#22 優しくてかわいい先生 ☆
「それじゃあ、ゆきあくんまたねー!」
「またねー」
ふゆかさんとなつきさんと別れ、ぼくも帰ろうとすると、
「ゆきあくん? ちょっといいかな?」
先生がぼくを引き留めた。
なんだろう?
「じゃあ、ゆきあくん、わたしたちここで待ってるね」
心愛さんたちは、教室で待ってもらうことになり、ぼくは先生に連れられて、相談室に入った。
「なんですか、先生?」
「うふふ、呼び止めちゃってごめんなさい。少しゆきあくんとお話ししたくて」
「お話しですか?」
「ゆきあくん、わたしのこと覚えてますか?」
先生が手を後ろにしながら、そう聞いてきた。
「えっ? 何処かで会いましたっけ?」
「あれ、覚えてないですか?」
「はい、すみません」
どういうことか先生は、ぼくのことを知ってるらしい?
だけどぼくは身に覚えがないので、そう言った。
「あなたのお姉さん、香織さんだよね…」
「香織姉…? あ~香織姉の弟だから知ってくれた感じなんですね。あ~そっかそっかー」
ぼくは勝手にそう解釈して納得した。
「は、話は終わりでしょうか? なければそろそろ帰りますね」
ぼくはそう言って、相談室を出ようとした。
「う、う、うえーん!」
すると、突然先生が泣き始める!
「えっ!? せ、先生!?」
「うー、ゆきあくんがー、ゆきあくんがー!」
「どうしたんですか!? 落ち着いてください!」
「わたしと付き合ってくれるって、言ったのにー!」
「えー!?」
どういうこと? さっぱりわからないよー!
「…あの先生?」
「ひっくひっく、やっぱりわたしの事忘れちゃったの? あんなかわいかったのにー、今もかわいいけど、付き合ってくれるって言ってたのにひどいよー!」
ぼくが先生を泣かしてるみたいで、いたたまれなくなる。
ん? 先生の顔をよく見たら、どこかで会ったことあるような…?
「あっ、もしかして、はるかさん…?」
「ひっく、うん、やっと思いだしてくれた? ゆきあくん、お久しぶり~」
泣きながらも笑顔でぼくの名前を呼ぶ。
「へ? いや、ええ? なんで、ここに?」
「わたし、この学校の生徒で、先生になったの」
そうだったのか…。
…ん!?
「生徒で先生なんですか?」
「うん、今は高3なんだけど、わたし元々小学生の先生になってみたかったから、特別に生徒と先生、両方やることになったの」
「そうなんですか!?」
そんな制度あるんだ…。
「懐かしい…。わたし、学校帰りによく遊んでるゆきあくんを見かけて、かわいい子だなーって思ってたの。そうしたらある日、ゆきあくんが1人ぼっちになっちゃったのを見て、ゆきあくん泣いてて、わたし、もう慌てて、大丈夫だよ大丈夫だよと言って家まで送ってあげたの。友達がゆきあくん家の近くに住んでいたから無事送り届けられて良かったよ。そして暫くしてゆきあくんがわたしの前に現れて、『この間はありがとう、お姉さんのお陰で助かった。綺麗で優しいお姉さんが大好きになりました。ぼくと付き合ってください』って、言ってくれたの」
…。
あー、そういえばそんなこと言っちゃったなー!
「そしたら、赤い顔しながら『気にしないで!』って言って走って行っちゃったの」
先生は満面の笑みになり
「わたし、凄く嬉しかったの、そう言って貰えて、もうわたしその場でわんわん泣いちゃった。今年、自分の受け持つ生徒の名前を、初めて見た時にビックリした。『同姓同名?』って、でも初めてゆきあくんを見て、自己紹介した時に確信したの。ああ、この子、ゆきあくんだって。そ、それなのに、あのゆきあくんが、う~、あのかわいいゆきあくんがぁ、わたしと付き合いたいってぇ言ったのにいー、すっかりわたしのこと忘れてたー、うえーん!」
先生は、涙をボロボロ流し再び泣きはじめる。
「本当にすみません! 泣かないでください…!」
「だって、だって~」
「忘れたぼくが悪いので…。思い出したから…」
「うう、ふふっ、ありがとう、やっぱりゆきあくんは優しいし、かわいい」
再び涙ぐみながらニッコリ笑う。
「あの時はありがとう…。先生…」
「ゆきあくん、少し大きくなったね?」
「いやぼくはそんなに…。相変わらず小さいままだよ…。先生もいろいろ大きくなったよね…。身長も胸も…」
あの時も大きかったけど、すくすく成長している感じだった。
「もう、ゆきあくんってば~!」
―そして何故か先生はぼくに抱きついてきた。
「先生!?」
「うふふ、ゆきあく~ん、わたしのこと忘れた罰ですよ~。ぎゅってしてあげます」
「ふぇ、先生…!?」
「だって、だって~。ゆきあくんのせいでわたし傷ついたんですよー?」
「ゆ、許してください…」
「それともビンタしましょうか? うふふ、わたしのビンタをくらってくれますか?」
先生が目をキラキラしながらそう聞いてきた。
「あっ、でもゆきあくんが嫌なら別にいいですよ」
「い、いやぼくは大丈夫ですよ…」
「本当に? ありがとう~。じゃ、じゃあいくよ」
先生は罰としてぼくをビンタした。
「えいっ」
パシィン!
「ひゃっ…」
「ごめんなさい。少し痛かったですか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「そう? 良かった~」
先生は安堵した感じでそう言った。
「それじゃあ、お話しはこれでおしまい。時間かけてごめんなさいね」
「はい、それじゃあ」
「あ、後ね、ゆきあくん、わたしのこと、さっきみたいにはるかさんって呼んでくれませんか? うふふ、呼び捨てでも大丈夫ですよ」
「えっ!? さすがに呼び捨ては、ちょっと…。じゃあはるかさんって呼ぶね」
「ありがとう、もう一回呼んで!」
「えっ、は、はい、はるかさん」
「うふふ、ありがとうゆきあくん。わたし、ゆきあくんのこと好きですよ」
「えっ!?」
はるかさんはいたずらっぽく、舌をペロっと出しながらそう言った。
「あなたのお姉さん、香織さんがかわいがるのも分かるな~」
「は、はるかさんってば…」
「ゆきあくん、ごめんなさ~い」
はるかさんは舌を出しながら謝った。
「そ、それじゃあさようならはるかさん」
「気を付けてね、ゆきあくん」
ぼくははるかさんと別れ、教室へ戻った。
それにしても、はるかさんと再開するとは思わなかったな~。
「うふふ、ゆきあくんと久しぶりに会っちゃった♪ しかも、わたしが受け持つことになって嬉しい~♪ はあ、でもいっぱい泣いちゃったなー。ゆきあくんがわたしのこと覚えてなかったのがいけないんだからね~。うふふ、でも相変わらずかわいかったなー、ゆきあくん…。香織さんとも久しぶりに会いたいな~。これからもよろしくね、ゆきあくん」
読んでいただきありがとうございます。
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