スーパーポジティブ恥の上塗り、または絶叫する不審者の心境
【恥垢】
――尿や精液のカスなどが乾燥し、性器周辺に固まった垢。
(ホラー作品の冒頭みたいなあれがやりたかった。伝わるかな。伝われ。ゆるして)
恥の上塗りという言葉があります。
この◯◯という言葉があります、と言う書き出しは、こう書いておけばあとはどれだけ馬鹿丸出しの事を書いてもなんとなく何か説法をされた気になるだろう、というクソみたいな打算で筆者が編み出して多用しているメソッドであって、けれどもこれは筆者が何か偉そうに説法した気分になってニヤニヤするだけで、おそらく受け手の読者はまるでなんとも思っていないだろう。むしろコイツ馬鹿だなあと、うっすら同情されてすらいるかもしれない、という話はどうでもいい。そんなクソみたいなメソッドはどうでもいいんですよ。
はい、恥の上塗りという言葉があります。冒頭とあわせて、恥の上塗りという言葉を上塗りしました。へへへ。何の話だっけ。はい。だから、恥の上塗りという言葉があります(三度塗り)。
まあこの言葉の意味は説明するまでも無く皆さんご存知でしょう。恥をかいた上に、さらに恥をかくという、まさに地獄のような状態です。で、ここで筆者は自分の恥の上塗り体験を面白おかしく誇張して書き散らそうとしたんだけど、ウンウン唸って思い出そうとしても連続で恥をかくなんて状況はとんとない。おかしいな。恥はいっぱいかいてるはずなのに。恥の多い人生を(以下略)。そういうの書いてるのが恥ずかしいですって言える程度には歳を重ねました。はい。
実体験として恥の上塗りはちょっと思い出せない(思い出せないだけでいっぱい上塗りしてる可能性はある)けども、フィクションだとそりゃもういっぱい見かける。喧嘩稼業の一巻で十兵衛に二回連続で三角絞め食らって「お前もう終わりナリよ」って二回言われるボクシングヘビー級チャンプ石橋、はちょっと違う?じゃあその試合を見ていて石橋の治療をしろとタンに電話して鼻で笑われた上に、最終的には1億ドルの賭けに負けるマッド・ホッパー。うーん。読み返したばかりだからって喧嘩稼業で例えなくてよろしい。
まあ作品名はアレだけども、なろう系だとフィクションの中でもさらに頻出する気はする。ほらこう、いわゆる「ざまあ」の場面で。
「あいつは〇〇なんだぜ!!」と衆目の門前で主人公を罵倒する、ザ・舞台装置のチャラ男。
それに対して「フッ、実は◯◯といっても☓☓で~」、華麗に論破する主人公!!ざわつく群衆!!(恥)
激高するチャラ男、抜刀!!あわわ、殿中でござる!!斬りかかるも、実にあっさり主人公に撃退され這いつくばるチャラ男(上塗り1)。
主人公に駆け寄りキラキラした目で見つめる美少女。彼女は以前チャラ男にコナをかけられていた(上塗り2)!!さらに、なにがしかの言葉、正論というオブラートで包んだネチネチ罵倒でチャラ男を追い詰める主人公(上塗り3)。群衆から白眼視&嘲笑され、ギギギーとかなんとか言いながら泣いて逃げ出すチャラ男(上塗り4)。そんなに重ね塗りするなよ。ガンプラの塗装かよ。いやそういう作品をディスってるわけではなくて、そもそもこのやりとりは全部筆者の脳内から出てきたんだからディスられるべくは筆者である。みんな、俺を罵ってくれ!!ヒヒ~ン(喜悦)。
実際のところ、恥の上塗りという言葉は、「そんなことをしたら恥の上塗りだ」と、自分や誰かを戒める際に使う言葉……のような気がする。フィクション除いたら、おそらく用途として一番多いのはこれなんではないかな。「見て見てwwwwwアレwwwwwwww恥の上塗りwwwwwwwwwwワロタwwwwwwwww」なんて場面に出くわしたことはないし、あざ笑われたこともない。多分。記憶の限りは。
恥をかく、という現象は他の人間がいて成立するものであって、目の前で恥をかいた人間がいたらフォローするなりやんわり流す、見ないふりをしてあげるのが人間というものである。だから、連続で恥をかくなんてあんまりない。多分。さっきから多分多分と、そればかりだな君は。はい。すいません。
けれど恥を上塗りというか、上書きすることは、人間誰しも無意識にやっていると思う。
例えば、あなたが幼少期にかいた一番の恥を思い浮かべて欲しい。
次に、直近でかいた恥を思い浮かべて欲しい。
どちらで悶ました?
多分(また多分かァ君はァ)、直近でかいた恥のほうでしょう。これがメンタリズムです(違います)。
当たり前だが昔の恥って薄まるじゃないですか。でもその薄まるのって時間というよりも、これは個人的なアレかもしれませんが別の恥だと思っている。
Aという恥をかく。しかるのち、Bという恥をかく。するとAという恥はすこしうっすらとして、頭を悩ますのはBの思い出ばかりになる。
そうやって恥を重ねて、上書きして生きていくのだ。少なくとも筆者は。恥恥恥恥、そして恥。こう、脳の中には恥スタック領域みたいなもんがあって、古い恥からポンポンポンとまろび出て行く。そして恥はただの思い出になる。
筆者はこの恥スタック領域が極端に小さい(脳が小さいんでしょうね)ので、次から次へと恥が上書きされる。直近でかいた恥はそのぅ、飲み会で行ったスナックで大迷惑を歌ったんですよ。直近の話題が仕事の愚痴だったもんでウケるかと思ったんですがあいにくユニコーンを聴いてる世代がちょうどいなくてですね、若干スベりました。んで生暖かいフォローを頂戴したんですが、もう殺してくれ!!って気分よ。書いてて思いましたがすんげーショボイですね。はい。でも今現在、これが一番心臓バクバクなるのよ。過去にはとてもここには書けないレベルの超大恥をかいてるんですが、それでもどっちが筆者の心を傷つけるかって言ったら、ユニコーンなのよね。その鋭利な角が俺のハートをチクチクとさあ。
そういう思い出がフラッシュバックした時、みなさんはどうしていますか?
洋ドラの登場人物なら洗面所へ駆け込んで蛇口から水をドバー出して鏡の裏の棚(あれ便利そうだからうちにも欲しい)から出した謎錠剤をガバっと飲んでジャブジャブ顔を洗い、息を荒くして鏡の中の三白眼な自分とにらめっこをするかもしれない。筆者は違う。絶叫する。できるだけ恥ずかしい言葉を。
「キンタマー。キンタマー。オギャーオギャー。ペニス!!」
一応近隣住民に聞こえないように、枕に顔をうずめたりしてやる。枕に消音効果あるのかな。あってくれ。
自分でもなんでこんな馬鹿なことやってんだろうなといつも思っていたが、これは前述の恥スタック領域に新たな恥をねじ込んで恥ずかしい思い出をただの記憶に変換しようという、無意識のあがきだったのだ。全然効果ないけど。
そして、今日も筆者は枕に顔をうずめて叫ぶ。
恥の上塗りの喩えで政治家出そうとしたけど色々怖いからやめた