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魔法使いレオナの魔法が使えない!?  作者: ネコまんま
見知らぬ森
6/8

強大すぎる力

 それから小一時間程歩くと、辺り一面草に覆われたとても広い場所に出た。


 トキア「着いたぞ。こんなとこ人も来ないし、これだけ広けりゃ十分だろ?」


 レオナ「うん!ありがと!いきなりだけどトア。私ね?多分これから強力な魔法使うから、ちょっと離れててくれる?」


 トキア「ん?なんでだよ。魔力もったいねーし、どうせなら魔物相手に使えばいいじゃねーか」


 レオナ「いやー実は私、魔法使ったことなくてさ。威力とか効果も知らないんだよねー。だから生き物相手に使うのはちょっと怖くって」


 トキア「はぁ?何言ってんだお前。魔法なんて普通、めっちゃ修行して習得するもんだろが。使ったこと無いなんて本来はそんなのぜっったいにありえんからなb!…まさかお前、わざわざここまで案内してやった俺様のことおちょくってんじゃないだろうな?」


 レオナ「違う違う!ホントなんだって!本当に使ったこと無いの!」


 トキア「…んじゃなんだよ。まさか、私、生まれつき魔法使えるんですーとか言わないよな?」


 レオナ「うーん。あながち間違ってないかも?ほら、最初に言ったでしょ?天からの使いだって。私、訳あって別の世界から来たの。あ、でも元の世界には魔法なんか無かったから、私の魔法はこの世界に来るときに神様に授けてもらった力、だからまぁトアの言う通りかな?」


 トキア「…にわかには信じられんが、、、まあとにかく魔法が使えるってんなら今見せてみろよ」


 レオナ「そだね!じゃーいくからね!自分でも何が起こるかわっかんないから!ちゃんと離れててね!」


 私は平原に身体を向け、目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。すると、明らかに以前の自分には無かった、身体の中に流れているエネルギーを感じた。身体の奥底から沸き上がってくる、力強く、膨大で、純粋な力。今なら何でも出来ると錯覚してしまいそうになるような、とても不思議な感覚だった。この時、私は初めて自分の魔力を感じることが出来た。

 それから、私は早速使い方を()()()()()魔法の詠唱を始めた。


 レオナ「天より賜りし王者の血。天を統べ、地を統べる者。森羅万象我に畏怖し、平伏せよ。情熱燃ゆる魂の導き。天よ。大地よ。太陽よ。神技となりて我が意に応えよ。焦熱吹き荒ぶ焔の宴。焔王の名の下に発現し理を示せ!創天(そうてん)魔法プロミネンス・フレイ・フローガ!」


 魔法の詠唱が終わると同時に、突き出した自分の両手から凄まじいエネルギーが発生したかと思えば、一瞬で視界いっぱいに炎が発生していた。物凄く高温であるはずの炎の塊は、術者だからなのか熱くは感じなかった。

 何が起きているのかわからない上に、想定以上の威力に圧倒されてしまい固まっていると、後方からトキアの怒鳴り声が聞こえ、ハッと我に返った私はすぐに魔法を止め、その場に膝から崩れ落ちた。


 レオナ「ハッ…ハッ…ハッ…トア、止めてくれて、ありがとう」

 魔法を発動している間、私はどうやら呼吸も忘れていたようで言葉が途切れ途切れになる。


 トキア「お前、今のは一体何だ?」


 レオナ「何って。教えてもらった魔法だよ?どうだった?」

 私は振り向いて答える。


 トキア「俺は初級から上級までの全ての魔法の知識は完璧に()()()()()()()。だがお前の使った魔法は知らない。分からないんだ」


 レオナ「それって、どういう…」


 トキア「ひとまず顔を上げて見てみろよ。お前の使った魔法の威力をな」


 トキアに促され、魔法を放った方に顔を向けると、前方はまだほとんど黒い煙で覆われていてよく見えなかった。しかし、段々と煙が晴れていくにつれて私の心はザワついていった。


 煙が落ち着き、その光景が露わになると、そこはさっきまでの平和で豊かな自然の景色とは大きく異なっていた。木々は焼け焦げ、所々灰と化し、地面は溶けて大きく抉れていた。まさに地獄のような光景だった。しかもその光景は目の届く範囲にずっと続いていた。


 私は、自分の放った魔法のあまりの威力に驚き、手足は震え、言葉をなくしてしまった。


 トキア「おれはここまで強力な魔法は知らない。今分かるのは、この魔法は本来一人で扱えるもんではないって事と、強力すぎて使う場面が限られるって事、あと、お前の魔力量は化けもんだって事だ」


 レオナ「確かにこんな危ない魔法、人には使えないね。でも魔力量が多いって、どうしてそう思うの?」


 トキア「こんなどデカい魔法一人で撃っておいてよくそんな事言えるな。確かに距離が離れ過ぎてて詠唱は聞きとれなかったが、あんな規格外の魔法を一人で使える奴はこの世界には存在しないってのは確かだ。…一応聞いておくが今の魔法、もう何発か撃てそうなのか?」


 レオナ「うーん。そうだなー。感覚的にはまだまだ余裕あるよ!少なくとも30回くらいは打てるんじゃないかな?」


 トキア「…お前本当に人間か?」


 レオナ「ひっどーい!…でもまあ、この魔力量も神様に授けてもらった物なのかもしれないし、人間離れしてるって言われても納得かな」


 トキア「ふーん。まぁいいや。ひとまず魔法発動できて良かったな。他に使えそうな魔法とか覚えて無いのか?」


 レオナ「まだ何個かあるんだけど、どれも魔力の消費量は変わらないみたいなのね、だから他のも実用的ではないのかなーって。もしそうならまた環境破壊しちゃいそうだし、仮に人を巻き込んじゃったらって考えると、もう使えないや」


 トキア「まあそうだが、覚えてるのが全部()()()()とは限らないんじゃないか?例えば他にも防御魔法、回復魔法、幻影魔法、召喚魔法と、その他細かな種類の魔法があるが、さっきの規模と同一の必要魔力量となると、可能性があるのは防御、回復、幻影、召喚の四種になるだろうな。」


 レオナ「なるほどたしかにー!!…あ、でも結局攻撃魔法だった場合、周辺の人に被害が出るかもしれないって考えると、やっぱ使うの怖いなー」


 トキア「しゃーねーな。したら俺様の超広範囲探知魔法で、周囲に人間がいるかどうかを探知してやるよ」


 レオナ「え!?そんな便利な魔法使えるの?さっきもバリア貼ってくれたし、トアってもしかして優秀な子?」


 トキア「っってめぇ今更気付きやがったのかー!?ったく、俺様は見た目のオーラが他のやつとは別格だってのに、それも分からんとは可愛そうなやつだ」


 レオナ「私、まだトア以外の人に出会ってないし…ってかずっと気になってたんだけどトアってなんていう種類の生き物なの?魔物?悪魔?それとも精霊?」


 トキア「それも今更だな。まあそんなのなんでもいいだろ。ちゃちゃっと探知しちまうぞ。マーグ・ディテクション!」


 トキアは突然、詠唱もなしに魔法を発動させ、しばらく沈黙したあと口を開いた。


 トキア「正面120度程に範囲を絞ったからかなり先まで視れたが、人の気配は無かったぞ。ちなみに、さっきの魔法で魔物も一斉に逃げてったみたいだし、被害も人間は無し、魔物も数十匹程度だったみたいだから安心しな」


 トキアの言葉で、考えないようにしていた()()()()()()()()()()()()が無くなり、心の底から安堵した。

 レオナ(威力知らなかったとはいえ軽率だった。気をつけないと)

「へー!そんな範囲まで視れるんだ。すごいね!」


 トキア「まーな!!!まあ、俺様の凄さはこんなもんじゃないけどな!」


 レオナ「そーなんだ!楽しみにしてるね。それじゃ、安全確認も済んだ事だし、他の魔法も試させてもらおうかな!」


 トキア「まったく。本当は試したくてウズウズしてたんじゃねーか」


 レオナ「バレた?でもまあ、次使う魔法が攻撃魔法だとしても、人も魔物もいないし、同じ方向に撃てば被害も最小限に抑えられる!こんな絶好の機会逃す手は無いよね!」


 トキア「まあそうだな。それじゃ、日が暮れる前にさっさと全部試しちまおうぜ!」


 レオナ「うん!それじゃいっくよー!創天魔法ヴァン・エギル・フロードゲルン!」


 私はトキアが呪文を詠唱していなかったのを見て、詠唱を破棄しての魔法の発動を試みた。すると問題なく魔法は発動したのだが、この魔法はどうやら水系の魔法のようで、前方に向かって大量の水が吹き出して濁流となり、大地を飲み込み、一瞬で何もかも流してしまった。結果、さっきよりも広い範囲の自然を破壊する結果となってしまった。


 レオナ「あちゃー。さらに壊しちゃったね。」


 トキア「お前、詠唱破棄してこの規模の魔法撃てんのかよ…てか待て、今まさか、()()()()って言ったのか?」


 レオナ「え?うん。なんで?」


 トキア「創天魔法ってのはな、この世界に伝わる神技(じんぎ)と呼ばれる技の一種で、その中でも攻撃に特化した最強の魔法だ。だがそんなハズはない」


 レオナ「え。どうして?」


 トキア「そもそも、過去に創天魔法を習得できた者はこの世界の歴史上でもたった数人しかいないらしい。んで、その天才たちでさえ、生涯をかけてその属性の魔法を極めた上で、やっと一つの創天魔法を習得できるってレベルのもんだ。何個覚えてるのか知らんが、2種類も発動させた現時点で、恐らく世界初だぞ」


 レオナ「へぇー!そうなんだ!でも私も自分で覚えたわけじゃないしなー」


 トキア「理由は他にもある。本来、創天魔法は発動に相応の準備がいるんだ。まず、創天魔法には神杖ガルバ・テインって名の神聖武器を使わないとそもそも発動できないし、人ひとりの魔力ではとても発動できるような代物じゃないから、同レベルの魔法使い10人程度の魔力支援を受けてやっと一回発動できるもんだったらしい。だからお前のそのバケモンじみた魔力量を加味しても、ガルバ・テイン無しで、ましてや杖も使わずに発動なんて、そんなこと有り得ると思うか?」


 レオナ「ふーん。トアって物知りなんだね。まあでも、私にはこの魔法がトアの言う魔法なのかはわからないけどさ。私にとっては覚えてる魔法が使()()()()()どうかが重要なんだよね。今のところ、使う機会はなさそうかなー」


 トキア「いやいや、最強魔法だぞ?使い道なんかいくらでもあるだろ!」


 レオナ「うーん、まあ他のも試してみてから考えようかな」


 その後私は、残る5つの属性の創世魔法を使用し地形を滅茶苦茶にした後、1つの答えを導き出すことができた。


 レオナ「ふふっ、ふふふっ……だぁめだぁーーっ!!こんなの使えないよーーーー!!!」


 トキア(…もう驚いてやるつもりなんか無かったが、まさか全属性の創世魔法を使えるとはな)

「全属性の創世魔法を会得しといて、一体何が不満なんだ?」


 レオナ「いやさ、私この世界がピンチだって聞いたからさ、少しでも良くしたいと思って来たんだ。弱きを助け悪を砕く、みたいな人助けがしたくてさ。でもこんな力使っちゃったら、悪人はもちろん、助けたい人まできっと死んじゃうよね?てか、なんなら世界滅ぼせるような力だよね!?こんなの使えないよーー!!もー!マミちゃんは一体何を考えて私にこんな力授けたのー?」


 トキア「なんだそういうことか。ならまあ、これから自分で初級魔法から習得していけばいいんじゃねーの?創世魔法扱えるくらいだ。魔法適性はズバ抜けたもんがあるだろうしな」


 レオナ「そっか!なんだ簡単じゃん!よーし、そうと決まったら初級魔法から習得がんばろーっと!ってあれ?魔法ってどうやったら習得できるの?」


 トキア「知らん」


 レオナ「えぇー!?うそじゃん!トア魔法使ってたじゃん!」


 トキア「…お、俺は独学で習得したからな。人間とは習得の仕方が違うんだよ」


 レオナ「そうなのかぁ。残念」


 トキア「これから探せばいいんじゃねーか?師匠になってくれそうなやつをさ」


 レオナ「うん。そうだね!じゃとりあえず村に向かおっか!」


 トキア「あほか!…もう日が暮れるだろ。とりあえず安全そうな場所探して今夜は野宿するぞ」


 ???「ホントだ!あ……ヤバっ!」

 私が声を発する前に、突然後ろの森の方から子供の声が聞こえた。その後すぐに、ガサガサと草木をかき分ける音を立て走り去っていく、小さな女の子の背中が目に写った。身長から見るに年齢は、恐らく8~10歳くらいだろうか。

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