#20 それぞれのクラス ☆♡
前半はゆきあ視点、後半は香織視点です。
新キャラ出ます。
それから4人一緒に学校へと向かった。
「じゃあ、ゆきあくんたち、また後でね」
「うん、香織姉も」
ぼくらと香織姉は別れ、それぞれの教室へ向かった。
ぼくの教室は、5年1組だった。
席は出席番号順になっており、ぼくは窓際の前から三列目の席。
ちなみに2人も同じクラスだった。
「やったー、また2人と同じクラスになれたよ~♪」
「うん、正直、わたしよりもゆきあくんのことが心配だったんだよ」
「え、ぼく?」
心愛さんにそう言われてぼくは、きょとんとした。
「うん、あたしも思ってた。ゆきあくん、あたしたち以外に仲良い友達がいないから孤立するんじゃないか不安だったの」
「それにゆきあくん、わたしたち以外の女性に苦手意識もってるからね」
「うっ…。そ、そうだけどね…」
2人にそんな心配かけられてたんだ。
「でも、また心愛さんや心音さんと同じクラスになれたから安心したよ…。これからもよろしくね」
「…! もうゆきあくんってば~」
「ふふっ、ゆきあくんってば」
2人はそう言いながらぼくに抱きついた。
「はい、席についてください」
担任の先生が入ってくる。
ずいぶんとおっとりしており、パンツスーツ姿の女性の先生だった。
黒髪でポニーテールにしていて、ネックレスをつけている。
それにしても、身長高いなぁ…。
…後、胸も。
彼女は、律儀に生徒たちの前で一礼した後、教卓の前まで向かう。
「きゃー!」
…そして、盛大に転んでしまった。
「いたたっ、わたしったらやっちゃったよ…」
ぐすん、と涙声になりながら立ち上がったところで、自分が注目を浴びてしまっていることに気付いたのか、彼女は教卓の前に立つ。
「えっと、わたしは今日からこのクラスを受け持つことになりました虹川はるかです。実は、わたし先生をやるのは今年が初めてです。あの、仲良くしてくださいね!」
元気よくそう言って、凄い勢いで先生はお辞儀をした。
そして、数秒間の沈黙。
「あっ、あの…」
おろおろとする先生だったが、
「…ふふっ」
生徒の誰かが、我慢できずにいた声を漏らす。
すると、
「先生かわいいー!」
「ドジっ子教師キター!」
「このクラスで良かったー!」
「きゃー!」
クラス中が、笑い声に包まれた。
「えっ、えー!」
あわあわする先生だったが、生徒たちからは万雷のかわいいコールが生まれてしまった。
「か、かわいい…」
「とってもかわいいよー!」
幼馴染の2人も、先生を見ながらそう言った。
「み、皆さん! 落ち着いて下さいね。それでは、えっと、皆さんと仲良くなるためにですね、自己紹介をしていこうと思います!」
しかし、そんなざわめく教室の中でも、なんとか自分の仕事を全うしようとする先生の意思が伝わったのか、一番前の席に座ってる心愛が立ち上がった。
「はーい、先生、わたしからですね」
「ふえっ! はっ、はい! おねがいします!」
恥ずかしながらも笑顔の先生のおかげで場が和んだ5年1組は、恒例である生徒たちの自己紹介が始まっていく。
最初は心愛さんからだった。
「赤瀬心愛です。好きなことはお菓子を食べることです。よろしくお願いします。」
心愛さんの丁寧な自己紹介が終わる。
「黄瀬心音です。特技はダンスをすることです。何よりも一番の特技はあたしが一番かわいいことです! よろしくお願いします。」
心音さんの自己紹介になったが、いつもの感じであった。
そんなこんなでぼくの番になった。
「えっと、水瀬ゆきあです。こんな見た目でよく勘違いされるのですが、男です…。えっと、よろしくお願いしましゅ!」
うっ、最後に嚙んでしまった…。
「…かわいい」
「えっ?」
「かわいいー!」
「本物の男の娘だ!」
「わたしこのクラスで良かったー!」
「きゃー!」
クラス中が、笑い声に包まれた。
「ふぇー!?」
ぼくも先生と同じ状況になってしまった。
「ゆきあくん、かわいい…」
「かわいいよ、ゆきあくん~」
2人も便乗してそう言った。
初日からぼくは、辱しめをうけてしまうのだった(泣)。
「えっ…? …ゆきあくん?」
「ん?」
ぼくの自己紹介が終わったが、先生は次の生徒の名前を呼ばなかった。
それどころか、先生の視線はぼくから離れない。
「先生、次いっても良いですか?」
「…あっ、ご、ごめんなさい」
そう言われ再び自己紹介が名簿順に進むが、何故だかぼくをじっと見つめている。
それは、何か懐かしい物を見ているかの様な視線だった。
「せ、先生終わりました…よ?」
最後の生徒が自己紹介を終えてもぼくをじっと見続ける先生。
前方にいた生徒が先生にそう言うと、まるで空想世界から現実に戻って来た様に先生は慌てて、ようやくぼくから目線を外した。
「…あっ、何度もごめんなさい」
一体なんなんだろうか?
でも、この先生どこかで見た様な、そんな気がしないでも無い。
が、それは確かめようが無かった。
**********************
教室に着き、席に座ると、隣にうららちゃんがやってきた。
わたしとうららちゃんの席は隣同士です。
「おはよう、香織ちゃ~ん」
「あ、おはよううららちゃん。うららちゃんも同じクラスだったんだ」
「うん、また香織ちゃんと一緒で嬉しいよー♪」
「今日もゆきあくんと一緒に登校したの?」
「うん、心愛ちゃんたちも一緒だよ」
「そうなんだ~」
「おはようございます! わっ、きゃー!」
そんな会話をしていると、黒髪ロングの女の子が声を出して挨拶しながら教室に入ってきた。
しかし、その後盛大に転んでしまった。
「あっ、聖来ちゃん! 大丈夫~!?」
「うぅ~うららちゃん。ごめんなさい、わたしとしたことが転んでしまいました。でも大丈夫ですよ」
「本当に? 良かったー」
うららちゃんは彼女のことを心配していた。
彼女の名前は、紫月聖来ちゃん。
わたしとうららちゃんの小学生からの友だちであり、素直で明るい女の子です。
「そういえばー聖来ちゃんも同じクラスなんだね! よろしくね~」
「は、はいうららちゃん。香織ちゃんもなんですね。こちらこそよろしくお願いします!」
「うん、よろしくね」
わたしたちは3人でいることが多く、良く3人で遊ぶ仲である。
「そういえばゆきあくんと登校したのですか?」
「うん、そうだよ~」
「そうなんですね~。そういえばゆきあくんって、中学の頃から、女の子にとって、理想の弟なんですよね」
「そうなの、聖来ちゃん?」
「だって小さくて、優しくて、素直で、かわいくて、思わずもふもふしたくなる位ですから」
「そうなんだ~」
「出来たら、わたしも欲しい位ですよ…」
「せ、聖来ちゃん!?」
「あ、ごめんなさい。変なこと言っちゃいましたね」
「ううん、別にいいよ」
でも、ゆきあくんみんなに人気あるんだ~。
わたしも嬉しくなっちゃう。
「ねぇねぇ、香織ちゃんに小学生の弟がいるって本当?」
「わたしにも教えてー」
ホームルームが終わり、わたしはクラスの女の子たちから弟について聞かれていた。
「うん、写真あるけど見る?」
「見たい見たい!」
わたしはみんなにゆきあくんの写真を見せた。
「ゆきあくんっていうの。かわいいでしょ?」
「うん、でも弟というより妹じゃない?」
「よく間違われるんだよね~。でもちゃんと男の子だよ」
「じゃあ、なんで女の子の服着てるの?」
「えっ?」
写真を確認してみると、ゆきあくんが女装したものだった。
間違えちゃった!
「えっ!? なにこれ!? ゆきあくん女装してたの!?」
「えー、わたしも初めて知りました!」
うららちゃんや聖来ちゃんもびっくりしている。
「うん、こっそりわたしの服を着てたみたいだから撮っちゃったの♪」
「そうなんだ…。ねえ、香織ちゃん…。もし良かったらわたしのスマホにその写真送れないかな…?」
「えっ? いいけど…」
「ありがとう香織ちゃん! えへへ、ゆきあくんの女装姿、かわいい」
「わたしも欲しいです! お願いします、香織ちゃん」
「うん、いいよ」
わたしは秘密にしとくはずのゆきあくんの女装写真を2人に送ることになった。
ごめんね、ゆきあくん。
「わたしも欲しいー!」
「わたしも!」
「わたしも!」
それからわたしは、クラスのみんなに、ゆきあくんの事をいろいろと話した。
読んでいただきありがとうございます。
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