2話 魔獣討伐隊長ウォン・カテア
すみません、1話目、短編で投稿しました。
「やれやれ、疲れたな!休むか」
重い野営用テントが入ったリュックを地面に下ろして、テントを組み立てていると、食料の調達に行った奴らが騒いでいる。
「隊長!ゴールドラインサーペントを討伐したら、赤ん坊が食われてました!しかもまだ、生きてるようですが、怪し混じりみたいで、どうしましょう」
「ふーん?そいつは生きづらいだろうな。私が殺そう」
こんな山奥に捨てられたのなら母親に見捨てられたのだろう。
うちの隊のヤツらは何だかんだ言って優しいから殺せなくて困ってるんだろう。
癒し手のマリクがヒールを掛けている。
金色の髪と、蒼の目の可愛い赤ん坊だ。
異形なのはヘソの周りの金色の鱗だけで、服で隠してしまえば大丈夫だろう。
男の子だが、魅了のスキル持ちかと思うくらい愛らしい。家で待ってるデリスのお土産にしてもいいかもしれない。
ウチは男の子が産まれなかったから、息子にしたらいい。
「マリク、そいつと私の天幕に来い!」
「はい」
「ミシェル!さらしを持って来い!」
「隊長!何か食べるものを用意しないと赤ちゃんはお腹が空いてます!」
「粥を炊け!ゴールドラインサーペントは皮を剝いで身を焼け!」
「かしこまりました!」
天幕は途中までしか立ててない。天幕を立ててマリクを待ってるとミシェルまで粥を持って来た。
「入れ」
「失礼します」
「ん?そんなに髪が生えてたか?」
マリクが赤ん坊の唇を捲ると歯が生えている。
「さっきまでは、生えてませんでした」
なるほど。怪し混じりが差別される訳だ。
私は剣の柄を掴んだ。
マリクとミシェルが赤ん坊の前に立つ。
「隊長!お願いします!私が育てますから、処分はしないで下さい!」
「マリク、その年で子持ちか?いいのか?食い殺されても」
「構いません!その時は命がけで処分します!」
「残念だが、ウチで預かる!お前にコイツは殺せん」
私は殺せるがな。
「でも、奥方様にはどう言い訳するのですか?」
「拾ったというが?」
「この子は1年で随分育ちますよ?」
「息子がいたら剣を教えたかったから好都合だ。問題ない!」
「……わかりました!私も説明しますから、家に帰るまでに覚悟決めて下さい」
「何だか解らんが、覚悟はあるぞ?」
何かしでかしたら、殺す。
しかし、愛情は込めて育てる!
そんな覚悟はしていたが、マリクが言った覚悟はそれとは違うものだったと、思いしったのは家に帰ってからだった。
まず、1週間掛けて家に帰るまでに赤ん坊はハイハイ出来るようになっていた。粥もよく食べて排泄するときには泣く。腹が減っても泣かないで作ってくれるまで待つ。辛抱強い赤ん坊だった。
懐かしくもボロボロの我が家に1ヵ月ぶりに戻ると、デリスと2人の娘達が赤ん坊を見て私を見た。
「最低です!お父さま!」
「不潔!」
「誤解だ!ゴールドラインサーペントに丸呑みされてた赤ん坊だ!デリスにお土産に持って来た!」
デリスはマリクが抱いている赤ん坊を見て目を細めた。
「両親は居なかったのですか?」
「デリス、この子は捨てられたようなんだ」
「まぁ、不貞の言い訳にしてはよく出来てるから、認めてあげましょう。名前は?」
「何で私がしでかした事にしてるんだ!名前はデリスが付けて良い」
「ジュディスよ。貴女の名前はジュディス」
「男の子だぞ?」
「まぁ!だからウォンが引き取ったのね!よろしい!ウチで唯一の息子として育てましょう!」
ジュディスを抱き上げるとデリスとお年頃の娘達は久し振りに帰宅した私をほっといて、ボロボロのリビングに移動した。
「覚悟してないじゃないですか。隊長」
「うるせー!何で私がやらかした事になってるんだ!理不尽だ!」
「隊長、女の子にモテますからねぇ。じゃ、私はこれで失礼します!」
「待て!誤解を解いてくれ!」
「あしからず、無理です」
マリクとミシェルは帰ってしまった。
どうしろってんだ!
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