奇妙な声
翌朝、私たちはミーナちゃんの案内で村に向かうことにしたのだが、その道中魔物に遭遇するたび私は全く役に立てなかった。スライムが可愛くて近づいたところ、しっかり絡まれてしまったり。大きなキノコに大興奮して飛びついたら、そのキノコはマタンゴというモンスターだったらしく、マタンゴの胞子で幻覚を見てしまった私の対処など。その他諸々やらかしてしまい、完全にお荷物状態になってしまっていた。
そんな私とは対照的に、ミーナちゃんの魔法適性は目を見張るものがあった、トキアも「この歳でここまで魔法が扱えるのは凄い」と褒めていた。確かに素人目から見ても彼女の魔法は安定していて、かつ正確に敵に命中していた。ここまで一人で来ることが出来るのも頷ける。
レオナ「ミーナちゃんってすっごく強いんだね!まだ子供なのに凄いな~私なんか完全に足手まといだよ。しゅん」
ミーナ「いえいえ。レオナさんの魔法に比べたら、私のなんかまだまだです!それより、レオナさんはどうして魔法使わないんですか?」
レオナ「あー。私、あの魔法しか使えないんだよね…」
ミーナ「え?……冗談ですよね?」
レオナ「ううん。ほんと。あ、そうだ!ミーナちゃん。私に魔法教えてくれないかな!!?」
ミーナ「えぇ!?私の扱える魔法なんて初級魔法ですよ?レオナさんがすごい魔法使えること知ってますし、さすがにそれは…」
レオナ「……」
私は無言のまま真剣な眼差しを向ける。
ミーナ「え。え?トキアさん、冗談なんですよね…?」
トキア「残念ながら本当だ。悪いが少し教えてやってくれないか?このままのペースだと収穫祭に間に合わんかもしれないしな」
ミーナ「…本当なんですね。信じがたいですが。わかりました。」
それからの道中、ミーナちゃんに魔法を指導してもらえることになった。彼女はまだ子供なのに教え方がとても上手で、何も知らない私でもすぐに魔法が使えるようになる気がした。
気がしただけだった。努力の結果、私は人より魔法を扱う適性が低いということを知ることが出来た。創天魔法が使えるから初級の魔法くらい余裕だろうと高を括っていた為、その落差に不甲斐ない気持ちで一杯だった。
レオナ「ずーん」
トキア「まぁ…その、なんだ。普通こんなもんだろ。元気出せよ」
ミーナ「そうですよ!私も一日で習得出来たわけじゃないですし、全然普通です!」
レオナ「うう~…私なら出来ると思ったんだけどな~。せっかく丁寧に教えてくれたのに、変わらずお荷物でごめんね?」
ミーナ「そんな、お荷物だなんて思ってませんよ。…あ!もうすぐ私の村ですよ!」
そう言って彼女が指を指す先に、半透明の薄い膜のようなものが、日に当てられて輝いているのが見えた。
レオナ「あれって…」
ミーナ「そうです!あれが神樹様の結界です!キレイですよね!?この結界は凄いんですよ!今まで侵略して来ようとする人たちを何度も追い返したんですからね!」
そう誇らしげに語る彼女を見て、いかに彼女や村に住む人々にとって神樹が大切な存在なのかが伺い知れた。
レオナ「トア、口悪いせいで入れて貰えなかったりして」
トキア「なっ!?そ、そんなわけないだろ!」
そう言いながらも、若干そわそわしているトキアをからかいながら、一緒に結界を通った。結界を通り過ぎる瞬間、頭に直接何かが聞こえてきた。それは雑音混じりで聞き取りにくかったが、少女のような声でこれだけは聞き取ることが出来た。
レオナ「…神樹を…殺して?」