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一体あれは何なのか

短編

家族会議

です。

取り敢えず、部屋に居座ろうとする二人を追い出して、何とか下のリビングまで移動した。テーブルには母は相変わらず訝しんだ顔をした母と、興味津々な弟。

先に声に声を響かせたのは母だった。

「それで、あれは一体なんなのか」

「実は……その……御付き合いをさせて戴いてまして……」

こうなるのが分かっていたから、水族館に行く事も、だれと行くかも誤魔化して、付き合ってる事を言いたく無かったんだよぉ……。

そんな冷や汗をダラダラと流し続ける私を差し置いて、母は淡々とした口振りで私を見詰める。

「あぁ、幼馴染の?」

特段条件を此方から出さなくても、最初に名前が上がるのは明白である。昔から互いの家を行き来して、それなりの付き合いだったから。

小さく頷いて、恐る恐る母の顔を見ると、怪訝そうな母の空気が少しだけ柔らかくなっていた。弟も『幼馴染』という言葉を聞いて別の興味が湧いた様だった。

「じゃあ兄ちゃん、また家に来る?」

「来るよ。今週うちに」

弟相手には絶対言いたく無かった。流れ的に言わざるを得なかったけれど。その理由は。

「やった!! じゃあ兄ちゃんにゲーム機持ってくる様に伝えてよ」

まず第一に、私と彼は互いの家を行き来する程仲が良い。つまり、二人で遊んでいる時に弟が乱入して来て、一緒に遊ぶ。なんて事も普通にある話だった。だから弟は彼に非常に懐いている訳なのだが……。

せっかくの彼とのデート中に、弟が乱入して来たなんて事になったら、全ての空気がぶち壊しである。私の恋愛感情を持つのは疎か、彼も気を使うだろう。

だが弟は既に椅子から離れ、お気に入りのゲームソフトを厳選しに入っている。私とのデートではなく、彼と遊ぶ事が大前提になっているのである。だから、気まづくも早く何とかせねば。益々心苦しくなる。

そう椅子から立ち上がって何か一言述べようとした時、母が先に口を開く。

「お……」

「お前は今週末、母と出掛ける。家に居ること自体禁止」

「えー!! 折角兄ちゃん来てくれるのに……。つまらない!!」

「好きな場所連れてってあげる。好きなもの腹一杯食べさせてあげる」

『お前にとって、悪い話じゃないだろう?』鋭利な目がただ淡々とそう述べていた。その問いかけに弟は暫く考え込むと、ニヤッと笑った。

「分かった。でも兄ちゃんに挨拶したい」

「来る前に出掛けるよ。休日は混むからね」

弟は不機嫌そうな顔をしていたけれど、自宅デートの時に家に居る事は無さそうだ。ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、母も椅子から立ち上がるとそのままキッチンへと向かう。

「じゃ、そういう事で」

「あ……有難う……」

多分、多くは語らずとも気を使ってくれた。そして機転を効かせて応援してくれた。私も頑張ろう。家族巻き込んでデートするんだから!!

完全に言い出し方が

『娘さんとお付き合いをさせて戴いてまして……娘さんを僕に下さい』

なんだよなぁ……。


言っとくけど娘相手にはそこまで怖くないよ。娘。

相手が彼だったら、

『へぇ、君如きが?』

とか、すっげぇ冷たい声で言いそうなものだけど。

あ、娘の前では絶対言いません。

『そんなこと言わないで!! 優しいのは知ってるでしょ!!』

って言われちゃうから。

水面下でやります。


『えぇ、また下克上しに来ましたよ。幼少期の宣言、まさか忘れてませんよね?』

ってバチります。

※あくまで彼女、弟がいない時。


ちなみに弟は姉よりも彼に懐いてます。

姉よりも遥かに優しいので。

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