ゲーム開始
短編
ファースト・キス
です。
人生の初めてというのは、大切にされるものだ。一番最初だからこそ、他は後続にしかならない。上書きする事でしか出来ない。だからこそ神聖視される。
あの水族館で間接キスを行ってから、随分と待たせてしまった。そして私は腹を括った。
『掛かって来い。私は逃げない』そんな思いを込めて、チョコスティックを彼が咥えるのを眺めていた。伏し目がちの瞳が顔に翳りを与え、一種の哀愁を醸す。一服でもした様な大人びた雰囲気に思わず息を飲んだ。
「ん」
私の方を向いて、唇だけを器用に動かし、先の方を振る。『お前も端を持て』というのは直ぐに分かった。だからチョコが掛かってない部分に口を付ける。
ゲームが始まる。そして私は彼に口付けを落とされる。
其れは静かに始まった。カリカリと軽い音を立てて、互いの顔の距離が短くなっていく。あと数センチ、あと数ミリ、あと一秒と掛からないうちに私達は触れ合う。其れを見越して黙って目を閉ざした。今まではあれ程緊張していたのに、今は不思議と何ともない。ただ彼の其れを受け入れる。
闇の中でまず感じたのは、やわこい弾力からだった。次に骨ばった指が髪を撫でる感触。薄らと目を開けると彼の顔が至近距離あって、また瞼を閉ざす。
彼が丁寧に手順を踏んでくれたからだろうか。あれ程強ばっていた癖に、今は全くない。それ程までに気遣いを感じさせる。
合わせること数秒、唇の感触が冷たい空気に変わる。彼の顔が離れたのだ。瞼を開けて確認すると、彼の体躯が近付いて来る。幾度となく私を抱き締めた男の体躯。其れが私をすっぽりと包み込む。
「有難う。キス……させてくれて」
「御礼を言うところじゃないよ。寧ろ私の方が『ごめんなさい』だよ」
あれ程待たせて。随分待たせて。
私も彼がしてくれた様に髪を撫でる。優しく、落ち着かせる様に。
しかし今まで緊張で張り詰めて、優しさで解れて、随分と気が抜けてしまった。
「このまま……お」
「ん? どうしたの? お腹空いた?」
あ、其れは私の感想か。
「いや……何でもない」
彼の言葉の続きは紡がれる事はなかった。抱き締められたまま時計を見ると、もうすぐ正午を迎えようとしていた。
長かったねぇ〜。本当に長かった。
幼少期からずっと好きで、告白までしたけれど、鈍感故にスルーされ、機会伺っていたら、別の人にトンビされ、我慢して静観していたら、相手失恋で泣くし、デート連れてっても中々意識してくれないし、意識させて迫ろうとしたら怖がられるし。
……言葉にすると本当に長いな……。
……え……闇堕ち一歩手前……?
作者的に、彼、彼女共に男女共に人気出そうなキャラだと勝手に思ってます。変な癖がない。
プロットタイプの瑠衣たんとキョーカは変な癖しかない。お兄さんは女性ウケはしそうだけど、同性からしたら何か気に触りそう。
女子でいうぶりっ子みたいな感じで。
男女共に、人気キャラを好きになった事が無いので、よく分かりませんが。




