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人質に取られた気弱な令嬢



細くて軽いオレリアは、軽々と持ち上げられていた。

向こうからものすごい勢いで走って来た、強盗と呼ばれた男に。


(え?)


(え……?なにが、起こっているの)


もみくちゃに掴まれて、アッと悲鳴を上げることさえ出来なかった。

本当は声を出したかったが、流石に動揺してしまって何を言えばいいのか分からなかったのだ。


強盗の男は右手にパンパンに膨らんだバッグとナイフを持ち、左手にオレリアを抱えている。



「待て!」


周りの人々のあいだから、強盗を追って駆けてきた二人の騎士が叫んだ。

2人は王家直属の騎士だけが着用を許される、純白の騎士服を着ていた。

高価そうな立派なマントと、王家の紋章が刻印された剣を腰から下げている。


街の衛兵ではなく、そんな偉い騎士が何故強盗を追いかけているのかは分からなかったが、大方、王族の誰かがお忍びで買い物をしていたところに、たまたま強盗が出くわしたのだろう。



「これ以上俺に近づいてくるな!」


強盗の男は足の速い二人の騎士に追い付かれてしまったので、オレリアにナイフを突きつけて叫び始めた。

騎士2人がぐっと怯んだのを見計らい、強盗はオレリアを盾にして、じりじりと裏路地の方へ後退していく。


「近づけば、こいつの命はないからな!」


(いたい!)

オレリアの首に、ナイフの切っ先が食い込んだ。

オレリアは見ることは出来ないが、首に生暖かい感覚があったので、血が流れているようだ。


「いいか、動くなよ」


強盗の声だ。

オレリアを抱えたままの強盗は威嚇をしながら、騎士2人から更に距離を取った。


「お前らが動いたら、この娘の首を掻き切る!」


「関係のない民を巻き込むな!」


「おおっと!それ以上こちらに来たら、この娘の首を掻き切ると言っているだろう?!」


強盗に抱えられて身動きが取れないオレリアは(私のような、見るからに貧乏そうな身なりの子を盾にして脅してもあまり意味がないんじゃないかな……)と思っていたが、2人の騎士は正義感が強いからなのか、オレリアのことなど気にせず強盗に殴りかかるような真似はせず、本気でオレリアの身を案じてくれているようだった。


強盗はオレリアの首元からナイフを離さず、そして騎士2人からも目を離さず、逃げる機会をうかがっている。

対して騎士2人は、じりじりと後退していく強盗との距離を詰めることが出来ず、ぐっと唇を噛んでいる。


(ど、どうしよう……)


強盗の太い腕に無造作に抱かれたまま、オレリアは必死に考えた。


使用人と変わりないオレリアなら、怪我くらいしたって大丈夫だ。

だけど、あの2人の騎士が善人な所為で、強盗が中々捕まらないままでいる。

むしろ、中々捕まらないどころか、逃げてしまう可能性だってある。


このままでは、オレリアは完全に足手まといだ。

なにか、あの2人の騎士の邪魔にならない方法は…………




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