気を遣わせてごめんね
短編
そっちの顔のが好き
です。
「じゃあ兄ちゃん、ゲームしよう」
弟は目を爛々と輝かせながら、彼の手を引っ張る。弟の向かう先は二階へ繋がる階段だった。
元々、彼が家に来ると伝えた途端、自分が持ってるゲームソフトを厳選していたし、こうなるのは明らかだった。
が、今の問題はそこではなく彼の方。弟と母が引き止めた時、やや負い目がありそうだったし、その良心につけ込んで、弟の面倒を見させるのも気が引ける。
「あんまり迷惑掛けるんじゃないよ」
「そういう姉ちゃんだって、さっきまでずっと兄ちゃんの事、独り占めしてたじゃん」
先程まで誰よりも迷惑を掛けた事もあり、其れを言われると何の反論も出来ない。弟と無言の睨み合いが続く中、仲裁に入ったのは他でもない彼だった。
「いや、夕飯ご馳走になるし、俺で良ければ。其れで良いか?」
弟の視線が晴れやかなものに変わる。どうやら今ので納得したらしい。
「じゃあ早く二階行こう!!」
「もう少しだけ、姉ちゃん貸してくれるか? それまでゲーム選んで待っててくれ」
弟の視線に合わせて膝を折ると、言い聞かせる様にそう言った。弟はその問い掛けに大きく頷くと、すぐ様私達の間を走り抜け、振り向き様に声を上げる。
「じゃあ終わったらすぐ来てね!!」
そう言って二階へと姿を晦ませる。次に颯爽と歩き出したのは母だった。
「悪いね」
淡々とした声でそう言って、リビングへと姿を消す。そうして廊下に残されたのは私達二人だけになった。しんとした静寂が私たちの間を包み込み、二階にあったぎこちない空気が降り注ぐ。
「……悪いな。五時以降も此処にいて。お前にも、お前の家族にも気を遣わせて」
彼の口から零れたのは謝罪の言葉だった。非はどう見ても此方にある。彼が謝罪する場面は何処にもない。だからこそ顔から血の気が引くのを感じた。
「寧ろこっちの方が気を遣わせてるよ。無理に引き留めてごめんね」
私の家族が居たら、彼も気を遣うだろうに。増して今までの様な関係では無いのだ。恋人同士になったのだから、それなりに緊張もしている筈。そこは本当に申し訳ない。
けれども彼は静かに笑って、抱えていた袋に視線を移す。
「戦利品も貰ったからな。その恩義は返すよ。ところで、お前は何を貰ったんだ?」
そう言えば、彼が何を貰ったか見てなかったな。
「熊の女の子の縫いぐるみだよ」
私は袋から熊の縫いぐるみを取り出した。ストロベリーブロンドのくるくる巻き毛、頭にはリボンが乗っている。腕に抱えると思ったより大きかった。丁度胸を覆うぐらいのサイズがある。
となると彼が何を貰ったかも当然気になる。そんな私の視線を受けて、彼は中身を取り出した。
「へへへ。可愛い」
彼が取り出したのは、私が貰ったものと対となる熊の男の子。此方はミルクブロンドのくるくる巻き毛。リボンは流石に着いてない。
今になって母の言葉を反芻する。『模造品だろうが、関係ないだろう?』。確かに模造品だ。けれども似せて作ってある分、本家と同じくらい可愛らしい。
「とりあえず、祝福されていると思って良いのか」
「そうだよ。だからあんまり『借り』とか言わないでね」
彼に対して強い恋愛感情は今は無い。其れこそ、この子たちの様に『模造品』の関係だ。それ故に彼を傷付けた。でもだからと言って諦めない。次こそ自分からキスするんだ。
そうしんみりと胸に抱えた縫いぐるみを撫でていると、彼が悪戯っ子の様に口角を上げ、自らが持っていた熊の男の子を私に差し出した。
「でもまぁ、もう一つ借りを作らせて戴くとして。交換しよ?」
「うん?」
虚を付かれたのも束の間、彼の顔がぐっと近付いて、耳元で囁かれた。
「お前だと思って大切にするから」
急激な体温上昇を感じる。それこそ耳まで血が上るくらい。彼も其れに気付いてか、さらりと身を交し、くつくつと笑う。
「泣くよりもそっちの顔のがずっと好き」
そう言って、彼の手によって縫いぐるみは交換された。それ以外の事は全く覚えていない。
あのね、作者、君のこと男前だと思って書いてるの。
絶対に女の子、『格好良い!!』って思ってくれると思ってるの。
というか、これで『彼氏にしたい男』じゃなかったら、誰だって話なの。
え、プロットタイプの諭羅とか、瑠衣とか?
彼奴ら創作以外には全く興味ないから、ランク外だと思うの。
という訳で、何もなさらなくて良いので、『この子格好良い!!』と思ったら心で握手しましょうね。
美味しいお酒(苦手なので、珈琲か紅茶)が飲めますよ。




