#57 心愛と心音の秘密 ※心愛視点
今回は心愛視点でお届けします!
「ごめんくださーい」
わたしは赤瀬心愛。
お母さんが買ってきたりんごをゆきあくん家に届けに来た。
「はーい。あら、心愛ちゃんじゃん。久しぶり~」
「雪香さん、お久しぶりです」
出迎えにきたのは、ゆきあくんと香織さんの姉の雪香さんだった。
「お母さんがお世話になってるお礼にとのことです」
「わー、おいしそうなりんご~。わざわざありがとうね」
「いえ、あの、ゆきあくんいますか?」
「あ~ごめんね。今日はゆきあくんと香織出かけちゃってるんだ~」
「あっ、そうでしたか」
どうやらゆきあくん達はお出かけしてるみたい。
「もしかして姉弟デートですか?」
「うん、そういうこと」
ふふっ、ゆきあくんも香織さんも良かったね~。
「もし良かったら家で待ってく?」
「いえ、今日は家に帰ります」
「そう? 分かった。りんごありがとうね」
あわよくば、香織さんにアップルパイを作ってもらおうと思ったけど、また今度にしよう。
わたしがゆきあくん家から出ると
「あれ? 心愛ちゃん?」
「あ、心音」
幼馴染の心音が出てきた。
「心愛ちゃんもゆきあくんと遊びに来たの?」
「うん。でも、今日はゆきあくんも香織さんも出かけてるって」
「えーそうなんだ」
すると、わたしと心音のスマホが鳴った。
わたしたちはスマホを取り出して確認すると、ゆきあくんからメッセージが来ていた。
「ゆきあくん、香織ちゃんとショッピングデートだって」
「そうみたいだね」
「いいなー、2人とも楽しそうだねー」
「せっかくの姉弟デートだもんね」
「あっそうだ。ねーねー心愛ちゃん。あたしたちもショッピングモール行かない?」
「んーいいよ。暇だし」
「わーい♪」
わたしは心音とショッピングモールに行くことになった。
「ねえ、心愛ちゃん。この服どうかな?」
「うーん、良いんじゃない」
「あたし、かわいい?」
「うん、かわいいかわいい」
「もう、また適当に言ってない!?」
わたしたちはこんな感じで洋服を見たりしていた。
「そういえば心愛ちゃんと2人で遊ぶの久しぶりだねー」
「…そういえばそうかも。ほとんどゆきあくん家で遊―…んっ!?」
「ん? どうしたの心愛ちゃん」
ショッピングモールの外に出たところで、わたしの足に犬がやってきたのだ。
「ってあーワンちゃんだ! かわいい~」
心音はかわいい目で犬を見ている。
「ねっ心愛ちゃんかわいいよねー…ってどうしたの心愛ちゃん!?」
「…な、何でもない」
「首輪ついてるし飼い犬だよね。迷子かな?」
すると犬が「わん」と吠えた。
「きゃー!?」
「心愛ちゃん!? もしかして犬嫌いなの?」
「べ、別に嫌いじゃないけど…正直苦手…」
「何でワンちゃん苦手なの?」
「小さい頃、近所のお家で飼ってる犬に突然吠えられたのがトラウマなの…!」
「そうなんだ~、でもこのワンちゃん迷子だろうから飼い主さん探してあげないと。リードついてるから散歩中に逃げちゃったのかなー?」
「ひっ…!」
「心愛ちゃん、あくびしただけだから大丈夫だよ…」
そんなわけで、わたしたちは、飼い主を探すことになった。
「うーん、結構周り探してみたけど飼い主さんいないな~。それにしてもめちゃくちゃ心愛ちゃんに懐いてるね~」
「い、いいから助けて…!」
わたしは何故か犬に懐かれてしまっている。
すると、心音が犬を持ち上げて、わたしに近づけてきた。
「もーこんなにかわいいのにどうして怖いの?」
「近づけないで!」
「大丈夫だってほら」
「ちょ…やめ…」
「ほらほら…」
パシィン!
「きゃー!?」
「いい加減にしなさい! 人の嫌がることするなって学校で教わったでしょ!」
わたしは恐怖のあまり、怒って心音をビンタした。
そして心音はわずかに赤くなった左のほっぺに手を添えた。
「…あっ、ごめんなさい。ビンタしちゃって…」
「ううん、あたしもごめんなさい。ちょっとやり過ぎちゃった…」
お互いに自分がしたことを謝った。
「で、でも本当にこの子、大人しいから大丈夫だよ…。それに心愛ちゃんに懐いてるし。せっかくだから少し撫でてみない? かわいいよ?」
「うっ…」
わたしは渋々ながらも犬の頭を撫でた。
そしたら、不思議なことに、さっきまでの恐怖心は無くなり、優越感が湧いてきた。
この犬も何だかかわいく見えてきた。
「うん。この子かわいいね…」
「でしょー?」
「…まあ、ゆきあくんの方がかわいいけどね」
「もー素直じゃないんだからー。あたしも同感だけど」
「ん? あれ?」
ワンコは突然何かを見つけたかのように走り出した。
「ん? あっ、ゆっきー! こんなところにいたんですか! もう探しましたよ~」
「あれ、葵じゃない?」
「葵ちゃんだ~」
「あっ、心愛さんに心音さん! もしかしてお2人がゆっきーを見てくれてたんですか?」
「うん、そうだよ~。葵ちゃんのワンちゃんだったんだね」
「はい、ゆっきーって言うんです! いい名前でしょ~」
『ゆっきー?』
わたしも恐らく心音もその名前を聞いて、ゆきあくんを思い浮かべた。
「もしかしてゆきあくんからとった?」
「えっ、ち、違いますよ…! 確かにゆきあくんと似てますけどね…」
葵は笑って誤魔化していた。
「あっ、わたしお姉様とお出かけしていたのでそろそろ行きますね。お2人ともありがとうございます!」
「あ、うん。どういたしまして」
「またねー」
葵はゆっきーというワンコを連れて去っていった。
「はー何とかワンちゃんの飼い主さん見つかって良かったねー」
「うん」
「まさか葵ちゃんの飼い犬だとは思わなかったけどね」
「…ねえ、心音」
「何、心愛ちゃん?」
「…さっきは本当にごめんなさい…。心音のこと、思いっきりビンタしちゃって…」
「あ~大丈夫だよ。あたしの方こそごめんなさい。心愛ちゃんの気持ちも考えなかったから…」
「はいこれ、ハンカチ。濡らして赤くなったところを冷やしてね」
わたしはそう言って、心音にハンカチを渡した。
「うん、ありがとう」
「…後、わたしが犬苦手なの内緒にしてね」
「えっ、どうして?」
「…人に苦手なこと知られるの好きじゃないから…」
「そっかー。それじゃあ、今日のことはあたしと心愛ちゃんの秘密ってことね♪」
「うん、そういうこと」
わたしたちはそう約束してると、
「あれー心愛ちゃんに心音ちゃん」
「2人一緒だったんだ」
「あっ、ゆきあくんと香織さん」
「あっ、ゆきあくんと香織さんだ~」
ゆきあくんと香織さんがショッピングモールから出てきてばったり会った。
「奇遇ですね。2人でお出かけしてたんですねー」
「うん、ゆきあくんとのデートとても楽しかったよー! 今度もわたしたち2人で遊園地に遊ぶ約束してるんだよねー、ゆきあくん」
「うん、そうだね」
2人とも、仲よさそうに話している。
「心音、やっぱりあの2人を見てると落ち着くね」
「そうだね心愛ちゃん」
わたしたちは、ゆきあくんと香織さんのやり取りを温かく見ている。
読んでいただきありがとうございます。
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