#86 香織と学校でお弁当 ☆
今日は4時間授業だったので、早く授業が終わった。
「ゆきあくん、今日も一緒に帰る?」
「ゆきあくん、帰ろう~」
「うん、そうしよう~」
そう言って、心愛さんや心音さんと一緒に帰ろうとすると、
「失礼します! 水瀬ゆきあくんはいますか?」
香織姉がクラスにやってきた。
「あ、ゆきあくん!」
「香織姉、どうしたの?」
「ゆきあくんと一緒にお弁当食べたくて…。いいかな?」
「えっ、お弁当? いいけど…」
「やったー♪ 心愛ちゃんと心音ちゃんもいいかな?」
「は~い、じゃああたしたちもー」
「心音、ここは2人っきりにさせましょう」
「あっ、そうだね。じゃああたしたちは先に帰るね」
「うん、2人ともありがとう♪」
心愛さんと心音さんは先に帰ることになった。
「そういえば香織姉、教室に来なくても、スマホで連絡くれれば良かったのに」
「何回もかけたよ? ゆきあくんってばスマホ見てないでしょ~」
「あっ、ごめん。マナーモードにしてたからー、…って多くない!?」
確認しただけでも、電話3件、メール10件来ていた。
「ゆきあくんが確認しないのが悪いんだよ~」
そう言って、香織姉はぼくのほっぺをつっついた。
「そういえばどこで食べるの?」
「屋上で食べようと思ってね♪」
「…ふぇ?」
屋上だと~!?
ぼくと香織姉は爽やかな空気を感じながら屋上に入った。
うちの学校は、屋上には自由に出入できるのである。
屋上には、緑豊かな花壇や観賞用の美しい花が植えられたプランター、ベンチなどが設置されている。
見渡すと、人1人もおらず、2人だけの空間になっている。
「ひゃー、久々に屋上に来たけど良い天気だね~! 絶好のお弁当日和だよ~!」
「あ、うん。今日は気温的にあったかいくらいだし、そよ風を感じる弁当っておいしいよね」
「うんうん! あ~、ちょうど陰になってるあっちに座ろうよ~!」
香織姉は日陰になっている地べたに向かって、正座で座った。
ぼくも一緒になって地べたに座った。
「それじゃあ一緒に食べよ!」
「そういえば思ったけど、香織姉も4時間授業だよね? どうしてお弁当作ってたの?」
「ゆきあくんと学校でご飯食べたことなかったから、今日一緒に食べようと思ってたの」
「そ、そうなんだ…」
ぼくはそう言われて、顔が赤くなった。
「それじゃあ…じゃーん! は~い、ゆきあくん、わたしたちのお弁当だよ~!」
香織姉はお弁当箱を開けた。
「これはすごいね~」
からあげや卵焼きといった王道のものから、タコさんウインナーや小さいハンバーグなども入っている。
「ふふっ、サンドイッチもあるよ~」
「おかず多いね~!?」
「たくさん食べようと思ってね。張り切って作っちゃった」
「それじゃあ香織姉、食べてもいいかな?」
「どうぞ召し上がれ♪」
ぼくはまず最初に卵焼きを食べた。
「ど、どうかな~?」
「うん、おいしいよ」
香織姉の卵焼きは、いつもふわふわでとろりとしている。
「良かった~。ゆきあくん、いつもわたしの料理、おいしく食べてくれるから嬉しいよ~」
「からあげも食べよう~。あれ、いつもと味が違うね? もしかしてチーズ?」
「そうだよ~。よく分かったね。衣に粉チーズ入れてみたんだ~」
「そうなんだ~。おいしいよ~」
「ありがとう~。あっ、ゆきあくん、お願いがあるの」
香織姉は微笑みながらこう言った。
「わたしに膝枕してくれませんか?」
「えっ、まだ食事中なのに…?」
「おねが~い♪」
「う、うん分かったよ…」
ぼくは、香織姉の言われるがままに香織姉の膝の上に乗った。
なんだかんだぼくって、香織姉に弱いね…。
「も~ゆきあくん、くすぐったいよ~」
「あっ、香織姉ごめん…」
「そんなに謝らなくて大丈夫だよ~。あっ、ゆきあくん。わたしのハンバーグ食べさせてあげるよ~」
―ちょっと待って!?
膝枕されながら香織姉にあーんされるの!?
「そんなことしたら香織姉の食べる分なくならない?」
「いいの。はい、あーん」
「あ、あ~ん…」
ぼくは香織姉のハンバーグをパクっと食べた。
「うふふ~。ゆきあくん。今のわたしたちって、恋人らしいよね!」
「ふぇ!?」
な、何言いだすの、香織姉!?
「ゆきあくんってばびっくりしちゃって~。かわいい♡」
「もう香織姉ってば…」
「ゆきあくんの残りのものも食べさせてあげるね。はい、あーん」
そんなわけでぼくは香織姉に膝枕されながら、あーんをされることになった。
「ごちそうさま。おいしかった~」
「良かった~。わたしも嬉しいです♪」
ぼくと香織姉は立ち上がって、帰ろうとした。
「あっ、ゆきあくん。」
「なに?」
「えいっ」
ペロッ。
「ひゃっ!?」
「うふふ~、ソースついてたよ~。ゆきあくん、おいしかった~♡」
香織姉はそう言いながら、舌をペロっと出した。
ぼくはなめられて顔を真っ赤にしたのだった。
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