妹が中二病だと思った
新作なり
「お兄ちゃん、私勇者みたい」
「へえ、そうか」
妹が放った言葉に反応できたのはそれくらいだった。
勇者、世界中の人間が探しているという人類の象徴。人類の光、人類の希望etc.etc.....
その勇者が妹だと告げられた時の俺の反応は、特になし。
そうか、勇者なのかと思ったくらいだった。
「何も言わないの?」
「何を?」
「私勇者だよ」
「だから?」
妹が何を思っているかはわからないが、俺の中ではいつも通りだった。
妹が勇者だから、俺には何かあるのだろうか?
「将来、勇者になったら美味いもの食わせてよ」
だからか、そんなことを言ってしまった。
妹は呆然とした顔をしている。いやどんな答えを望んでたか知らないけど…。
「ふふっ、フフフフフフッ、良いよ。美味しいものいっぱい食べさせてあげる」
「おっ、センキュー」
そんな妹の突拍子な発言から始まった謎の会話はそこで終わった。
妹が勇者だと、俺は何になるのか。せめてこれから先も頼られる兄でいたい。
なら、強くならないとな。
そんな意思を適当に決意し、その話は終わった。
~そんな会話から10年後~
「勇者、勇者の紋章を持つものが現れましたっ!!!」
俺の村に来た騎士団やら、教会の聖者さんやらがそれを聞いて大騒ぎしていた。
当然だ。本物の勇者が現れたとなっては、それは大きな問題となる。
人類の救世主が現れたのだ。
多くの災害や、不吉極まりない予知が現れるようになったご時世で、人類の希望の光が現れたのだ。
それもすべての神が神託していた内容となれば、それは期待もとてつもなく大きい。
「やっぱり私が勇者なのね」
それを見て静かに呟く俺の妹。
自分の妹とは思えないほどに容姿端麗だった。
長く伸ばしたツインテールの金の髪はシルクのように滑らかで、周りから視線を集める美貌は端麗で、この世代にしては中々にけしからんプロポーションをしていた。
勇者でなくても、人々の注目を集めていたことだろう。
それに加えて、
勇者としての力、体から放たれる覇気、その気品の良さ。
おかしいかな、俺も同じ生まれのはずなのに。
自分と妹の違いに戸惑っていると、地元の僧侶の人と話していた大柄の男性がこちらに向かってきた。
こちらに近づくとその場に跪いた。
「お初にお目にかかります。わたくしの名前は王都騎士団団長を務めるランドルと申します。勇者様のお名前を伺ってもよろしいですか?」
「セリスです。そしてこちらが私の兄、アデルです」
「えっと、はじめまして、アデルです」
唐突に紹介された状況と自分より偉いであろう人が頭を下げているのに慌てて自己紹介する。
うちの妹、肝すわりすぎじゃない?
「わかりました、勇者セリス様に、その兄君アデル様ですね。以降私の胸に刻み付けます」
「いや、そこまでかしこまらなくても」
「何を言ってるのですか!?」
騎士団長の人の眼がクワッと開いた。怖い、瞳孔が開ききっている。
「人類の希望の象徴ともいえる勇者、その名はこの人類に危機が迫っている時代の中ではどんなものよりも重いのです!」
あーっ、やばい。耳がキーンってなった。
「故に私の態度は間違いではありません!」
「あの、兄にそこまで近づかないでもらえます?」
「すみません。ついあつくなってしまいました。」
熱いじゃなくて、重いだな。
「兄は私を今まで守ってくれました。それを無碍にする行為、恥を知りなさい」
「申し訳ありません」
俺そんなに妹に何かしたっけ?
ご飯も日ごろの洗濯も妹がやってくれていたような?
お金も今は亡き両親が残してくれた財産で食いつないでいたけど、あれ?俺マジで穀潰し?
「この年まで勇者様を守っていたのですね、素晴らしい!」
復活しないでくれるかな、このおっさん。
「その通りです!」
お前(妹)も同調しなくていいから。
ほら周りもあの少年が勇者様をなんて呟いてるから。
「ランドル団長、落ち着いてください」
こちらの様子を見かねたのか、もう一人の騎士の人が来た。
声的に女性の方のように思えるが、ごつい鎧にフルフェイスのせいで性別が定かでない。
見た目はとても強そうだった。
「落ち着けない!」
「奥さんに言いますよ」
「落ち着いた!」
「まあそれはそれとして、」
いや、たぶん落ち着いてない。
いつものやり取りなのか、フルフェイスの騎士の方は肩を下げつつ、話を進めようとした。
なんというか苦労してそうだな。
「勇者様、本題に入ります。我々と王都に来ていただけませんか?王より勅命をたまわっております」
「はい、神エリアより神託が来ていました」
神エリア、この世界において最高神として敬われている光の神。先ほどハイテンションだったおじいさんも神エリアを信仰している神父だ。
うちの妹はそのエリア様、そして他の神々からとんでもない籠を受けているハイパー勇者なのだ。
お姉さんも感極まっているように見える。
そもそも神託というのは、そこらの子供に与えられるようなものではない。エリア教会の最高権力者である聖女でしか現在は聞こえないとされている。
「流石勇者様ですね。ではこれから早速王都に」
「兄も連れて行くように、と」
妹の続けて発した言葉にお姉さんも思わず止まる。
そんな神様にも認識されている兄は何者だっ!?みたいな感情があると思われるが、なんてことはない。
妹が嘘ついてます。
「真ですか?」
「神託に嘘があると?」
「い、いえ滅相もございません」
嘘ついてるのは、神じゃなくて勇者だもん。
しかし、勇者の発言は神託を受け取っているゆえに神の言葉に近い。
そうして、妹と俺は王都に連れていかれることとなった。
『やっと行ったよ、あの人』
『怖かった』
2作目、一週間周期で頑張ります!




