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One-eyed  作者: 龍門 
プロローグ =Long prologue=
11/60

Rule in this place~この場でのルール~

この話は、編集加筆で増えた話数です。







 月柏鈴葉つきかしわすずは奥出雲史慈おくいずもしじが侵入者を捕縛した頃、別れた他部隊からの通信が切れた事で動揺している最後の集団が、森を抜けた。


 表情に焦りはあったものの、仕事の終わりが見え安堵していた。

「通信が切れてどうなるかと思ったが、仕事も佳境だな」


 アスファルトの道を黒ずくめの男達が歩いている。

 街灯が照らすその姿は余りのも周りの景色と不釣り合いだった。


 ふと、風が吹き抜ける。


 すると、先程まで誰も居なかった筈の目の前に、誰かが立っている。

 反射的に銃口を向ける。


 銃口を向けられているが、現れた人物は慌てずポケットに手を入れたまま立っていた。


「お前………何者だ?」


 その問いに、突然現れた人物は面倒臭そうに言う。

「俺が名乗って、アンタ等は俺が誰か解るのか? そう言う台詞は此所では別に適切じゃない」

 男は頭を掻く。

 空河天士そらかわてんし。RANKⅡの落ち零れ。


「それもそうだな。此所に居るって事は、お前は能力者か?」

 男は少しずつ前に出る。


「そうだな。能力者で間違ってねぇよ」

 答えながら、空河は胸ポケットから煙草を取り出す。

 そして1本取り出し火を点ける。


「おいおい、学生が喫煙か?」

 男は笑いながら尋ねる。


 すると、空河は点けた直ぐにその煙草を男達の方へ投げる。反射的にライフルのグリップを握る力が強くなる。

 だが、煙草は何も起こらずコンクリの地面に落ちる。

 それを見ながら男は空河をゆっくりと見て尋ねる。

「………なんの真似だ?」


 煙草を胸ポケットにしまいながら、空河は答える。

「俺の師が、人を殺す前なんかに良く煙草を相手に投げてたんだよ。その姿が凄く格好良くてな、俺も真似したくなったんだ。まぁ、雰囲気までは真似出来ないけどな」


 そう空河が言った瞬間、集団の1人が痺れを切らせたかの様に叫んだ。

「黙れや餓鬼ッ!! お前にはこの銃が見えねぇーのかッ!! んあぁ?」

 目が完全にイカれている。


 薬で自我を失った男だ。

 何がどう苛ついているのか、叫び、前へ出る。


「おい! 勝手に出るな!」

 男は前へ出る男を止めようとする。


「鉄の塊だろ? それがどうした?」

 空河が向けられたライフルを眺めながらつまらなそうに答える。


 その態度が男の限りなく小さい理性に触れて弾けた。

「ふ、ふ、ふざけるんじゃねぇよぉぉぉぉぉッッ!!!!!!!!!」


ドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッ!!!!!!!!!!!


 ライフルの銃口から銃弾が飛び出す。

「キャハハハハハハハハハハハハッッッ!!!!!!!!!!」

 男は狂った様な笑い声を出しながら、銃を乱射した。


 その様子を見ながら、男はこめかみを押さえた。

 この時点で、隠密って言葉は消えただろう。


 それと、アイツは解っているのか?

 俺等の仕事内容が「能力者の捕縛」だと言う事を。誰が蜂の巣にしろと言う命令を出したか。


 そして、舌打ちをする。

「………チッ! 最悪だ………まぁ、しょうがない、か」

 そう言った瞬間、空河めがけて放たれた銃弾が、反射するかの様に跳ね返る。


「なっ――――」

ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!

 銃を乱射していた男やその後ろに居た男達も一瞬で蜂の巣と化し倒れる。


 それは一瞬だった。

 前へ、何の不規則な動きなどせずに放たれた銃弾の数々は、まるで磁石にでも吸い付けられる様に、逆方向へ飛んだ。


 そして、此方の男以外の人間が皆蜂の巣へと変わっていた。


「殺しはしない。てか、殺しちゃ駄目らしいからな」

 空河は面倒臭そうに説明をする。


 だが、この男に取って後ろで呻き倒れる者の安否などどうでも良い事なのだ。

「貴様………何をした!?」

 男が叫ぶ。

 優位に立っていた筈! それなのに、それなのに!! 

何をされたかも解らず現状がひっくり返った。


「お前、此所が何処だか解らないで侵入した訳じゃねぇだろ? 俺はアンタ達が求める………超能力者って類の人間だよ」


「………化け物………」

 小さく呟き、ライフルの引き金を引こうとした瞬間、


「中々面白い能力ですな」

 ライフルを構える男の後ろから声が聞こえる。


 咄嗟に振り返り、その声の主に銃口を向けようとした時、終わりを突然迎える。


「私に銃口を向けるな」

 声の主のトーンが一瞬で変わる。


 殺気。それは間違い無く殺気。


「なっ―――」


ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!!!!!!!!


 男の体から血が噴き出した。唐突に、誰も何もせずに。

 そのまま、男は前へ倒れる。何も言わさず、何もさせずに死んだ。

 男は、自分を殺した者の顔すら見ずに死んだ。末路と言ってしまうには残酷だった。


 その様子を見ながら、空河は眉を細めた。

「………能力者か?」


「ご名答ですよ。私は所謂『外』の能力者、何処に所属する訳でもない。唯の殺しを生業とした能力者ですよ」

 闇から現れたのは白いハットを被った男。


 新たに現れた男は笑みを浮かべながら足下に倒れ呻く男達を見る。

「殺していないみたいですね。私としては、殺した方が楽だと思うのですが、何故?」


「………捕縛が命令だ」


「そうですか。ハハッ! 随分器用な事をする。殺した方が、楽だと言うのに」


ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!


 倒れていた男達の体から突然に血が噴き出す。

「ほらね。簡単だ」

 笑っている。男は笑っている。


 空河は既に解っていた。

 この男は、『外』の能力者の中でもとびっきり腐った奴だと。


 リアル血の雨を降らせながら、その血を浴びて笑みを浮かべるあの男は、腐りすぎてどうにもならないクソ野郎だと。


「最悪な気分だ。………だけど、幾分楽だな」

 空河は先程投げた煙草を見る。


 血に染まり、火はとっくに消えている。


「楽? そうですか! 君も私と同じ―――」


 男の言葉を遮る様に、空河が腕を振るった。


ブシュッッッッ!!!!!

「グッウゥ!? ………これは?」

 男は自身の足を襲った激痛を見る。


 ライフル。男の右足に見事にライフルが突き刺さっていた。それは元々人体に刺さる様に作られてはいない。

 それが、見事に銃口が突き抜けている。

 どれ程の力を入れればこの様に刺せるか?


「………これで、君の能力が益々解らなくなりました。反発とか、その様な能力だと思いましたが?」


「お前の能力は、爆破か?」

 問いには答えず、問いで返す。


「その通りです。私の能力は『爆死絵図ボム・アート』と言いまして、対象の体に爆弾を仕込む事が出来、任意で爆破する事が出来る能力ですよ。まぁ、仕込む為には対象に触れなければなりませんが、それでもこの威力を見て下さいよ!! 凄まじい! 実に芸術!!」

 男はベラベラと話し始める。


 自身の力に酔うタイプ。

 自分が最強だと勘違いするタイプ。


「………お前、」

 空河が指を指す。

「一々殺した相手の数覚えているタイプだろ?」


「数ですか? 勿論ですよ! 今まで私の芸術と化した者達は此所で死ぬ者も含め109人ですよ!! ………後1人で、110人です」

 両の手を大きく広げ、まるで天を仰ぐかの如く話す。


「この侵入者と共に侵入して来たみたいじゃいが、単独か?」


「えぇ。そうですよ。依頼主は同じですがね。私は一応保険と言う事ですよ。まぁ、情報を漏らす前に殺せと依頼主から言われているので、殺したって事で良いですかね」


「………そうか」

 空河は耳に付けた拡声装置の電源を落とす。

「先程、楽って言ったよな?」


「そうですね。あれはつまり、君も私と同じ。と、言う事ですよね?」

 何が嬉しいのか、男は笑みを浮かべる。


「………いいや、違うね」


「………では、どう言う意味で?」

 男の雰囲気が一変する。


「………テメェなら、殺さずってのが該当しねぇって事だよ」

 その瞬間、


 ブシュゥゥゥゥウウウゥゥゥゥウウウウッッッッッ!!!!!!!!

「げほッッ………な、に?」

 口から血を噴き出す。


 背中から何か刺された。

 それは何か。黒く鈍く光るそれは鉄の塊。足に刺さるのと同様。侵入者が持っていたライフル。


「お前はどうやら、井の中の蛙らしいな」

 ポケットをまさぐりながら、10円玉を取り出す。


「ベラベラ自分の能力の欠点喋る時点でアウトだろう? テメェの能力は相手に触れなければ使えない。それが解っていて俺の前にノコノコと現れたのか? 馬鹿だろ?」

 10円玉を指で真上に弾き、キャッチしまた弾く。


「それに、テメェ殺しても他の侵入者から情報聞き出せば此所へテメェ等を送った依頼主に繋がる」


 10円玉が掌に収まる。

「それと、死を芸術って言っている時点で、お前は既に終わってる」


 10円玉を男へ弾く。

「語るな。これは鉄則なんだけどな。まぁ、俺は喋る派だけど」


 地面へそのまま落ちる筈の10円玉が、まるで銃弾の様に男めがけて飛ぶ。


 男は悟った。死ぬ。と。

「嫌だ! 嫌だ! 嫌だぁぁぁああぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああああッッッ!!!」

 叫ぶ。余りのも惨め姿。


「「死を受け入れるな。だが、生にしがみつくな」これは俺の師の言葉だ。あの人も、結構語る口だろうな」


 10円玉の軌道は確実に、男の額を狙っていた。


「嫌ぁああぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!」


ペチン―――、

「………へ?」


 確実に額を突き抜ける程の勢いだった10円玉は、男の額に当たっただけで止まった。

 デコピン。それ程度の痛み。


 男は訳が解らないまま、空河を見ようとした時、

「オヤスミ」

 何時の間にか移動し、男の真横で殴る体勢を作っていた空河。


「へっ、ぶごへッッ!!!」

 顔面を殴られ、そのまま地面を転がり倒れる。


「郷には入れば郷に従え。殺さずだからさ、殺しはしない」

 肩を回しながら欠伸をする。


 能力者以外は死亡。

 脈など確認せずとも、即死だろう。


 眉間に皺を寄せる。

 見慣れている。だが、それでも嫌なモノだ。自分が生かそうとした者の死体を見るのは。


「………死、か」

 感情が揺らぐ。唐突に殺さなければと言う衝動に駆られる。


「相変わらず、俺の能力は燃費が悪い………」

 軽い口調で言うが、表情は芳しくない。


 攻撃を受けたか?いや、無傷だ。

 それでは何か?空河はその“何か”を必死に押さえていた。


 そんな中、辺りに気配を感じた。空河はゆっくりと息を吐き、その者に話しかける。

「覗きですか? ………小国先輩」



「人聞きの悪い事を言わないで欲しいな。君の側に能力者が居ると解り援護しに来たんだぞ?」

 森の中から眉間に皺を寄せながら小国が現れる。


「ご自慢の『状況把握アスペクト・グリップ』ですか。広範囲渡り領域を広げ、その中の全てを把握出来る能力。ご自慢のストーカー能力ってね」

 馬鹿にしている範疇を出た挑発。


「貴様………これ以上俺を馬鹿にしたら唯では済まないぞ?」

 小国が震えながら睨み付ける。


「その目………俺は何度もその目を感じた。正確には、殺気を」


「何を言っている?」

 先程の睨みは若干ながら薄れていた。


 空河はそんな事は気にせずに述べていく。

「俺ってさ、腹芸とか得意な方じゃないんだよな。それと敬語も。だから今から述べる事は俺の勘だ」


「だから! 貴様は何を言っている!!」

 小国の表情には焦りがあった。


「まぁ、簡単に言えば。アンタ、会長が絡むと必要以上に俺に当たるよな? そして、その時のアンタの目、異常だぜ?」


「………………」

 小国は黙る。大人しく聞いているのではない。反論の言葉を探しているのだ。


「………嫉妬か?」


「なっ!?」

 図星。


「どうやら、色々としていたみたいだな」

 そう言いながら、空河は思い出していた。此所に来る前。正確には『生徒会』での作戦会議擬きが行われた後。


 自身の寮の部屋で交わされた会話を。








 寮に戻って部屋に入ったら草島光輝くさじまこうき鴨梨元かもなしはじめがテレビを観ていた。

 何故? と言う疑問を言わずにベッドに腰を下ろす。


「………随分大変な感じだね」

 鴨梨が不意に言ってくる。


 惚ける事は出来たが空河は知っている。鴨梨の情報網の凄さを。

 此所でシラを切っても意味は皆無だろう。てか、シラを切る必要が無い。


「まぁ、な」

 短く肯定する。


「余計な事は言わないけどさ、気を付けろよ? 最近お前と生徒会会長の仲が良いなんて噂が流れているからな」

 草島が頭を乱暴に掻く。


「そう言う噂は何処から流れるんだ? イマイチ発信源が解らない」

 空河がテレビのチャンネルを変える。


 それを直ぐさま鴨梨が戻す。

「あぁ~四季波の話だと発信源ぽい奴は2人らしい」

 草島がそう言っている間にも2人はチャンネルを変え続けている。


 だけれども気にせずと言った感じで続ける。

「1人目は『生徒会』の小国章吾おぐにしょうごだ。んで、もう1人目が伏見右京ふしみうきょう。表の狩人『執行部』様だとよ」


 それを聞いてやっと空河がチャンネル争いから手を引く。

「多分だが後者は違うな。伏見さんがやるならこんなちゃちな事じゃなくて、もっと俺を抹殺するぐらいの事をしてくるだろうさ。だから可能性としたら前者だ」


 チャンネル争いに勝利した鴨梨が尋ねる。

「季節ちゃんがその2人を挙げたんでしょ? なら可能性は大だ。それに季節ちゃん可能性が在る方を先に言う癖があるから、多分その『生徒会』の奴だろうな」


「何か嫌な予感がする。人殺しになっちゃいそうな予感だ」

 そう言いながらベッドに潜り込む。


「嫌な予想だなぁ~………てか、寝るの早いだろ?」


「集合が在るんだろ? 大変だねぇ~頑張れ天使ちゃん!!」

 無関係の2人は適当に応援した後、黄○伝説を見始めた。








 ………少し必要の無い事も思い出したが、それを聞き、今までの小国の行動に何となく合致する。


 嫉妬。そこから来る妬みを通り越して殺気。


………堕ちたな。

 超えてはいけない一線だ。小国はそれを踏み越えている。

 空河は胸ポケットから煙草を取りだし、火を点けた。


「………良く解ったな」

 そう言いながら、小国は腰から拳銃を抜いた。

 表情には笑み。それはドス黒い笑み。


「今、言う事じゃないかもしれないが、俺はお前を殺してしまいたい程嫌いだ」

 小国は笑みを浮かべたまま顔を歪めた。


 それを見ながら、空河は火の点いた煙草を小国に向かって投げ、言う。

「………俺も、アンタが嫌いだ」


 空気が、変わる。








能力者&小国の能力名を出しました。


何となくですけどね。

編集前は結構雑だったんで。


それと、殺しは無しに。

この場ではね。

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