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9_1学期の期末テスト




「ふんふん……。わかった」

「え? 何を? 光海さん?」

「アンタが何で特進クラスに入れなかったかがよ、正時」


 僕のノートに目を落としていた光海さんがそう言う事を言った。


 6月下旬。僕の1年生としての1学期も終わりが近づいてきて。

 もうそろそろ、1学期に学習したことをまとめる、期末テストの時期になる。

 と言うワケで、僕と光海さん、それに水樹は。

 図書室に集まってテスト勉強をしていた。


「……どういうことなんです? それ。浅見先輩?」


 水樹はキョトンとした顔で。なんでノートを見ただけでそんな事がわかるのかと、問いたい様子。


「簡単なことよ。もう、ノートのつけ具合から見ても。得意教科の数学と現国には熱が入っているけれどさ? 社会科系の地理とかは、まあ適当につけてるし。英語に至ってはもう壊滅的ね。正時、アンタさ。暗記教科が大っ嫌いでしょ?」


 うわ……。めっさ読まれてるじゃんか、僕の勉強の傾向を。ノート読んだだけで、そんな事がわかるのか……。


「うん……。そうなんだ、光海さん。僕はアレなんですよ、実は記憶力がないというか。興味のある事柄にしか、頭が働かないタイプで。面白味が感じられない暗記教科はどうにも苦手なんです」

「あはは。わかるわかる。私も中学生の時はそうだったから。でもねー。実際の所、世の中って所では、というか。学校の勉強もそれなんだけど、さ? 『いやなことをどれだけ効率的に熟すか』っていう能力やスキルは。持っていて無駄にはならないし、むしろそっちの能力の方が必要とされるという一面がある事は。否めないのよ」


 購買で買ってきた500ミリリットルの紙パックレモンティーを、ストローで飲んで一息ついて。

 そのあと、光海さんは。例の悪戯そうな猫みたいな視線で僕の瞳を覗き込んだ。


「で。いいのかな? 正時。云っとくけど、アンタさ? その苦手を克服しないとね? 蔵山ちゃんと同じ大学を目指したとしたら、見事に受験失敗する事になるわよ?」

「それ困る!!」


 光海さんの問いに対し、ちょっと大きな声を放ったのは。僕ではなく水樹だった。


「正時って、実はよく見ると。結構カッコいいし。優柔不断かと思ったら、ちゃんと色々自分で決められる判断力あるし! この前、デートしたときにも。イタリア料理の店で、メニューオーダーを任せていたら、結構おいしいもの食べさせてくれたし!! 他にもいろいろ、彼氏としてのスペック高いから、大学も一緒に行きたいのよ!!」


 水樹はそんな事言ってる。


「は? イタ飯行ったの? アンタたち二人で⁈」


 あれ? なんか目が怒ってないか? 光海さん。


「はい。行きましたよーだ!!」


 光海さんに向かって、舌を出す水樹。

 あー。なんだこの二人、やっぱり。僕が間に挟まる事案になると、ちょっと荒立った心理状態になるのか。

 まあ、それは多分アレだなー。二人が僕を取り合ってる、とかいうどこぞのライトノベルの内容みたいなことではなく。

 女性というモノは。男性を間に挟むと、対抗心が湧いて当然という、動物の生物学的本能の方に近いんじゃないかとか。

 そう僕は思った。


「わたし……。フォカッチャピザが大好物なのに……。まあ、流石に。連れてけって言って、アンタらのデートを邪魔する気はないけどさ……。あーあ。また、彼氏作ろうかな、私。前の男を振ってから、まあ結構間が開いてるし」


 え? 光海さん彼氏作るの?

 ……都合のいい話だけど。水樹と交際している僕に、そんな事を強制する権利はないんだけど。

 僕は、光海さんには彼氏を作ってほしくなかった。

 なんていうか、自分のわがままさには呆れるような気もする。


 でもなんだろうか。

 僕は実際、光海さんには絶大な好意を持っている。

 でもでも、だけど。

 その感情を口にして、光海さんを縛ったりしたら、さ。

 シビアな生き方を自分に課している、そういう光海さんから軽んじられそうなので、僕は喉まで来ていたその言葉を、飲み込んだ。


   * * *


 駅前のアーケード街。喫茶店『ウィル・ベルジュ』でのアルバイトは、テスト前のこの時期には休みを取っているので、図書室での勉強会が終わると少し時間が空く。

 と言うワケで、いつもはアルバイトの時の賄いを夕食にしている僕らは、お腹を空かせてアーケードを歩いて、夕食を『かつ処佐渡(さわたり)』というお店で食べることにした。

 まあ、普段のアルバイトでの稼ぎで、こういうちょっと値が張るお店にも入れるようになって。流石に制服のままなので、大人の人たちに『最近の子供は贅沢だな』と云われるようなことがあることも知ってはいるけれど。

 学校制服での入店お断り、とお店にルールがあるわけでもないし、お金も自分たちの正当な労働で稼いだものなので。

 僕らは堂々とそのとんかつ屋に入って行った。


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