昔からの悪癖な様で
短編
死ぬまで欲しいものは手に入れる
が元ネタです。
昔から親同士が仲良くて、異性同士であっても互いの家でよく遊んだ。そして同い年ではあるが、昔から俺に対してよく気を使う奴だった。
何が欲しい? 何が食べたい? 何処へ行きたい? 何がしたい? 其れらを全て、自分の意見を宣言することなく俺に聞いてきた。
――お前はどうしたい?
――私はどっちでも良いから。君が好きな方選びなよ。
これが彼奴と俺との日常会話だった。
そんなある時、こんな出来事があった。彼奴の家で遊んでいた時のこと、彼奴は母親からお菓子を受け取り、迷わず俺の方を見て問いかけてきた。
「君、どっちが食べたい?」
手にしているのはチョコを纏ったスティック菓子と、同様のプレッツェルスティックだった。
今の今まで俺が好きな方を選んで来た。何時だって彼奴は自分の気持ちを押し殺して他人を優先させてきた。過ぎたる好意はそれだけで負担になる。だから俺はこう問い掛けた。
「そうやって何でも俺に譲る癖、やめろ」
「でも私が選ぶより君が選ぶ方が幸せじゃない? せっかく貰えるんだから好きなの選びなよ」
不快感を全面に押し出して相手を睨むも、『どうして怒っているか分からない』と言った様に首を傾けるばかりであった。
「もしかして、どっちも好きじゃない?」
「そうじゃない」
「じゃあ選びな。私はどっちでも良いし、私が選んだ後に君が食べたくないもの選んで残念がるの見るの嫌。そっちの方がずっと何より嫌」
何だよそれ。『どっちでも良い』ってなんだよ。『残念がるの見るの嫌』ってなんだよ。其れはお前の意志を殺してまで尊重される様なことなのかよ。
そう俺が叫んでも、此奴はきっと理解しないのだろう。類稀な自己犠牲精神。其れこそが此奴の当たり前なのだから。
俺は渋々チョコスティックの方を選んだ。袋を破り、半分程取り出して相手に渡す。
「そ……そんなに要らないよ!! 君の分無くなっちゃう」
「半分こだよ。半分こ。分かったら受け取れ」
そう詰め寄ると漸く満面の笑顔で納得してくれた。其の優し過ぎる悪癖は未来で大きな傷を負うとこになるのも知らないで。
だからその自己犠牲精神を俺の手でどうにかしてやりたいと思った。何とかして少しでも我を通してくれるようになれば良いと思った。
これを書くに当たって、遅生まれ設定は消してます。
あんまり関係しないし、お読み頂けると分かりますが、身内には結構暴君なので。
長篇難しいよぉ〜!!
これは比較的、まとまったけれども!!