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貴方にキスを施して

これでお終いです。

お疲れ様でした。


この後あとがき書きますね。

彼の指をそっと包み込み、ゆっくりの唇を近付ける。近づく事に、肌の質感が、キメが目に入る。骨ばった彼の指幾度となく私に触れた指。

目を閉ざす。其れからゆっくりと唇を押し付けた。

彼の指先は冷たかった。けれどもその心が暖かい事は誰よりも私がよく知っている。

手首。陽の当たらない生白い素肌。青白い血管が何本も通い、指先へと通じている。ある意味急所とも取れる場所を撫で、同じ様に唇を押し付けた。

指先程ではないが、やや冷たい。私の唇の温度が移って、溶けて行く様だった。

其れから私達は何も言わずに見詰め合う。彼の表情は繊細だった。伏し目がちで憂いを帯びていて、其れ故に引き寄せたくなるほど。

だから私は彼の顔を包み込み、安心指せる様に頬を滑らせる。滑った指は首を辿り、指に僅かに力を入れる。……屈んで欲しいのだ。少し背が高いから。

彼はそんな私の心情を察してか、前屈みになった。前髪を指先で払い除け、顕になった額を撫でる。僅かに硬い骨の感触。その上に柔らかい肉の感触。触れ合う寸前に目を閉じて、唇を押し付けた。

頬。彼がしてくれた様に半面を覆い、そのま流れる様に唇を押し付ける。

柔らかい肉の感触。埋もれる程に、人体で柔らかい部分の一つ。

「じゃあ次、唇ね。目を閉ざして」

「怖くはないか?」

「ないよ。全くない」

暫く見詰め合う。洋画の一幕の様に。先に目を閉ざしたのは彼の方だった。

長い睫毛、つるりとした素肌、それらが指を通じて伝わってくる。そんな彼の体温を感じたまま、私も目を閉ざした。真っ暗闇の中、彼の顔を包んだ指の感触のみを頼りに顔を近付ける。

ふと感じる柔さ。体温。この時、私は彼とキスをしたのだと判断した。

顔を離す。唇に冷たい冷気を感じて目を開けると、彼が此方を見詰めていた。

「有難う。これまで待っていてくれて」

その言葉に、彼は答えなかった。ただ黙って腕を回し、私を抱き寄せた。初めてキスをした時の様に。それが全ての答えだった。彼の返事の全てだった。

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