0.イザベラ
イザベラ・フローレン。
彼女は一風変わった女性として認知されている。
真紅の髪に黄金の瞳。
女性らしい豊満な身体は平均的な女性の身長より やや高く、どんな服も着こなせる。
妖艶な容姿から絶世の美女と名高いが、これまで彼女と仲が噂された男性はいない。
イザベラが社交界に赴けば、煌びやかな令嬢たちが周りを囲む。
彼女は微笑みながら談笑し、たまに輪の中から顔を真っ赤にして気絶する令嬢が発生する。
令嬢は、至極幸せそうな顔で気絶しているらしいので特に問題はない。
そして頻度は少ないが、イザベラが令嬢をエスコートして舞踏会に現れることがある。
女性が女性をエスコートすることは前代未聞だった。
更にいうとイザベラは女性物の美しいドレス、そしてエスコートされる令嬢も当然ドレスである。
当初は皆 驚きに包まれ混乱したが、彼女が別の舞踏会で別の令嬢をエスコートし現れること数回、もはや「イザベラ様だから」ということで落ち着いた。
イザベラ・フローレン。
そう、彼女は社交界一の[女にモテる女]だ。
女性を慈しみ、愛でることが生き甲斐。
恋愛対象が女性ということではない。
あくまで見守り、時に支え、応援し、讃える。
それらが可能な現状に、彼女は満足していた。
「イザベラ様あぁ!第二王子が早馬で向かってきています!!」
「なぜ?」
メイドが泣きながら現れるこの時までは。