拒まないだけで
短編
恋愛感情なくない!?
の物凄い序盤です。
彼とのファーストキスは優しさに満ちていた。ただただ相手を気遣う優しさだけが胸を満たし、緊張に緊張を重ねたのが嘘のように感じてしまう。ただその反動かお腹が空いた。
「お昼は冷蔵庫漁るなり、作るなり、お金置いて置くから好きにして良いって。折角だから外に食べに行こう」
「ああ。……またあの人に借りを作ったな」
家に着いた時も言っていた『借り』。彼がこの言葉に拘るのは、私が知る限り母に付いてのみ。確かに母は興味のない人々には冷淡である。其れはきっと彼も知っている。だからこそ、その認識を言葉だけで変えるのは難しいのだろう。
二人仲良くリビングまで降りると、テーブルの上に封筒を発見した。中を覗くときっかり三千円が収まっている。
「何処行く? って言ってもこの間のファミレスしかないか」
徒歩で行ける範囲で思い当たるのは、やはりあのファミレスだった。振り返って見ると、これからの事、発展に繋がる話をする場所でもあった。そして今、ファースト・キスを終わらせた後も私達はあの場所へ向かおうとしている。非常に感慨深い。
「へへへ……」
「どうした。突然」
「いや、こうやってまた何か変化を得る度に、あの場所にお世話になるんだなって」
上手く言葉では表せないけれど、こうやって思い出が積み重なって行くのを感じると、心が温かくなる。勿論あのファミレス意外でも、重ねていくつもりだが。
一人喜ぶ私を彼は静かに見守っている。そこに何処か哀愁を感じ、ふと我に帰る。
「あ、ごめんね。一人勝手にはしゃいで……」
「何でも良いよ。お前が自分を殺す事無く、気ままに生きてくれたら。そしてその礎が俺であれば。なんでも……」
またその言葉。私を気遣ってばかりの言葉。けれどもそうなると彼の心は何処にあるんだろう。
心配になって彼の顔を覗き込む。彼も目を逸らす事無く此方を見詰め返す。其れからそっと私の頬に触れた。髪を撫で、耳に引っ掛け、首を辿って離れていく。
「こうやって拒まなくなってくれただけで御の字。嫌がられたら、俺からは何も出来ないから」
「あ……」
「……そろそろ飯にするか」
バツの悪そうにそう言って、彼は歩き出す。私も其れに倣って追い掛けた。今までの様に。今までの恋愛行動の様に。
ファーストキスをした時の感想って、こんなほのぼのしているのかという疑問。
でも此処、布石だと思っているんですよ。
其れこそ、過去編の告白と同じくらいの。
彼も彼女も其れに気が付いてないだけで。
周りは気付いているけども。
『拒まれたら何も出来ない』という言葉、彼は深い意味は無い状態で言ってます。
が、これ彼女にとっては地雷。
負い目とか、気にしている事項なんですよ。
『私が拒みまくってるから、やっぱり気にしてる? 気にしてるよね!? ( 'ㅂ')ヒッ』
という内情。




