ゲームしよう?
短編
キス慣らし
です。
私はキッチンで二人分のグラスと麦茶を用意しながら延々と思考を巡らせていた。顔がまだ赤い。頬も、耳も、瞼も、しっかりと血が通い、体温を上げる。触れなくても分かる事だった。
彼の言う『抜けてて心配』というのは、きっとこの事を指しているのだろう。
……油断した所を刺される……。
けれども油断した時点で気を付ける事など出来はせず、結局はこの後も彼にされるがまま、翻弄されるのだろう。それでも怒りや悲しみが湧かないところは、彼の気遣いから来るものだろう。
戻ったら何の話をしようかな。前に来ていた様に漫画を読んだり、弟の相手をさせたりするのはやはり違う訳で……。戻ったら聞いてみよう。何するか。
部屋に戻ると彼は中心で脚を崩していた。目の前に麦茶を置くと、ビニールの袋を渡す。
「有難う。これ、お菓子」
「有難う。見ても良いかな?」
彼から受け取ったビニールの中を覗くと、スティックチョコが幾つかとスティックプレッツェルが幾つか。何方も私が好きなお菓子。
懐かしいなぁと思う。よく母がクレーンゲームで取ってきたお菓子の中に、こういったお菓子があった。そして二人で分けっこしたものだった。
そこでふと思い付いた。今までは中身を半分こしていたけれども、今は一本を半分こスれば良いのでは? つまり○ッキーゲームでもすれば良いのではなかろうか。
「じゃあ○ッキーゲームしよう」
「いや、待って」
予想外の発言が飛んで来て、思わず目が点になった。
君も少なからず○ッキーゲームをするつもりだったのでは? 今までもさっきも積極的だった。だから今回も迷わず賛同してくれるかと思ったのだが……。
「別にお前とキスするのが嫌って訳じゃない。ただお前、キスされるの慣れてないだろ」
其れはその通り。この間迫られた時も硬直して彼に気を遣わせてしまった。恐らく彼はその事を気にしている。
けれども頭が回る彼の事だから、チョコスティックを持ってきたのも何か理由があるのではと思ってしまう。
「だからまず、指、手首、額、頬、其れからこれ」
彼はチョコスティックの箱を上下に振る。
「○ッキーゲーム」
前にも出てきた、〇ッキーゲーム。
権利の問題を考えて、一文字目は伏字にしてます。
突然迫られてビビり散らかすならば、段階踏んで迫れば良い。という彼の判断。
いきなりは迫らないよ。という意味です。
でも絶対ベタベタはしたいので、彼女がビビっても絶対やめません。
頑張れー。




