げるそれは何を意味する?
隠れた眼に何を宿す?
彼等は多くは語らない。
死人に言葉は要らない。
昨日も、今日も、明日も、終わる事の無い連鎖を―――、
そして―――誰かも解らない雄叫びは、今も戦場で響いた。
開発校舎のエンジニアに支給された一室。
その一室に、2人の男が椅子に座っていた。
1人は白衣を身に纏い、胸に証明書を付けている。
対してもう1人は制服を着ていた。
「小国君は結構使えませんでしたね。もっと頑張ってくれると思ったのですが」
学生が苦笑する。
「いや、彼に取ってあの情報はそれ程価値が無かったのだよ。彼は有益と無益を履き違えているみたいだったからね。だからこそ、薬を投与したのだろ?」
白衣を着た男が笑う。
だが、声からして笑っていると解るだけで、表情は無表情だった。
「ハハッ………バレてました? 元々彼を長く使うつもりは無かったのでね。ですから下手な事を喋らせない為にも薬を投与したと言う事ですよ。まぁ、僕の予想では彼女が直ぐさま殺すと思っていたのですがね………」
白衣を着た男は無表情で下を向いたまま尋ねる。
「彼女? ………あぁ、彼女か。どうやら彼の周りには良い者達が集まっているみたいだね。早く会いたいものだ。5年前と変わっているのかな?」
「まだ会えるかどうかは解りません。ですが、近い内にとだけ言っておきます。その間は、好きにして良いですよ? 家族を呼んでいただいても」
学生はニヤリと笑う。
「………楽しみだね。いやぁ、楽しみだ。君もそう思うだろ?伏見右京君?」
「楽しみですね。やりがいがありますよ」
伏見はそう言いながら机の上に置いてあったファイルに綴じられた何かの資料を渡す。
「それは?」
「これはこの学園に居る能力者を纏めたファイルですよ。何処かの国に売れば、億は手に入れられる代物です」
「ほぉ~………まぁ、この体では私は話事しか出来ないからね。今度ゆっくり読ませてもらうよ」
「そうでしたね。だからこそ此所に侵入出来たのですけど」
伏見はそう言いながら立ち上がる。
「おや? もう行くのかい? 今から私の面白い様で面白くない話とかをしようと思ったのだが?」
「それはまた次回。では、さようなら―――狂獄道さん」
横目で見ながら、伏見は部屋を出て行った。
「今の私は、中田なのだがね」
表情では解らないが、何か楽しそうなそんな感じがした。
色々組織の名が出てきましたね。
そして登場『隻眼の番犬』!!
正義の組織じゃないのは当然ですかね。
戦争介入している時点で正義の固まりじゃないのは解りますし。
そして登場狂獄道。彼は敵と認識するのは少し安易かもしれません。
まぁ~後々様々事をして下さるので、お楽しみに。
ではでは・・・・