追突
短編
私も行動したい
です。
「また、食べさして」
「勿論だよ」
「帰ったら次のデートでも考えるか。次は俺が考えるよ」
彼と食事を済ませて帰る途中、ずっと考えていた。『お食べ』という行動を自分からしたのは良かった。少なくとも自分から行動出来た様に思う。
けれども想像を超えた迫られ方をされると戸惑ってしまう。先程で言うところの“お食べの序に指先にキス”これも想像を超えた彼の行動だ。
分かっていた事だが、水族館で別れた時も、家に招いた時後ろから抱き締められた時も、凄く……ドキドキした。吊り橋効果かも知れないが、それでも自分から意識を向けさせるには良い方法だと思う。
けれどもそれは自分からではなく“彼が”起こした行動だ。何でも人任せにするのは好きじゃない。相手ばかり我慢させたり、頑張らせるのは性に合わない。
だから今度の目標。自分から抱き締める。キ……キスは……その山を超えてから……。
気が付いたら玄関の前に立っていた。意を決して扉を開ける。私から入って、次に彼の体が入る。それを何気なく確認した後、ガチャンと玄関の扉が閉まる音がした。
「鍵、掛けとくから」
「……有難う」
今だ!! 彼の半身が此方を向いた時、地面を蹴り上げて彼の体に飛び付いた。そのまま体を押し付けて、彼の体に腕を回す。怖気付くな。驚くな。私だってやれば出来る!!
彼にとっては突然の事。だから私を受け止めた彼の体はふらりと蹌踉めいて、玄関に押し付けられる。不味い、加減誤った。
「ん? どうした? 幽霊でも出たか?」
「あ……御免なさい」
君とキスする前段階として、抱き締める事から始めました。ただ気持ちばかりが先走り、勢い余って玄関に押し付けてしまいました。本当に御免なさい。次回はもっとスマートにします。
「君が来た時、抱き締められて……凄く……ドキドキしたから……私もと……思いましてぇ……。ただ力加減間違えて……。本当に御免なさい…」
訳は話した。取り敢えず距離を取ろう。それから深深と頭を下げよう。けれども彼の腕が背中に回り、中々距離が取れない。
流石に怒られるかと思った。相手とってはいきなりタックル噛まされた様なものだし。けれども彼が行った行動は想像に反したものだった。
「自分から抱き締めようとしてくれたんだ。何それ……すげー嬉しい」
彼の腕に力が籠る。少し前屈みになって、耳元に顔を近付ける。離す気はないと体で感じる。
こんな優しい彼にこれ以上悲しい思いをさせる訳には行かない。その為に、彼の恋人としての最終地点を知らなければ。
「部屋に戻ったら、質問をします」
「お前、緊張してるだろ。大丈夫か?」
「大丈夫!!」
緊張が何だ!! 彼は緊張以上に色んな思いを抱えてるんだぞ。
ヘイト調整が一番ですかね。
理由の説明と、お詫びを入れておきました。
良い子ならちゃんと相手に伝えられる様にならないと。
という私の考えから。
お兄さんの性格ガシガシ悪くしてるのに。
彼が彼女に激甘なのは、待ち侘びた反動から。
『今まで怯え捲ってたのに、自分から……(⊃-^)ホロリン』
という嬉しさを噛み締めているから。




