#94 聖来さん特製アイドル衣装 ☆♡
前半はゆきあ視点、後半は香織視点です。
ぼくは今、自分の部屋でこっそりと女装している。
試しに女装してみてから、ぼくは時々香織姉の服を借りて、こっそり女装するのが趣味になってきている。
―香織姉たちには、ばれているけどね…。
それと着ると何故か恥ずかしくなってしまう。
「ふぅ~」
ぼくは息を落ち着かせて、もう1度自分の姿を見るも、やっぱり恥ずかしくなってしまう。
「ふわぁー、ゆきあくん女装してます…!」
「香織姉の服を借りてるんだ」
「そうなんですね~。香織ちゃんの言った通りですね。どうして女装してみたんですか?」
「ど、どうしてってそれはー…ん?」
ぼくは何となく会話をしていたけど、おかしいと思い、後ろを振り返ると
「えっ!? うわぁ、聖来さん!?」
「うふふ、ゆきあく~ん♪」
聖来さんが手を振りながら笑顔で立っていた。
「い、いつからそこにいたの!?」
「え? ゆきあくんが恥ずかしがってるところからです」
「うそ~!? 聖来さんに見られた…」
「ゆきあくん、落ち込まないでください。ゆきあくんの女装、かわいいですよ!」
聖来さんは目をキラキラしながら言っている。
「そういえば香織姉は?」
「リビングにいますよ。わたしは、香織ちゃんに誘われて来たんですよ~」
「そうなんだね」
「あっ、そうです! ゆきあくんにお願いがあって来たんです!」
「お願い?」
聖来さんはぼくにお願いがあって、訪ねてきたみたい。
「ゆきあくんにこの衣装を着てもらいたいんです!」
「えっ?」
聖来さんがバッグから衣装を取り出した。
「これは、今やってる子供向けアイドルアニメの衣装なんですよ~」
「そ、そうなんだ…」
そういえば、聖来さんって服作れるんだよね。
「サイズは香織ちゃんに聞いてゆきあくんに合わせましたからね」
「え? ちょっと待って!? 着ないからね!?」
「え~、さっきまで女装してたじゃないですか~」
「それとこれとは別だよ! そんな恥ずかしい服、ぼくには着れないよ!」
「ちなみに香織ちゃんにも着せてありますよ」
「なんで!?」
香織姉も、この衣装着てるの!?
「香織ちゃんとお揃いしてみたくないですか?」
「う、うんでも…」
「ゆきあくん、わたしがせっかく作った衣装、着てくれないんですか…? わたし、悲しいです…」
聖来さんは、涙ぐみながらそう聞いた。
―うっ、そんな顔されたら断れないよ…。
「―わ、分かったよ…。せっかく聖来さんが作ってくれたから着るよ…!」
「ありがとうゆきあくん! やっぱりゆきあくん優しいから好きです!」
ぼくは聖来さんの押しに負けて、アイドル衣装を着ることになった。
**********************
『こんにちはー』
「いらっしゃい、2人とも~」
今日も心愛ちゃんと心音ちゃんが家に遊びに来てくれた。
「あれ、香織さんその衣装…?」
「あっ、気づいた~? 今やってる子供向けアイドルアニメの衣装だよ~。聖来ちゃんが作ってくれたの~」
わたしは裁縫が得意な聖来ちゃんに衣装をお願いして、実際に着てみちゃいました♪
「すごい似合ってるね~!」
「うふふ、ありがとう♪」
「香織ちゃんお待たせしました~。あっ、心愛ちゃんと心音ちゃんも来てたんですね」
聖来ちゃんが1階に降りてきた。
後ろには、アイドル衣装を着ているゆきあくんもいた。
「ゆきあくん、着てくれたんだ~!」
「うん、でもやっぱり恥ずかしいよ…」
ゆきあくんは顔を真っ赤にして恥ずかしがっている。
「ゆきあくんかわいいっ」
「うん、ゆきあくん似合ってるよ」
心愛ちゃんと心音ちゃんも感心している。
「そ、それにしても香織姉も本当に着てるんだね…」
「うん! ゆきあくん、わたしどうかな?」
「うん、似合ってるよ。本物のアイドルみたいで…、か、かわいいよ…」
「あ、ありがとう…。ゆきあくんとわたしでユニットみたいだね♪」
「そ、そうかな…?」
ゆきあくんは頭に手を当てながら照れている。
「2人とも、わたしのスマホで写真撮っていいでしょうか?」
聖来ちゃんはスマホを取り出して、そう言った。
「えっ、写真!?」
「良いよー。後でわたしのスマホにも送ってね♪」
「いや、ぼくはちょっと…」
「ゆきあくん」
「―か、香織姉!?」
「わたしと一緒に撮って♪ おねが~い♪」
わたしは笑顔でそう言った。
「―!? う、うん分かったよ…」
「ありがとうゆきあくん♪」
そんなわけで、聖来ちゃんにわたしたち姉弟の写真を撮ってもらった。
「香織ちゃんとゆきあくん、寄ってください! いいですよ~! ゆきあくんも香織ちゃんもすごくかわいいです!」
「ありがとう聖来ちゃん♪」
「あ、ありがとう聖来さん…」
「次は香織ちゃんがゆきあくんを覆いかぶさる感じで!」
「こうかな?」
「そうです! とってもいいですよ~」
聖来ちゃんに元気よく写真を撮ってくれました。
「はい、お疲れ様です。あはは、わたしったら少しテンション上がり過ぎちゃいましたね…。ごめんなさい」
「ううん、全然大丈夫だよ~」
聖来ちゃんは恥ずかしくなって、そう伝えた。
「聖来さん、わたしにもその写真を送ってくれますか?」
「聖来さん、あたしも~」
「はい、いいですよー」
心愛ちゃんと心音ちゃんは、聖来ちゃんにそうお願いした。
「ゆきあくんどうだった?」
「う、うん…。少し恥ずかしかったけど、香織姉とペアルックみたいで良かったよ…」
「良かった~。わたしもゆきあくんと同じことを思ってたよ~」
読んでいただきありがとうございます。
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