間接キス
短編
夕陽の元で交わす
です。
海月を抜けるとイルカやアザラシ等の大型哺乳類のエリアだった。隣接されるは小洒落たカフェや売店。雰囲気は海外の浜辺にありそうなもので、淡い水色で塗られた壁が涼し気であった。
私が眺めていたのが気になったのだろう。彼の方から声が掛る。
「なんか飲むか?」
「飲む!!」
店先に出されている看板には鮮やかな色合いのビバレッジが四種類写っている。淡いパステルカラーはカクテルの様で、見ているだけでも十二分に楽しい。
「決まったか?」
「いや、ミックスフルーツか紅玉苺で悩んでる」
ミックスフルーツは日没を思わせる橙の色合い。夕陽に照らされた南国ビーチを思わせるもの。対して紅玉苺は名の通り紅玉一色。真っ赤に爛れたたいようの様な色。
「じゃあ、どっちか選べ。俺は選ばなかった方を選ぶから」
「え、いいよ。好きなの頼みな」
折角、水族館まで来て、珍しいものが提供されているのに、それは無い。
その私の反応を見越してか、彼は淡々と答える。
「じゃあ、紅玉苺で。今回は私が出すよ」
そうして届けられた『紅玉苺』と『フルーツミックス』は写真で見るとカクテルの様であるが、実物はやはり異なっていた。
紅玉苺は目の覚める様なビビットピンク。珊瑚を思わせる濃い色合いに、マリンスノーの様な苺の果肉がふよふよ浮いている。対してフルーツミックスは透き通る夕陽の赤茶色に、熱帯魚の様な様々な果実が浮き沈みしている。写真で見た時はカクテルの様だと思っていたが、こうして見るとタピオカに近い飲み物である。
太めのストローを突き刺して、思うがままに吸い上げると強烈な苺の酸味が来た。そして鼻から抜けるカルピスの風味。口に入って来たごろごろの苺果肉はそのまま飲み込むのが惜しいほど。
甘くない。後味はあっさり。酸味強めの苺ジャムをカルピスで割った様な味。
「ん」
彼が残り八割になったカップを此方に渡して来る。交換しようという意図を汲み取って、私は代わりにフルーツミックスを受け取った。
これは想像通り。名の通り。ほろ苦いアイスティーが果実の甘露を引き立てている。果実を刻んだものがそのまま入っているので、噛む事に甘さが増す。フルーツアイスティーという商品で売り出せば売れるのでは無かろうか?
そんな食レポを延々と繰り返していると、彼がポツリと呟いた。
「恋人らしいこと」
「うん?」
何が言いたいのか分からず思わず瞬きをする。そうしているのも束の間だった。彼はニヤッと笑ってただ一言。
「間接キス」
「ぶっ」
突然爆弾落とされて、飲んでいたフルーツティーを吹き出すかと思った。
「ちょっとは意識したか?」
今日も長編書くぞ( '-' )
これ実際買ったんですよ。
そしたら、タピオカ飲料のタピオカ部分を別のものに差し替えたものでした。
だからカクテルとはちょっと違う。
モクテル売ってる場所を見つけられませんでした。
もうバーに行くしかない気がする( '-' )
何でもない顔で爆弾落とすのが彼です。