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計算高いね、若造

短編

知らぬ仏より馴染みの鬼

です。

娘が騒がしい音を立てて階段を登り、これまた騒がしく弟と喧嘩をしたのと思っていたら、何やら奇怪な貼り紙を貼り付けていた。タイトルは『恋愛三ヶ条』。

昔から何かで頭が一杯になると、不可思議な行動に及ぶところは余り変わっていない。一生懸命なところは非常に評価出来るが、行動原理が理解出来なかった。だから問い詰めると、私の友人の息子である若造と付き合う事になったらしい。

娘や息子はお人好しで純粋である。故に気が付いて無いようだが、中身は私によく似て冷酷で冷徹。目的の為ならば何でも利用出来る様な輩である。同族だから、隠していても良く分かる。

友人の息子でありながら、私への菓子折りや挨拶を忘れなかったのは、単純に自分を認めさせる為。息子の相手を頻繁にしていたのも、恐らくその方が都合が良いから。全く計算高い。

そして最近娘の元気が無かったり、戻ったりの一因を担っていると私は予測している。そうまでして娘が欲しいか? 若造。

けれども娘はお人好しである。自分より他者を優先出来る上、悪意にはとんと疎い。故にあの子の代わりに悪知恵が回り、かつ問題をあの子の気付かないところで問題を処理出来る能力な輩をが伴侶に相応しい。よって、何処の馬の骨かも分からぬ輩に嫁に出すよりも、馴染みの鬼に渡した方が安全だと判断した。

だがまぁ、一応最後の一手を推し進めるには私以外の判断も必要だと感じた。

「なぁ、お前。『兄ちゃん』の事、どう思う?」

私はコンシューマーゲームに夢中になっている息子に声を掛ける。息子はゲーム機から目を離さず、投げやりな声が飛んで来た。

「え、優しいと思うよ。あと数十秒間待って、クリア出来るから……。よし」

弟はゲーム機を横に置いて、私の顔を見た。

「優しいと思う。でも兄ちゃん、何時も何処かで遠慮してるんだよね。姉ちゃんなんて多少雑に扱っても構わないのに、何時も寂しげな顔で『姉ちゃん、借りるな……』って言ってくれるんだ。

別に気なんて使わなくて良いのに……」

前々から思っていた事だが、弟のヒエラルキー的には姉よりも若造の方が高い。ま、毎日喧嘩する相手より、たまに来て優しくしてくれる相手の方が懐くわな。

「だから姉ちゃんと付き合って、その遠慮が無くなれば良い。そしてまたこの家に来て欲しい」

爛々と純粋に輝く瞳を見ていると、打算や偽善がさもどうでも良い事のように思える。例え計算づくで行っていた偽善であっても、弟にとって其れが真実なのだ。

私は思わず口角が上がるのを感じた。何、元より応援する気だったさ。

「そう。有難う。今週末、何するか決めた?」

「じゃあゲーセン行こうよ!! 母ちゃんのクレーンゲーム捌き、また見たい」

母がこの物語の狂言回し兼、一番の読者視点だと思います。

一応考えて、『ま、協力するか』というノリ。

娘と同じタイプだったら、『お前には任せらんない。次』と審査入ります。


母と同じタイプなんですよ。彼。

鋭利で冷徹。気に入った人以外、興味無い。

でも大事にしたら、心から。

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