表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/40

傷口を抉らないで

短編

喚かないのが良い女じゃない

の修正版です。


元となった短編の名称は、『忘れなければ』記載を行わせて戴きます。

初恋というのは、往々にして叶わないものである。自分が好きな人に好きな人がいた。そしてその人は自分より相手を幸せにしてあげられる。その場合、身を引く事しか出来ない。

私もそんな様式だった。自分が好きな人に好きな人がいて、自分のことは眼中にない。だから自分からその人に発破を掛け、時に助言をし、自ら恋に敗れる道を選んだ。

けれども自分から負けに行った反動というのは、思いの外苦しくて、彼女と付き合ったという報告を受けた後、彼の姿を見掛ける度に逃げる様に姿を消すようになった。

今日もそんな苦しみを癒す為、学校の裏庭で一人ぼんやりする。季節は十二月という事もあり、寒さが今の心情と共鳴する。

これで良かったんだ。私じゃ幸せにしてあげられない。だからこれで。

そう思っていると、近くから砂利を踏み締める音が聞こえてきた。其れは段々と此方に近付いて来くると、私の近くで止まった。

「風邪ひくぞ」

顔上げると見知った顔がそこにあった。切れ長の目、むすっとした口。仏頂面を絵に書いた様な顔の持ち主は、私の幼馴染である。

彼は動こうとしない私に寄り添う様に隣に腰掛けた。

「もう彼奴の事は良いのか?」

『彼奴』というのは私が片思いをしていた相手の事である。幼馴染という間柄、私が彼に片思いをしていることも恐らく筒抜けであっただろう。其れでも彼は黙って静観していた。勿論……失恋した事も。

「彼女が居る人の近くに別の女がうろちょろするもんじゃないよ」

努めて冷静に、平常心を保つのでやっとだった。頼むから放っておいてくれ。これ以上、傷口を抉らないでくれ。けれども彼の物言いは残酷で容赦なく刃物を突き立てる。

「どうせお前の事だから、『自分じゃ幸せに出来ない』って言って身を引いたんだろ」

「相手の為を思って身を引いたの。其れの何がいけないの?」

思わず声が苛立つ。会話を終わりにしたい。しかし彼は其れを許さず、真摯な目をして訴える。

「泣きたかったら泣いていいぞ」

「何でそんなに突っ込んで来るの? 失恋しているの分かってるんだったら傷口抉らないでよ」

流石に我慢の限界だった。相手が幾ら真面目でも、真摯でも、今の激情には勝てなかった。私は苛立ちを隠す事無く彼を睨めつけると、その場を去ろうと立ち上がった。しかし其れを拒む様に手を掴まれた。

「悪かったよ……。でも傷付いたお前を見てらんない。これ以上、自分が我慢して傷付くお前を見たくない。だから俺と付き合おう」

彼の爆弾発言を受けて暫く無言になった。何が起こったか分からず、思わず彼の顔を凝視する。

「嘘じゃない?」

「此処まで傷口抉って、嘘告までしたら、幼馴染であっても許されないだろ……」

彼は立ち上がると呆然と立ち竦む私をすっぽりと抱き込んだ。幼子をあやす様に背中を摩ると、嗅ぎなれた優しい匂いが胸に充満する。すると強ばった感情がゆっくりと溶けゆくのを感じた。

「ずっと好きだった。けれどあの人は私の事を好きじゃなかった。だから諦める事にした。助言も発破も掛けた。でも……」

苦しい……。滅茶苦茶、苦しい。

其れから彼の優しさに縋って泣きじゃくった。

長編久方ぶりなので、自己紹介でも。

大抵は短編で活動している秋暁秋季と申します。

基本的に長編を書くのが苦手なので、試行錯誤しながら少しづつ進めてます。


今回はちゃんと最終回まで走れたので、投稿してます。


大体同じ感じで進みます。

やったのは主に自分が感じた不足分の補いとヘイト管理。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ