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三題噺もどき2

月曜の月

作者: 狐彪

三題噺もどき―にひゃくはちじゅうさん。

 


「――っふぅ」

 時刻は深夜……と言っても差し支えないほどに遅い時間。

 外はとうの昔に真っ暗。

 空には暗闇と星が広がる。

「……」

 パソコンとにらめっこをしながら、仕事をしていたら、そんな時間になっていた。

 まぁ、仕事を始めた時間も少々遅かったし、仕方ない。このぐらいの時間が一番集中できるというか、体が動くと言うか、頭が冴えると言うか……。

「……」

 代わりに、日中はどうも頭が働かないし。気力すら沸かないし。

 何なら、こうやって夜に仕事をするのが当たり前になってきているせいで、眠い。

 もう、この昼夜逆転生活が普通になってきている。

「……」

 少し前……までは、朝に起きて出勤して仕事をして昼食の時間も惜しんで仕事をして夜遅くに帰宅して寝て、という生活をしていたんだが。

 そんな生活をしていて、少々体調を崩してしまったのだ。

 それでまぁ、医者に、そこに居るべきではないと言われてしまったので、田舎にある母方の祖母の家に越してきたのだ。

 ありがたいことに、部屋が残っているからぜひおいでと歓迎してくれた。

 両親にもいらぬ迷惑をかけてしまったが、先に行ってしまうよりいいと言われた。

「……」

 だが、仕事をしないわけにもいかないので……生活ができないからな。

 少々落ち着いたところで、パソコンでできる仕事を始めたのだ。

 病気になったころから、日中に仕事をするのは無理だし、現場復帰はきっと無理だろうと思っていたのもあったので、最初からそうするつもりではあったが。

 こんなに、いい仕事に巡り合えるとは思っていなかった。

 いい時代になったんだろう……外に出なくても働けると言うのは、同じような人にとってはありがたい限りだろう。

「……」

 パソコンのブルーライトに目がやられるのは少々、問題かもしれないが。

 それはそれ、そこまで根詰めてやるような仕事でもないので、休み休みすればどうにでもなる。

 自分の性格上、集中すると離せないと言うのが、あるにはあるが。

 あまり詰めるなと言われてしまっている。

 そういうのを察してか、ある程度の時間がたつと、祖母が声を掛けてくれる。

 こういう時の祖母の勘はすごいなと思う。長年の人生経験のおかげだろうか。

 自分自身でも限界がいまだに分かっていないのに、祖母にはそれが分かってしまうらしい。

 だから、その限界が来る前に、晩御飯に誘ったり、散歩に誘ったりしてくれる。

 なんともまぁ、ホント。

 いい家族に救われた。

「――んん……」

 仕事のデータ保存ができたことを確認し、ぱたりと閉じる。

 固まってしまった体を伸ばす。あばら骨が軋むのを感じた。

 痛くはないのが不思議だなぁ……と思いつつ、更にぐっと伸ばしていく。

「――っはぁー」

 一気に力を抜き、椅子にもたれかかる。

 この椅子もそれなりの年季ものなので、ぎし―と悲鳴を上げた。

 そろそろ変え時だろうか……この仕事を続ける以上は、椅子もどうにかした方がいいのかもなぁ。

 腰が痛くなることもあるにはあるし。

「……」

 はぁ……しかし、今回の仕事は疲れたなぁ。

 自分の好きなように働ける仕事は言え、な。

 だがそれもひと段落したし、明日は。

「……」

 起きることが出来そうだったら、昼間には起きて。

 たまには、昼食を祖母と囲むのもいいかもしれない。いつもは夕食ぐらいしか一緒に食べることが出来ていない。

「……」

 そういえば、少し前に、息抜きに近くの川にでも行ってみたらと言ってくれたので、それも一緒に行ってみよう。

 何でも、今の時期は川魚が泳いでいるらしい。

 夏休みの時期になると、どうしても人が多くなるが、今の時期はほとんど人も来ないから丁度いいと言っていたし。

「……」

 最近は暑い日が続いているからなぁ。

 昔から、海より川派だったので、川に行くのは大賛成だ。

 川は海より涼しいし、何より音が良い。

 さらさらと流れる音に混じって、跳ねる水の音もする。

 五感で感じるすべてが、心地いい。

「……」

 なら、今日はもう寝ようかなぁ。

 早めに寝てしまえば、昼間には起きることができるかもしれない。

 タイマーはセットしないが、楽しみがあれば、起きることができるだろう。

「……」

 ならばと、寝る準備をするため、開け放していた窓に手をかける。

 冷房機器があればよかったのだが、少し前に壊れた。

 おかげで毎夜蒸し暑い。

 が、田舎だからなのか。

 窓を開ければ、ある程度涼は確保できなくもない。

「……ぁ」

 ふと、真っ暗な空に浮かぶ月が見えた。

 これも田舎の特権だ。

 人工の光が少ない分、自然の光がよく見える。

「……きれぃ…」

 どこかぼんやりとしているようにも見えるが。

 そこにしっかりと浮かぶ、美しい月。

 月がきれいだなんて……そんなこと初めて思った。

「……」

 そういえば、今日は月曜日だったなぁと、思う。

 週の初めから、こんなに良い月が見られて。

 仕事もいい感じに終えて。

 明日の楽しみもできて。

「……♪」

 なんだか、今週はいい一週間になりそうだ。



 お題:川・田舎・パソコン

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