4話 幼児期(2)
すみません。遅くなりました。
昔の作品から片付けるつもりで読み返してたら半分以上書き直したくなりました。
どうか、生暖かい目で見守って下さい(>_<)ゞ
指で大きな石をくり抜いて乳鉢を作ると棒も石を歯で齧って作る。
ウォン隊長の家の食事は最初は幼児には硬すぎて自分の知らなかった能力を引き出した。
いわゆる怪力なのだ。
だから、加減が難しくいつも化粧されるがままになってしまう。
小屋も壊さないように恐る恐る触れている。夢中でポーション作りをしてると手元が陰った。
雨になったのか、雫まで降ってくる。
僕は乳鉢にフタをして立ち上がった。
「グルァアアアアー!!」
気が付いたときには後ろから襲われていた。
ブォオオオオオオーーーッ!!
思い切りオナラをして逃げる。
熊型魔獣など、正に屁でもない!
そんな異常な異臭が辺りに立ち込め飢えた熊型魔獣は胃液をまき散らせながら、「ゴベッ」と言って鼻を両手で押さえながら直立不動で横倒しになった。オナラで魔獣が倒せる半妖なんてアレしかない!
大変だ。僕はまた、捨てられるだろう。
よりによってスカンクの1000倍の異臭のオナラを放つフォローズリアルワールドオンライン最強で最低のネタ魔獣、エコガスドラゴン(通称へドラ)と人間の子供らしい。
何故捨てられるかって?
【覚醒の一発】を放つと2~3週間その臭いが消えず、次々犠牲魔獣が出る。
大体10才くらいで【覚醒の一発】を自由に使い分けるようになるが、10才を迎えるまでは、常に体臭が臭くて半径1キロメートル圏内の人に強烈な異臭を感じさせる。
つまり、町中では暮らせないのだ。ウォン隊長一家の優しさが胸に染みる。
捨てられる前にここから去ろう。
石のすり鉢で、地面にゴンゾーラ王国の言葉で、さよならを告げる。
お世話になりました。お父さんが迎えに来たので山に帰ります。ジュディス
「う、グス、グス…う、うわぁあぁぁ」
涙が溢れる。
ふいに背後からズボンを下ろされる。
「いっぱい、したな?」
ノリスさん、何で気絶してないの?!
それどころかウンコの始末を何でもない顔でしてる。
「ふふ、グラストを仕留めるへドラの半妖か。私が気絶しないからびっくりしたか?私は鼻が利かないんだよ。だからエルフの里を追い出されたんだ。ん?」
僕は慌ててウォン隊長への伝言を手で隠そうとしたがノリスさんは僕の手をひとまとめにして拘束すると、それを読んで冷酷に告げた。
「このクソガキ!!どうやってお前独りで生きてくつもりだ!ウォン隊長がこれで納得すると思うのか?!バカ野郎!!」
「ビェ、ひぇえええぇん」
「……アホが!ったく、ここで待ってろ!隊長に説明してくるから。動くなよ?!」
ノリスさんはそう言うと木の枝を足場にして身軽に遠ざかって行った。
こんな中でもお腹が空いた僕は熊型魔獣グラストを解体して幾つかの塊にして大体30キログラムを生で食べた。
ノリスさんが戻って来て荷車を魔法で移動させて僕を抱っこした。
「隊長から伝言だ。10才になったら学校に行かせてやるから剣の修行と体術の修行は怠らないように!とね。それまでは、私がお前を鍛える。どうする?」
また、涙がこぼれる。必死で縦にうなずく僕の髪を撫でるノリスさんの優しさが身に染みる。
ウォン隊長また会えるんだ!
学校入れてくれるって!
今まで味わったことの無い感情の奔流に胸がいっぱいになる。
「今からエルフの里に行くからちょっと用意をして来る。明日の朝まで、ここで寝てろ。2~3週間は外敵がいないから安全だ!」
いきなりの育児放棄。ま、眠るけど。
なんだかんだで3日待ったがノリスさんも色々忙しくしてたことが充血した目と顔色の悪さから感じられたので「だぁう~」とご機嫌に足に抱き付いてやったら、満足そうにうなづいた。
山の拓けた所まで、ノリスさんに抱っこで運んでもらい、そこからは、黄金のドラゴンに乗って移動した。へドラのお父さんの親戚のおじさんらしくエルフの里まで、連れて行ってくれるらしい。優しい!
でも、親父よ。何故にお前が来ない?
ちょっとだけ、そこがひっかかる。
エルフの里に着いてからもノリスさんの家に連れて行かれて妹のリスベーンさんにお世話されてる間に里への正式な受け入れなどの手続きをやったりして、ノリスさんは非常に忙しく帰ったらベッドにひっくり返っていた。
1週間後のサディの日から里の端っこの荒れ地に住む許可が下りた。
ノリスさんに迷惑が掛かっている。
里から家を建てるエルフ達を雇い、3LDKのログハウスが1ヵ月で建った。
その間、僕はただひたすら食べて寝てウンコして、それを荒れ地のあちこちに埋める日々を過ごしていたら、3才ぐらいの見た目に育っていた。
リスベーンさんのお世話も要らなくなり、自分で着替えや料理を作れるようになったので僕のウンコを肥料に生えてきたハーブや薬草を摘みノリスさんが狩って来たウズラの大きい魔獣真白ズーラを石造りのオーブンで焼き上げ、小屋の外の素朴な切り株のテーブルまで運んで僕は小屋に入る。
大工のサナスティヴォリさん達が窓越しに僕に手を振る。僕も手を振り替えし僕の狩って来たブルーリザードを料理する。
塊肉を軽く火で炙って刺身のように切り岩塩をかけて手で叩く。エルフの主食の米でチーズリゾットを作れば、2階から部屋着のチュニックと麻のズボンに着替えたノリスさんが階段を下りて来た。
「やった!ブルーリザードの肉ダタキとチーズリゾット!!ごちそうだぜ!」
「誕生日おめでとうございます。ノリスさん」
「おお?!年は忘れたけど、祝ってくれる人がいると嬉しいもんだな!ありがとう、ジュディス」
僕は力いっぱいノリスさんに抱きしめられて何だかとても嬉しかった。
僕は相当強烈な臭いがするらしく、鼻がおバカな魔獣しか狩れないでいるが、今日はノリスさんの為に【覚醒の一発】を使って狩りをしてきたので、大きな魔獣~小さな魔獣まで、ラインナップが豊富だ。
もちろん新鮮なまま、アイテムボックスに入れてある。
「いただきます!」
「竜と精霊に感謝申し上げます」
外のエルフ達も祈りを捧げると早速ハーブライスが詰め込まれてるズーラを切り分けて食べている。コショウと塩がふんだんにあればもっと美味しいのに。
あれ?体が痛い。
木のフォークを握りしめ潰すと体が自由にならない事に気付いた。
ノリスさんは慌てて僕から家具類を遠ざけた。
僕がこんなに苦しんでるのに、家具の心配?!酷くない?!
「グァアアアアアアーー!」
文句を言ったつもりが恐竜の鳴き声。
いつの間にか痛みは消えて物凄い飢餓感が僕を支配する。
僕は目に入る物全部食べた。皿も家具もスプーンも全部、だ。ノリスさんも齧ったが食べたらいけない気がして止めた。
僕は窓を突き破って外に出て手に入れた新しい体で、大空へと羽ばたいた。
「ジュディス!!帰ってこい!行くな!」